極低温・クライオ機器の部品加工はどこまで外注できるか、発注前に何を確認すべきか?
極低温機器の部品加工は、まず部品の最低使用温度を確認します。低温用の炭素鋼鋼板は鋼種ごとに-30℃から-60℃の最低使用温度が決まっており[3]、それより低い液体窒素などの温度域では、オーステナイト系ステンレス鋼やアルミ合金の指定が前提になります[3]。材料指定と衝撃試験の要否が読み取れれば、通常の精密部品と同じ手順で外注できます。
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使用温度や材質がまだ確定していない段階でも、分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!使用温度と材料指定の確認から一緒に進めます。
まず確認すること
極低温機器の部品加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、部品が置かれる温度です。低温用鋼板は鋼種ごとに使える最低温度が決まっており、-60℃を下回る温度域では材料の選択そのものが変わります[3]。深江特殊鋼は使用温度と流体の確認から入り、図面と数量をうかがったうえで対応可否と見積を回答します[17]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面にSLA材の鋼種記号やシャルピー衝撃試験の温度指定があるが、加工先がその材料指定と証明にどう応えられるのか分からない。[3]
- 特定設備検査が材料の品質確認から加工、溶接、構造まで立会いで確認する制度だと知らないまま、通常の部品と同じ聞き方で見積を依頼してしまう。[2]
- 長年の加工先が廃業し、低温機器の交換部品を同じ材料指定で作れる先が見つからない。後継者難による倒産は2024年1月から10月だけで455件ある。[12]
- 酸素用機器の図面にある残留物mg/m2の洗浄指定がどの基準から来た数値か分からず、加工先へどこまで要求すべきか判断できない。[8]
- ASMEやEN 13458が前提の海外向け図面と、高圧ガス保安法が前提の国内図面で、材料と試験の要求の読み方が変わることに気づかないまま発注を進めてしまう。[6][7]
Q. なぜ極低温機器の部品は、材料の指定が普通の精密部品より厳しくなるのか?
A. 使用温度が下がるほど金属は脆くなり、材料規格が鋼種ごとに使える最低温度と衝撃試験を定めているためです。図面の材料記号は、この温度の枠組みから来ています[3]。 低温側の出発点は0℃です。可燃性ガスを0℃以下で貯蔵する、または液化した状態で気相部の圧力0.1MPa以下で貯蔵する貯槽は「低温貯槽」として法令に定義され、断熱材や冷凍設備で温度上昇を防ぐ構造が前提になります[1]。貯槽や熱交換器などの特定設備になると、製造者または輸入者は高圧ガス保安法第56条の3に基づく特定設備検査を受けます。設計の検査に続いて、材料の品質確認、加工、溶接、構造が立会いで確認され、合格すれば完成検査の一部が省略されます[2]。検査項目の並びが示すとおり、材料と加工の工程そのものが検査対象です。 材料規格の側はどうなっているのでしょうか。低温圧力容器用の炭素鋼鋼板を定めるJIS G 3126では、鋼種記号SLA235Aが厚さ6〜50mmで最低使用温度-30℃、SLA235Bが同じ厚さ区分で-45℃、SLA325Aが厚さ6〜38mmで-45℃、SLA325BとSLA365、SLA410が厚さ6〜38mmで-60℃と、鋼種ごとに使える下限温度が決まっています[3]。保証のしかたも一律ではありません。シャルピー衝撃試験の温度は板厚区分ごとに指定され、たとえば厚さ6〜8.5mm未満ではSLA235Aが-5℃、SLA235Bが-30℃、SLA325Aが-40℃で試験します[3]。試験方法はJIS Z 2242が定めており、指定温度で試験する場合、試験片の温度は指定温度の±2℃以内に保たなければなりません[4]。 見落としやすいのは、この表の下端です。JIS G 3126の炭素鋼鋼板がカバーするのは-60℃までで、液体窒素の-196℃や液体水素の-253℃はこの範囲の外にあります。そこではオーステナイト系ステンレス鋼やアルミ合金への材料の切り替えが前提になります[3]。国際規格も同じ骨格を持っています。極低温容器の材料じん性を定めるISO 21028は-80℃を境に2部に分かれ、-20℃から-80℃を扱う第2部は降伏強さ460N/mm2以下の細粒鋼と低合金鋼、アルミニウム合金、銅合金、オーステナイト系ステンレス鋼を対象とし、-80℃未満を扱う第1部は非合金鋼と鋳造材料を適用外としています[5]。米国系のASME規格では、最低設計金属温度と部材厚さの組み合わせで衝撃試験の免除可否を判定する4本の曲線(Curve AからD)が使われます[6]。どの規格圏でも、温度と厚さと材料区分の組み合わせが指定を決めるという構造は共通です。図面のSLAやSUSの記号を加工の都合で読み替えられないのは、この枠組みが検査と証明につながっているためです[2]。
