光学・レーザー装置の部品加工はどこまで外注できるか、発注前に何を確認すべきか?
光学・レーザー装置の部品加工は、まず図面が光学素子(レンズ、ミラー)のものか、それを保持する金属部品(鏡筒、マウント、ハウジング)のものかを分けて確認します[3]。光学素子はλ表記とISO 10110という専用の体系で指定され、金属部品はμm単位の寸法公差と表面処理の指定で発注する、別の図面体系だからです[4]。
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図面が光学素子のものか金属部品のものか分からない段階でも、装置名と分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!体系の切り分けから一緒に進めます。
まず確認すること
光学・レーザー装置の部品加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、図面がどちらの体系で書かれているかです。光学素子の面精度はλ表記とISO 10110で指定され、金属部品はμm単位の寸法公差と表面処理で指定されます[3]。深江特殊鋼はこの切り分けから入り、図面と数量をうかがったうえで対応可否と見積を回答します[14]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面に「λ/4」と書かれているが基準波長の記載が無く、実寸をいくつで読めばよいのか、公差緩和を頼んでよいのかも判断できない。[5]
- 鏡筒内面の処理が「MIL-A-8625準拠の黒色アルマイト」とだけ指定され、TypeもClassも膜厚も空欄のまま、見積依頼を出してよいか迷っている。[7]
- 光学素子と金属マウントの図面が1式で送られてきて、どこからどこまでを同じ相手に出せるのか切り分けられない。[13]
- マウントの基準面の平面度が光軸精度にどう効くのか説明できず、加工先から公差緩和を打診されても可否を判断できない。[15]
- 長年頼んできた研磨の加工先が職人の高齢化で廃業し、同じ面精度で受けられる先が見つからない。[9]
Q. なぜ光学素子の図面は、金属部品と同じ読み方で見積に出せないのか?
A. 光学素子の図面はISO 10110という専用の表記体系とλ表記の面精度で書かれており、寸法公差(mm、μm)を基準にした機械加工の図面とは、数値の単位も検査の方法も別だからです[3][4]。 ISO 10110は、光学素子と光学システムの図面作成方法を定める13部構成の規格群です。形状誤差、面精度、表面の傷といった側面ごとに部が分かれており、たとえば第7部は表面の傷(スクラッチや欠け)の許容水準を「5/N×A」(Aミリ四方の枠内にN個までの欠点)という形式で表記すると定めています[3]。機械加工の図面で使う幾何公差や面粗度記号とは、記号の体系そのものが違います。 面精度の数値も独特です。光学素子の面精度はPV値(表面の最も高い点と最も低い点の高さの差)で表し、物理量のμmではなくレーザー波長λの分数で書く慣行があります。光学研磨の業界ではHe-Neレーザーの632.8nmを基準波長にする例が多く、λ/4は約0.158μm、λ/10は約63.3nmに相当します[4]。金属の精密加工がμm単位の寸法公差で戦うのに対し、光学研磨はその1桁から2桁下を扱う世界です[4]。 しかも、同じ「λ/2」と書かれた図面でも、実寸が一つに決まらないことがあります。ISOやDIN規格では面精度の基準波長は546.07nm(水銀e線)で、λ/2は約273nm。基準波長を632.8nmとする会社の読み方ではλ/2は約316.4nmになり、同じ表記のまま実寸が1割以上ずれます[5]。どちらの波長で読むかは、公差の値だけでなく検査(干渉計測定)の合否にも直結します[4]。指定が無い場合に面精度を保証する範囲(有効面)を公称寸法の90%として扱うという社内基準を公開しているメーカーもありますが、これは各社の内規であって業界共通の決まりではありません[5]。λ表記の図面は、基準波長と有効面の扱いが決まってから初めて見積の土俵に載ります。 では、光学部品はすべて研磨でしか作れないのでしょうか。アルミや無酸素銅のミラーには、単結晶ダイヤモンドバイトの超精密切削で研磨工程を経ずにRa2nm(0.002μm)の鏡面を得たという技術解説があります[6]。ただしこの数値は特定の工法と限られた材料の話で、ガラスの光学素子にこの工法は通常使えません[6]。発注の実務では、光学素子の図面はλ表記とISO 10110を読める先へ、金属部品の図面は機械加工の先へと、体系ごとに分けて出すのが出発点になります[3]。
