医療機器のUDI表示をレーザー刻印で入れる部品、発注前に何を確認すべきか?
まず決めるのは、刻む識別子がGTINかGIAIか、GS1データマトリックスのモジュール幅を何mmにするか、母材の材料規格とその部品が通る滅菌サイクル数はいくつかの3点です。この3点が決まると、レーザー刻印を工程に入れるのか、包装側の表示と記録で足りるのかが切り分かります。[1][2]
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部品の材質、刻みたい内容と桁数、顧客から求められている読み取り評価の規格、滅菌の有無、数量のうち、分かっているものだけメモにしてMeta-Naviのお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!本体へ刻むのか包装表示と記録で足りるのかの切り分けから一緒に進められます。
まず確認すること
レーザー刻印は、刻めるかどうかが分かっても条件は確定しません。残るのは、刻んだコードを機械が読めるかどうかです。GS1の運用ガイドは、GTINとシリアル番号を26桁、セル数18×18で載せる場合、0.5mm×0.5mmでの印字も技術的には可能だと書いています。同じ資料が本体表面のマーキングとして推奨しているのは3〜5mm角です。[1] この開きは、刻める限界と、実務で読める寸法が別の話であることを示しています。推奨より狭いモジュール幅を使うと、読み取りへの影響に加えて、特殊なリーダーや特殊なマーキングプロセスが必要になり、コストが上がります。このため推奨より小さい幅は、内部または取引企業間の合意によってのみ使うべきだとされています。[1] 図面に書くべきなのは刻印の有無ではなく、母材の材料規格、モジュール幅X(mm)、そして受入検査で誰がどの機器で読むかです。
納期が遅れやすいポイント
- 図面にレーザー刻印とだけ書かれていて、刻むのがGTINなのかGIAIなのか、2Dコードなのか文字なのかが読み取れない[1]
- 顧客から米国やEUのUDI規制を根拠に本体への直接表示を求められたが、国内の薬機法でどこまでが義務なのかが分からない[1]
- モジュール幅を狭くすれば小さい部品にも刻めると考えていたが、読み取り側の機器と分解能を聞かれて答えられない[1]
- 繰り返し滅菌する器具で、刻印が何サイクルまで判読できるのかを確認しないまま図面を出している[2]
- 切削の発注先と刻印の発注先が分かれ、母材の材質と表面状態に合う刻印方式を誰が決めるのかが決まっていない[5]
Q. なぜ医療機器の部品でレーザー刻印(UDI表示)が求められるのか?
A. 機器が包装から離れた後も個体を識別できる状態が求められ、その要求が材料規格や検査項目と並んで図面へ降りてくるためです。[1][2] 国内の位置づけは二層に分かれています。2008年から厚生労働省の通知で医療機器等へのバーコード表示が進められ、2019年11月の薬機法改正成立でバーコードの表示が法令のもと義務化されました。一方、本体へ直接刻むダイレクトマーキング自体は国内の規制による義務の対象ではなく、国際整合性と医療現場のトレーサビリティ管理を理由に、業界内で実施が推奨されているという位置づけです。[1] 国内向けだけの製品では、包装表示で足りるのか本体刻印まで要るのかは、顧客の社内規定と納入先の要求で決まります。 輸出が絡むと期日が入ってきます。米国のUDI規制による直接表示の遵守期日は、生命維持や延命装置が2015年9月24日、クラスIIIが2016年9月24日、クラスIIが2018年9月24日、クラスIが2022年9月24日と、すでに全クラスで到来しています。EUのMDRではクラスIIIと植込み機器が2023年5月26日、クラスIIaとIIbが2025年5月26日、クラスIが2027年5月26日です。[1] 納入先が海外市場向けの完成品メーカーであれば、その完成品側の期日から逆算して、部品に刻印を入れる時期が決まります。 刻印の手段としてレーザーが挙がるのは、非接触で母材へのダメージを抑えられ、狭いスペースにも微細な印字ができるためです。段差の奥や半円のような立体形状にも印字でき、金属だけでなく樹脂素材にも対応できます。[1] 金属ではファイバーレーザー(1064nm)によるアニール(黒色)マーキングが使われ、材料を除去せずに高コントラストで耐食性のあるマークを作ります。[2] 母材の表面を削らずに済む点は、インプラントのように面粗度が機能に効く部品で意味を持ちます。
