医療機器の部品にレーザー彫刻を依頼するとき、何を先に決めるべきか?
まず決めるのは、その医療機器が使用のたびに再処理されるものかどうか、母材のどの面をどれだけ削ってよいか、彫刻を表面処理と洗浄のどちら側で通すかの3点です。この3点が決まると、レーザー彫刻を工程に入れるのか、別の表示方法で足りるのかが切り分かります。[1][2]
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材質と材料規格、外形と素材長さ、穴径、彫る内容、想定している再処理の条件のうち、分かっているものだけメモにしてMeta-Naviのお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!彫刻が要る部品かどうかの切り分けから一緒に進められます。
まず確認すること
レーザー彫刻は、印刷ではなく削る加工です。高い放射照度のビームが当たった場所で母材が溶け、一部が蒸発して、周囲とは表面性状の違う凹みが残ります。標準的なマーキング用途の彫刻深さは10〜50μmで、金型のようにmm級まで彫る場合は複数回の処理に分かれます。[2] 彫刻を1工程足すという指示は、部品の表面を局所的に削ることを図面で認めるという意味になります。一方、機器本体への恒久表示が求められる範囲は、米国FDAのUDI規則で言えば、複数回使われ使用のたびに再処理される機器です。単回使用機器は原則として直接表示の対象外で、追加の再処理が1回だけの場合を含む4つの除外事由も条文に置かれています。[1] 医療機器だから全部品に彫刻が要る、という前提のままでは、彫る面も彫刻深さも決まりません。
納期が遅れやすいポイント
- 図面にレーザー彫刻とだけ書かれていて、彫るのが識別番号なのか2次元コードなのか、彫刻深さ(μm)の指定があるのかが読み取れない[2]
- 米国向けだからと恒久表示を求められたが、その部品が直接表示の対象になるのか除外事由に当たるのかを条文から判断できない[1]
- 彫刻で母材が削れることが共有されておらず、公差と面粗度の指示がある面に彫刻位置が置かれたまま図面が回っている[2]
- 使用のたびに再処理される機器なのに、再処理を通した後もマークが読めるかを誰がどの条件で確認するのかが決まっていない[1]
- mm級の深さで彫るよう指示されているが、標準的なマーキング用途の10〜50μmとは処理回数が変わることが社内で共有されていない[2]
Q. なぜ医療機器の部品にレーザー彫刻が指定されるのか?
A. 機器本体への恒久表示が規制側の要求になっている場合があり、その要求が材料規格や検査項目と並んで図面へ降りてくるためです。[1] 米国FDAのUDI規則は、ラベルにUDIを表示すべき機器のうち、複数回使われ、使用のたびに再処理される機器について、機器本体そのものへ恒久マーキングを施すことを求めています。[1] 包装や添付のラベルは、洗浄と滅菌を通した後の機器本体には残りません。ラベル側の表示だけでは再処理後の1本を識別できないため、本体側に消えない表示を置く形になっています。 規則は加工方法までは指定していません。認められている提供形式は、容易に判読できるプレーンテキストか、AIDC技術もしくは要求に応じてUDIを提供する代替技術の2通りです。[1] レーザー彫刻でプレーンテキストを刻む形も、2次元コードを刻む形も、この2通りのどちらかに当たり得ます。どちらを選ぶかで、彫る面積と彫刻深さ、受入検査で読み取り機を使うかどうかが変わります。 除外事由も条文にあります。直接表示が機器の安全性や有効性を損なう場合、技術的に実行不可能な場合、追加で1回だけ再処理される単回使用機器、すでに表示済みの場合の4項目です。[1] 除外を適用した表示責任者には、その判断根拠を設計開発ファイルへ文書化する義務が課されています。[1] 弊社が発注前に確認させていただくのは、対象の部品がこの4項目のどれかに当たるかを、顧客側で判断済みかどうかです。 この規則は米国の連邦規則であり、日本の薬機法上の表示義務の根拠にはなりません。国内向けだけの機器に同じ要求を広げるかどうかは、顧客の社内規定と納入先で決まります。材料規格と納入先が分かると、規制の話なのか社内規定の話なのかが切り分けられます。[1]
Q. 図面には彫刻の条件をどう書けばよいのか?
A. 彫る内容、彫刻深さ(μm)、彫る面と母材の材料規格、彫刻を通す工程順の4つを、数値と規格番号で書きます。[2] 彫刻深さを最初に確定させるのは、彫刻が削る加工だからです。高い放射照度のビームが当たった場所で母材が溶け、一部が蒸発して、周囲とは表面性状の違う凹みが残ります。[2] 標準的なマーキング用途の深さは10〜50μmで、金型のようにmm級まで彫る場合は複数回の処理に分かれます。[2] 図面に深さの記載がないと、彫る側は自社の標準条件で埋めます。公差や面粗度の指示がある面なら、その埋め方の差がそのまま検査結果の差になります。 彫る面と母材の材料規格は、深さと同じ欄に書きます。金属を彫刻すると、溶けた材料が大気中の酸素と反応して酸化物ができ、彫った面の色が変わります。色は材料で決まります。[2] ただし技術資料の記載からは材料ごとの色の対応が一意に読み取れないため、色の合否がある案件では、量産条件を決める前に同じ材料規格の試し彫りで確認します。[2] 工程順は、彫刻の前後で表面状態が変わるかどうかで決めます。表面処理、洗浄、滅菌のどこで彫刻を通すかによって、彫った面の見え方と検査のタイミングが変わります。技術資料が扱っているのは彫刻そのものの機構と深さの範囲までで、滅菌や再処理を繰り返した後の判読性には触れていません。[2] 再処理の回数と方法が図面か仕様書に書かれていれば、その条件で試験を組むかどうかを含めて相談できます。 医療分野は、この技術資料が主な適用分野として挙げている1つです。ただし名前が挙がっている対象は、熱に弱いセンサやチップへのマーキングです。[2] 例がここに限られるため、切削部品への彫刻条件をこの記載から読むことはできません。母材の材料規格と要求される深さが決まってからの確認になります。