Q. 極低温機器の図面の数値は、どの規格や製品系列から来ているのか?
A. 真空断熱容器はEN 13458などの容器規格、配管とバルブは製品系列の仕様、洗浄は酸素用のCGA基準というように、図面の指定値には出どころごとの系統があります[7]。 容器から確認します。液体窒素や液体酸素を貯蔵する静置形の真空断熱極低温容器には欧州規格EN 13458があり、最高使用圧力0.5barを超える容器の設計と製造、検査、試験を規定します。0.5bar以下の容器には指針として使えるという位置づけです[7]。基本要求を定める第1部と、設計から試験までの詳細を定める第2部の2部構成で、対象は同規格が定める流体に限られます[7]。 配管は二重管です。液化ヘリウムや液化水素、LNGなどを蒸発損失を抑えて運ぶ真空断熱配管では、内管と外管にSUS304、SUS316、SUS316Lが使われる例があり、標準品の常用圧力1MPa、定尺長さ4mから12m、接続は溶接と一般継手、バイオネット継手という仕様が公開されています[10]。バルブにも製品系列の実例があります。国内メーカーの超低温バルブには-196℃から-45℃の温度域に対応するとされる製品があり、本体材質にはSUS316L相当の鋳鋼SCS16Aが使われる例があります[9]。低温延長ボンネットという専用構造を持つ点も、常温のバルブとの違いです[9]。 温度と圧力だけで図面の指定は終わりません。酸素、または酸素濃度23.5%を超えるガスや液体に接する機器の洗浄には米国CGAのG-4.1という基準があり、不揮発性残留物は220mg/m2以下、配管内面の残留物は500mg/m2未満、微粒子は1000μmを超えるものが存在しないこと、500〜1000μmの粒子は1m2あたり215個以下、という数値で管理されます[8]。面粗度とは別の軸で、加工後の洗浄が数値管理の対象になるということです。 シール部はどうでしょうか。ゴム系のOリングは極低温では硬化しやすく、金属シールへの置き換えが必要になる場合があります[15]。常温の真空用途では溝底面Ra0.4程度、側面Ra1.6程度という面粗度の目安があり、金属シール溝では同軸度0.003mm、真円度0.002mm、Ra0.1で仕上げた加工の公開値があります[15]。極低温の案件でこの数値をそのまま使えるかは図面側の指定によりますが、シール面の面粗度と真円の管理という工程の中身は共通です。
Q. 深江特殊鋼に極低温機器の部品加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 使用温度と流体、図面の材料指定の確認から入り、材質と数量がそろえば対応可否と見積を回答します[17]。 最初に確認するのは、(1)部品の最低使用温度と接する流体、(2)特定設備検査など検査上の位置づけ、(3)材料証明と衝撃試験の要否、の3点です。同じSUS316Lの部品でも、この3点で相談の進み方が分かれます。特定設備に組み込まれる部品なら、材料の品質確認から立会検査の対象になるため、検査記録と材料証明の段取りが見積の条件に入ります[2]。検査と関わらない研究設備や試作の部品なら、公差や工程を加工側から提案できる、通常の精密加工として進められます。 工程能力の物差しになるのは面の管理です。自社工場には平面研削と円筒研削、マシニング、旋盤があり、精密研削の対応レンジは真空機器のシール面加工で公開しているRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmです[15]。封止面の管理では、コバール気密封止パッケージの封止面を平面度0.003mm、面粗度Ra0.2で仕上げ、ガラス封止後のリーク率ゼロを確認した公開事例があります[16]。真空断熱層を持つ機器で効くのは、この気密と面精度の管理です。素材の調達や大物加工、溶接を含む製缶、表面処理までを含む案件は、国内認定パートナー150社超のネットワークで、材料と精度、ロット、納期の4軸に合わせて一括して受けます[17]。 交換部品や更新部品の相談では、加工条件より手前で調達の事情が効いてくることがあります。全国の中小企業では後継者不在率が52.1%(2024年、全産業の統計)に達し、後継者難による倒産は2024年1月から10月だけで455件を数えます[12]。溶接の人材も細っています。溶接技能者の有効求人倍率は2021年12月に5.56倍を記録し、その後も3倍を超える水準で推移しています[13]。立会検査に耐える材料品質と溶接品質を持つ加工先ほど数が限られるため、極低温分野では加工先が1社に寄る影響が重くなりやすい構図です[2]。二社目の発注先を確保しておく形も、切り分けて相談できます[14]。