Q. 鏡筒やマウントなど金属部品の図面では、どの数値と処理を指定すべきか?
A. 光学素子の位置を決める基準面の幾何公差、迷光を抑える黒色アルマイトの指定、真空中で使う装置ではシール面の面粗度、の3点が要になります[7][11]。 最初は基準面です。レンズやミラーは、マウントと鏡筒が決めた位置に置かれるしかないため、金属側の基準面の平面度や直角度がそのまま光軸精度に効きます。A6061のレーザー光学ハウジングでは、組み付け基準面の平面度0.005mm以内という要求に対し、5軸マシニング後の精密平面研削で平面度0.003mm、光軸ずれ1μrad以下に収めた公開事例があります[15]。A5052の顕微鏡台座ブロックでも、取り付け面の平面度と直角度0.003mmの要求を、精密平面研削と全数三次元測定で平面度0.002mm、直角度0.002mmに収めた公開事例があります[16]。基準面の数値は、装置側の光軸公差から逆算して図面に書かれているのが普通で、加工の都合だけで緩められる数値ではありません。 次に表面処理です。鏡筒やハウジングの内面には、迷光防止の黒色アルマイトが指定されることがあります。米国軍用規格MIL-A-8625を引いた図面では、処理はType(硫酸アノダイズのType II、硬質アノダイズのType IIIなど)とClass(着色はClass 2)の組み合わせで指定されます[7]。見落としやすいのは膜厚です。この規格は膜厚を一律に定めておらず、購買仕様書や部品図面に個別の数値(例示として2.0mil、約0.05mm)を指定する運用になっています[7]。膜厚の欄が空欄の図面は、処理条件が決まらないまま見積に出ることになります。先のA6061ハウジングの公開事例でも、5軸マシニングと精密平面研削の後に黒色アルマイト処理を工程の最後に置いています[15]。 真空中に光学系を置く装置では、金属部品にもう一段の指定が加わります。ビームラインや露光光学系の筐体は、アウトガスと軽量性からアルミとステンレスを選び分ける判断があり[12]、Oリング溝には溝底面Ra0.4程度、側面Ra1.6程度という真空シールの粗度の目安があります[11]。光を通す窓やビューポートを含む部品では、ガラス側と金属側で加工の発注先も規格体系も分かれるため、金属側の封止面の精度から切り分けて考えます[13]。 逆に、図面に現れない要求もあります。レーザー安全のクラス分類(JIS C 6802、クラス1から4など8区分)は、保護きょう体やセーフティインタロック、ラベル表示といった装置の機能要求を定めるもので、部品加工の寸法公差や面粗度を規定するものではありません[1]。クラス4などの機器を使う事業場側の管理措置(管理区域の設定や非常停止装置など)も、厚生労働省の通達が定める使用者側の義務です[2]。クラス分類は部品図面の数値を変えませんが、保護きょう体やインタロックの筐体部品そのものは機械加工の発注対象になります[1]。
Q. 深江特殊鋼に光学・レーザー装置の部品加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 図面が光学素子のものか金属部品のものかの切り分けから入り、材質と基準面の公差や面粗度、数量がそろえば、対応可否と見積を回答します[14]。 金属部品の側は、平面研削と円筒研削、マシニング、旋盤の設備で検討します。精密研削には、真空機器のシール面加工で公開しているRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmの数値があり、基準面の平面度と面粗度はこの工程能力を物差しにして判断します[11]。光学分野の公開事例では、A6061のレーザー光学ハウジングを5軸マシニングと精密平面研削で基準面平面度0.003mm、面粗度Ra0.1に仕上げ、黒色アルマイト処理を含む工程で12個を15営業日で納めた案件[15]と、A5052の顕微鏡台座ブロック10個を平面度0.002mm、直角度0.002mmで仕上げた案件があります[16]。表面処理や大物加工を含む案件も、国内認定パートナー150社超のネットワークから、材料と精度、ロット、納期の4軸で加工先を絞り込んで一括で受けます[14]。 