Q. 弊社へ相談いただく場合、切削と彫刻の担当はどこで分かれるのか?
A. 医療機器部品の切削と材料手配、加工後の検査記録は自社で受けます。[3] レーザー彫刻を含む案件は、彫る内容、彫刻深さ、材料規格が決まってから対応可否と見積りを回答します。[4] 公開している医療分野の対応工程は、5軸加工、スイス型自動旋盤、マシニング、旋盤、研削の5区分です。対応材料はチタン、SUS304、SUS630、PEEK、アルミニウムで、細径部品はφ1〜5mm、歯科インプラントのアバットメントはφ4〜6mmの範囲を挙げています。[4] 彫刻を含む案件は、切削と彫刻をまとめて一括で受け、対応可否と見積りを回答します。 切削側は公開事例で条件を出しています。医療機器用のステンレスライナーで、材質SUS630、外形φ150、素材長さ350mmの素材にφ50の貫通穴をBTA加工機で加工した事例です。[3] SUS630は析出硬化系ステンレスに分類され、熱処理後に強度と硬度を持たせて使われます。[3] この事例に彫刻や刻印の工程は含みません。図面の穴径と長さをこの条件と比べていただくと、切削側が対応できる材質と寸法の範囲に入るかどうかが見えます。 レーザーを使う加工でも、既に公開している経路は別工程です。レーザー溶接とレーザー肉盛による補修は、適用分野に歯科技工と医療機器を挙げ、補修例に刻印の直しを含みます。対応材料にはSUS、チタン、インコネルが挙がっています。[5] これは既にある刻印を金属を盛って直す側の加工で、新しくマークを彫る加工とは工程が違います。新規の彫刻は、この経路とは別に対応可否と見積りを回答します。 担当が分かれる案件では、彫刻の前後で誰が何を確認するかを先に決めます。母材の材料規格と彫刻深さ(μm)を仕様書に明記いただき、再処理後の判読の判定基準は顧客側の仕様書で決めていただく形が確実です。母材の材料規格と彫刻深さ(μm)、彫る面の位置と数量が図面か仕様書で決まった時点で、切削と彫刻それぞれの対応可否と見積りをお返しします。再処理の回数と方法が未確定のままでも、切削側の可否と彫刻の可否は分けて回答できます。[3][4]
図面で見ておきたい条件
- 米国向けの機器だからと恒久表示を求められている場合は、根拠にしている条項番号と、その機器が複数回使われ使用のたびに再処理されるものかどうかを、材料規格や検査項目と同じ欄に書いてもらってください。条文が直接表示を求めているのはこの条件に当たる機器で、単回使用機器は原則として対象外です。[1]
- 国内向けだけの機器へ同じ表示を広げるかどうかは、この米国連邦規則からは判断できません。条文が対象にしているのは米国の規制下に置かれる機器であり、日本の法令が同等の直接表示義務を課しているかどうかは、別の条文で確認することになります。納入先と材料規格が分かると、規制の話か社内規定の話かが切り分けられます。[1]
- 除外事由を使って直接表示を省く場合、その判断根拠を設計開発ファイルへ文書化する義務は、加工を請け負う側ではなく表示責任者(ラベラー)側にあります。弊社に彫刻の要否を尋ねられても、この文書化までは代行できません。材料規格と機器の再使用条件が決まれば、彫刻工程を入れるかどうかの見積り側は回答できます。[1]
- 彫刻深さは母材が減る量そのものです。標準的なマーキング用途は10〜50μm、mm級まで彫る場合は複数回の処理に分かれます。公差や面粗度の指示がある面に彫刻位置を置くなら、その凹みが検査項目に当たるかどうかを図面で決めてください。[2]
- 金属を彫刻すると、溶けた材料が大気中の酸素と反応して酸化物ができ、彫った面の色が変わります。生じる色は材料で決まります。ただし技術資料の記載からは材料ごとの色の対応が一意に読み取れないため、色の合否がある案件では同じ材料規格の試し彫りで確認します。[2]
相談前に知っておきたいこと
- レーザー彫刻の工程単価と、洗浄と滅菌を繰り返した後もマークが判読できるかどうかは、母材の材料規格、彫刻深さ(μm)、再処理の回数と方法が決まってから、受け先を確認したうえで回答します。根拠にした技術資料は、彫刻の機構と深さの範囲までを扱っており、再処理後の耐久性や生体適合性には触れていません。[2][4]
- 彫刻工程を含む案件は、母材の材料規格、彫刻深さ(μm)、彫る面の条件が決まってから対応可否と費用を回答します。切削と材料手配、加工後の検査記録は自社で受けます。[3][4]
関連するものづくりトピックス
よくある質問
図面に彫刻の指示がまだ入っていない段階でも相談できますか?+
切削は別の会社に出していて、レーザー彫刻だけを頼みたい場合はどうなりますか?+
彫刻深さの指定が分からないときは、どう決めればよいですか?+
材料を支給する形でも、彫刻まで含めて相談できますか?+
彫刻は表面処理の前と後のどちらで通すべきですか?+
滅菌を繰り返してもマークが消えないことを保証してもらえますか?+
試作1個だけでも彫刻まで含めて依頼できますか?+
見積りの初回回答までに、何を伝えておくと早いですか?+
国内向けだけの機器でも同じ確認が要りますか?+
他社へ出している案件の彫刻条件だけを見直したい場合も相談できますか?+
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参考事例・文献
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