図面で見ておきたい条件
- 相談の最初に、部品の最低使用温度と接する流体をお知らせください。同じステンレス部品でも、-30℃までの低温と液体窒素の-196℃では、指定される材料規格と証明の範囲が変わります[3]。
- 酸素、または酸素濃度の高いガスや液体に接する部品は、加工後の洗浄に残留物と微粒子の数値基準(NVR 220mg/m2以下など)が指定されることがあります。図面や仕様書の洗浄条項の有無が分かると、工程の確認が早く進みます[8]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と使用温度、検査上の位置づけを確認してから回答します。
- 特定設備検査の申請や受検の代行は行っていません。加工側が担うのは、図面に記載された寸法と材料指定の実現と、注文時に取り決めた検査記録の提出までです[2]。
- 衝撃試験値などの材料証明は、図面と適用規格の指定内容が決まってから、付けられる証明の範囲を回答します[3]。
業界での実機事例(参考)

コバール気密封止パッケージの精密加工

SUS304半導体製造装置ノズルの5軸加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
液体窒素温度(-196℃)で使う部品でも見積できますか?+
ミルシートや衝撃試験値の証明は付けてもらえますか?+
特定設備検査に関わる貯槽の部品も相談できますか?+
TIG溶接を含む製缶と機械加工をまとめて依頼できますか?+
ステンレスとアルミのどちらで作るか決まっていません。相談できますか?+
酸素用の部品の洗浄まで対応してもらえますか?+
無酸素銅やチタンの部品でも対応できますか?+
交換部品を1個だけ作ってもらえますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] 一般高圧ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第53号) 低温貯槽等の定義
- [2] 高圧ガス保安協会(KHK): 特定設備検査について
- [3] JIS G 3126:2015 低温圧力容器用炭素鋼鋼板(鋼種区分と最低使用温度、衝撃試験条件)
- [4] JIS Z 2242:2018 金属材料のシャルピー衝撃試験方法
- [5] ISO 21028-1:2016 / ISO 21028-2:2018 Cryogenic vessels — Toughness requirements for materials at cryogenic temperature
- [6] ASME BPVC Section VIII Div.1 UCS-66(衝撃試験免除曲線)および STP-PT-028
- [7] EN 13458-1/-2:2002 Cryogenic vessels — Static vacuum insulated vessels
- [8] CGA G-4.1-2018(第7版) Cleaning Equipment for Oxygen Service
- [9] キッツ(KITZ): 超低温バルブ 製品ページ
- [10] 真空断熱配管の製品情報(エア・ウォーター、千代田工業ほか)
- [11] クライオポンプ市場調査レポート紹介ページ(グローバルインフォメーション)
- [12] 帝国データバンク: 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
- [13] 溶接技能者の人材不足に関する統計(Mono Que、一次出典は厚生労働省職業安定業務統計等)
内部事例
- [16] 加工事例: コバール気密封止パッケージの精密加工
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