光学・レーザー装置の調達には、図面の中身より手前の事情が絡むことがあります。光学研磨は言語化しにくい熟練技術に依存し、現場を支える職人の高齢化と後継者難で廃業を選ぶ会社が続いているという業界内の指摘があります[9]。統計でも、2025年の全国の後継者不在率は50.1%で、製造業は42.4%と全業種の中では低い側にあるものの、4割を超える水準が続いています[10]。装置側の需要も一定ではありません。半導体露光装置では2025年の新品販売台数が300台と前年の380台から減り、光源別ではKrFが前年152台から78台へ半減しています[8]。需要の波と加工先の承継リスクが重なる領域なので、図面と数量が固まる前の段階から、条件の整理と並行して加工先を確保しておく相談ができます[14]。
図面で見ておきたい条件
- λ表記の面精度が入った図面は、基準波長(546.07nmか632.8nmか)と有効面の範囲が決まってから実寸が確定します。図面に記載が無い場合は、見積時に確認事項として整理します[5]。
- 黒色アルマイトは、Type(硫酸か硬質か)とClass(着色)、膜厚の3点が図面か購買仕様書で決まってから処理条件が確定します。MIL-A-8625は膜厚を一律に定めない規格のため、膜厚の欄が空欄の図面は、そのままでは発注条件になりません[7]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と数量を確認してから回答します。
- レンズやミラーなど光学素子そのものの研磨を含む相談は、要求される面精度(λ表記の等級)と硝材、数量が決まってから、対応の範囲を回答します[4]。
- レーザー安全のクラス分類や使用事業場の管理措置は、装置メーカーと使用者側で決まる事項です。加工側が担うのは、図面に指定された寸法と面粗度、表面処理の実現と、注文時に取り決めた検査記録の提出までです[2]。
業界での実機事例(参考)

A6061光学機器用ハウジングの5軸加工

A5052光学機器用ブロックの5軸精密加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
λ/4やλ/10と書かれた光学素子の図面だけでも見積できますか?+
鏡筒の内面だけ黒色アルマイトにしたいのですが、何を指定すればよいですか?+
基準面の平面度は、どの程度の数値まで対応できますか?+
真空チャンバー内で使う光学系の部品も依頼できますか?+
レーザー装置のクラス分類(クラス4など)によって、部品加工の条件は変わりますか?+
レンズやミラーなど光学素子の加工も一緒に頼めますか?+
試作1個からでも発注できますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
検査成績書や測定データは付けてもらえますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] JIS C 6802:2014 レーザ製品の安全基準(対応国際規格 IEC 60825-1:2014)要約
- [2] レーザー光線による障害の防止対策について(平成17年3月25日 基発第0325002号)
- [3] ISO 10110-7:2017 光学素子と光学系の図面作成 第7部(表面の欠点)
- [4] 夏目光学: 面精度(PV値、λ表記)の技術解説
- [5] 株式会社テクニカル: 面精度表記と基準波長の換算
- [6] 超精密・微細加工.com: ダイヤモンド旋削による鏡面加工(Ra2nm)の技術解説
- [7] AAC(anodizing.org): MIL-A-8625(アルミ陽極酸化皮膜の米国軍用規格)解説
- [8] マイナビTechPlus: 半導体露光機3社の決算まとめ(2026年2月16日)
- [9] ミポックス: 研磨業界の人手不足問題(2026年6月22日)
- [10] 帝国データバンク: 全国「後継者不在率」動向調査(2025年)
内部事例
- [15] 加工事例: A6061光学機器用ハウジングの5軸加工
- [16] 加工事例: A5052光学機器用ブロックの5軸精密加工
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