Q. 図面にはレーザー刻印の何を指定すればよいのか?
A. 識別子の種類、モジュール幅X(mm)とクワイエットゾーン、刻印方式、読み取り評価の規格番号の4つを、母材の材料規格とあわせて数値で書きます。[1] 識別子は誰が刻むかで変わります。製造業者がダイレクトマーキングする場合はGTIN(AI=01)、医療機関が自ら資産管理のために刻む場合はGIAI(AI=8004)を使い、GIAIは資産管理専用で取引対象には使ってはならないと規定されています。[1] 図面に「UDI」とだけ書かれていると、この区別が決まりません。GTINとGIAIでは付与するAIも桁構成も違うため、コードに載る桁数も、そこから決まる必要な表示面積も一意になりません。 寸法はモジュール幅Xで指定します。レーザーマーキングが該当するA方式では最小0.100mm、目標0.200mm、最大0.300mm、クワイエットゾーンは4辺とも1Xです。ドットピンマーキングが該当するB方式は最小0.200mm、目標0.300mm、最大0.495mmで、同じ内容を刻んでも下限が倍近く違います。[1] 部品の平面が狭くて推奨サイズが取れないとき、方式の選択が寸法の制約側から決まることがあります。母材の材料規格と、刻印に使える平面の大きさを先に押さえると、方式の候補が絞れます。 刻印方式は3つあります。黒色マーキングは熱で黒く発色させ、彫込みマーキングは照射密度を上げて表面を除去し、コールドマーキングは表面の酸化膜を残したまま黒く発色させます。SUSでは彫込み方式とコールドマーキング方式が錆びに強いことが実験で確認されており、コールドマーキングでは印字により破壊された酸化膜が再形成され、元の耐腐食性を取り戻すと説明されています。[1] 母材の材料規格、表面を削ってよいかどうか、刻印の後に電解研磨や陽極酸化を通すかどうかが、この選択に効きます。 品質の指定は規格番号で書きます。シンボル品質の評価はISO/IEC 15415(JIS X 0526)、読み取り性能の評価はISO/IEC 29158を参照するよう運用ガイドが明記しています。[1] 読み取り側では、印字サイズが小さいため高分解能カメラが必要になること、母材の材料によって下地色が変わるためコントラストを出す照明の工夫が要ること、鏡面やつや消しや梨地といった表面状態と曲面形状で撮像が難しくなることの3点が挙げられています。[1] 受入検査で使う機器が決まっていないと、刻印条件を詰めても合否の基準が動きます。
Q. 深江特殊鋼に相談する場合、対応可否と見積りはどう決まるのか?
A. 材料の手配と切削、バリ取りや洗浄、表面処理までは自社の工程として受けます。刻印工程と読み取り検査については、案件ごとに条件を確認したうえで対応可否をご案内します。[3][5] 公開している設備一覧は、BTA深穴機、ガンドリル、フライス、マシニング、旋盤、研削、放電加工、切断、中ぐり、ラジアルボール盤、精密旋削の11区分です。協力企業の対応領域は、スイス型自動旋盤、熱処理、表面処理、溶接、検査、組立の6つです。[5] 刻印を含む案件は、切削とあわせて対応可否と見積りをご案内します。 切削側には医療機器部品の実例があります。Ti-6Al-4Vの内視鏡手術機器ハウジングでは、80×60×40mmの複雑形状を5軸で一括加工し、公差±0.02mm、面粗度Ra0.4で仕上げ、陽極酸化で生体適合性コーティングを付与しました。生体適合性試験に合格し、高圧蒸気滅菌1,000サイクル後も寸法変化がないことを確認しています。数量30個、納期20営業日の案件です。[3] SUS316の骨固定スクリューでは、φ8×L90mmの素材にφ3×L80mmの深穴をガンドリルで加工し、穴位置精度±0.05mm、面粗度Ra0.8で月500本を量産しています。[4] この2件に刻印の工程は入っていません。滅菌1,000サイクルの確認は寸法についてのもので、刻印の判読性を測ったものではありません。[3] 刻印の耐久性については、ステンレス製手術器具のアニールマーキングで滅菌500サイクル後も判読可能だったという第三者機関の検証が外部資料にあります。[2] 自社の加工事例と外部資料は別の対象を測っているため、滅菌後の判読性は、案件の材料規格と刻印方式が決まってから、読み取り検査の条件とあわせて確認します。 認証の要求は、刻印そのものより先に効いてきます。医療機器向けの清浄度管理やISO13485に関する記載は、業界紹介ページや個別案件の検査記録として社内に存在しますが、会社としてISO13485等の認証を保有しているわけではありません。必要な清浄度と検査規格は案件ごとに個別確認する前提で進めます。[6] UDI表示は品質管理システムの運用とあわせて求められることが多いため、材料規格や検査項目と同じ欄に認証の指定がある場合は、その番号のまま提示してください。
図面で見ておきたい条件
- 顧客が米国のUDI規制やEU MDRを根拠に本体への直接表示を求めている場合は、根拠にしている規制名と対象クラス、適用日を、材料規格や検査項目と同じ欄に書いてもらってください。国内では薬機法でバーコード表示が義務化されている一方、本体へのダイレクトマーキング自体は国内規制の義務ではなく業界推奨という位置づけのため、納入先の市場によって要求内容が変わります。[1]
- モジュール幅Xは、レーザーマーキングが該当するA方式で最小0.100mm、目標0.200mm、最大0.300mmと定められ、クワイエットゾーンは4辺とも1Xです。推奨より狭いモジュール幅は、読み取りへの影響に加えて、特殊なリーダーや特殊なマーキングプロセスの必要、コスト増を伴うため、内部または取引企業間の合意によってのみ使うべきとされています。母材の材料規格と、刻印に使える平面の大きさが決まらないうちは、どの幅で成立するかを判断できません。[1]
- 繰り返し滅菌する器具では、刻印の判読性を滅菌サイクル数と受入検査の条件をあわせて確認します。ステンレス製手術器具のアニール(黒色)マーキングについては、第三者機関による検証で滅菌500サイクル後も判読可能だったと報告されています。[2] ただしこれは特定の材料と刻印条件での結果であり、母材のグレードや洗浄剤が変われば同じ結果にはなりません。
- 刻印方式は母材の材料規格で選び分けます。GS1の運用ガイドは、SUSにおいて彫込み方式とコールドマーキング方式が錆びに強いことを実験で確認したと記載しており、コールドマーキングでは印字により破壊された酸化膜が再形成され、元の耐腐食性を取り戻すと説明しています。[1] 樹脂部品では熱損傷を避けるため、金属向けとは別にUVレーザーによる光化学的な発色が使われます。[2]
- 刻印工程の対応可否と条件は、母材の材質と刻印方式が決まってから、案件ごとに確認したうえで回答します。[5]
相談前に知っておきたいこと
- レーザー刻印の工程単価と、要求されたモジュール幅と読み取り評価を安定して満たせるかどうかは、母材の材質と表面状態、コードに載せる桁数、刻印位置、数量が決まってから回答します。[1][5]
- 深江特殊鋼は会社としてISO13485等の認証を保有していません。清浄度と検査規格の要求は案件ごとに個別確認したうえで、対応可否を回答します。[6]
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

Ti-6Al-4V医療用機器ハウジングの5軸加工

SUS316医療用インプラントのガンドリル加工
よくある質問
図面にまだ刻印の指示が入っていない段階でも相談できますか?+
レーザー刻印だけを単独で依頼することはできますか?+
モジュール幅をいくつにすればよいか分からないときは、どう確認すればよいですか?+
支給材でも刻印を含めた相談はできますか?+
刻印は表面処理の前と後のどちらにすべきですか?+
樹脂部品でも同じ考え方で確認できますか?+
試作1個だけでも刻印まで含めて依頼できますか?+
初回の回答を早くするには、何を伝えればよいですか?+
他社へ出している案件で、刻印が読めないという指摘だけを相談できますか?+
ドットピンマーキングとどちらを選べばよいですか?+
海外市場向けの製品に使う部品でも相談できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [3] Meta-Navi 加工事例: Ti-6Al-4V医療用機器ハウジングの5軸加工
- [4] Meta-Navi 加工事例: SUS316医療用インプラントのガンドリル加工
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