医療機器に316Lステンレスを使うべきか、チタンやPEEKとどこで分かれるのか?
まず、その部品が体内に留置されるのか体外機器の一部なのか、接触する液体の塩化物濃度と温度がどれくらいかを先に切り分けます。316Lステンレスは外科インプラント用の規格でも使用実績のある鋼種として扱われますが、温かい塩化物環境では孔食が起きます。[1][2]
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部品が体内に留置されるかどうか、接触する液体と温度、外径と全長、穴の条件、月あたりの数量のうち、今わかっている項目だけメモにしてMeta-Naviのお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!材料規格の決め方から一緒に整理できます。
まず確認すること
図面に316Lと書かれていると、材料側の条件はそれで決まったように見えます。外科インプラント用の鉄基合金を定めたJIS T 7403-1を読むと、そうはなっていません。同規格は成分をクラスDとクラスEに分け、クロムとモリブデンから計算する耐孔食性指数を26以上とし、オーステナイト結晶粒度は4番より細かく、固溶化処理後の組織にδフェライトが認められないことまで求めています。[1] 一方、一般の工業用316Lとして流通する材料は、炭素0.03%以下、クロム16.0から18.0%、モリブデン2.00から3.00%という広い範囲で規定されており、この成分表だけではインプラント用の条件を満たすとは限りません。[2] 316Lを選ぶかどうかの判断は、材質名の一致では終わらず、どの規格の成分と検査項目まで指定するかまで進みます。[1][2]
納期が遅れやすいポイント
- 図面に316Lとだけ書かれていて、一般の工業用グレードでよいのか外科インプラント用の成分まで指定すべきか判断がつかない[1][2]
- チタン合金と316Lステンレスのどちらを選ぶべきか、生体適合性以外の比較軸を持っていない[7]
- 体内に留置する部品と、体外の装置側に付く部品とで、要求される材料条件の差が整理できていない[1][2]
- 316Lは加工硬化があると聞くが、小径部品の切削条件がチタンとどの程度違うのかが分からない[5][6]
- 温かい塩化物環境で孔食が起きると聞いたが、自社の使用環境がその条件に当たるのか読めない[2]
Q. 医療機器の部品に316Lステンレスを選んでよいのは、どんなときか?
A. 接触する液体の塩化物濃度と温度が穏やかで、体内留置なら外科インプラント用ステンレスの成分条件まで指定できるときです。[1][2] JIS T 7403-1は外科インプラント用の鉄基合金を定めた規格で、ISO 5832-1を修正して取り入れたものです。適用範囲の注記では、JIS G 4303のSUS316Lなど使用実績のあるステンレス鋼の使用を妨げないと述べています。[1] 316Lが医療機器の材料として通用するという話の出どころは、この種の規格の記述です。[1] ただし規格が定める条件は、成分表の一致だけではありません。クロムとモリブデンから計算する耐孔食性指数を26以上とし、オーステナイト結晶粒度は4番より細かく、固溶化処理後の組織にδフェライトが認められないこととし、非金属介在物の指数にも上限を置いています。介在物の水準については、真空溶解やエレクトロスラグ再溶解のような設備が必要になる場合があると規格自身が注記しています。[1] 材料の清浄度は加工工程では変えられないため、この部分は発注前に材料側で決める条件になります。[1] 使用環境の側にも条件があります。316Lは一般の大気環境では耐食性に優れる一方、温かい塩化物環境では孔食とすきま腐食を受け、温海水には耐えないとされています。[2] 塩化物イオンは表面の不動態皮膜を局所的に壊し、壊れた点が周囲に対して陽極になって腐食が一点へ集中します。そのため全面が均一に減るのではなく、穴が開く形で進みます。接触する液体が何で、温度が何度かが分からないうちは、316Lで足りるかどうかも決まりません。[2] この資料が示しているのは、あくまで一般工業用グレードとしての316Lの性質です。[2] 体内に留置する部品では、同じ316Lという呼び名でも指定する規格が変わるため、材料規格の指定と使用環境の確認は分けて進めます。[1][2]
Q. チタン合金やPEEKと比べると、加工と調達の条件はどう違うのか?
A. スイス式旋盤の加工条件表では、切削速度がSUS316Lで100m/min、Ti-6Al-4Vで55m/min、PEEKで150m/minと分かれます。同じ形状でも、材料が変わるだけで加工時間と工具費の見込みが変わります。[5] 条件表の内訳は、SUS316Lが切削速度100m/min、送り0.03mm/rev、切込み0.3mm、高圧油4.0MPaです。Ti-6Al-4V(φ10)は55m/min、送り0.025mm/rev、切込み0.2mm、高圧油5.0MPaです。PEEK(φ12)は150m/min、送り0.05mm/rev、切込み0.3mm、エアブロー0.5MPaとなっています。[5] チタンは熱伝導率が低く切削熱が刃先側にこもり、さらに工具へ凝着しやすいため、速度と送りを下げたうえで高い圧力のクーラントで熱を逃がす形になります。弊社の材質ページでも、チタンの被削性は難、発熱と凝着に注意と書いています。[7] 材料側の性質では、Ti-6Al-4Vの引張強さは900から1,100MPa、硬さはHRC30から36、比強度は鋼の約2倍で、生体適合性は医療用途に適合と整理しています。[7] SUS316Lを含むオーステナイト系ステンレスの材質ページには、この生体適合性の項目自体を置いていません。[6] 体内に長く留置する部品でチタンが残る場面があるのはこのためで、316Lとの比較は強度と加工費だけでは決まりません。[6][7] PEEKについては、弊社の医療機器業界ページで、生体親和性に優れた高分子材でありながら難削材であり、微小な切削条件の厳格な制御が必要だと書いています。[8] 加工条件表の上では切削速度150m/minと最も速く、クーラントもエアブロー0.5MPaで足りますが、この数値は削りやすさと同義ではありません。[5][8] 金属部品を樹脂へ置き換える判断は、強度と剛性、要求される滅菌方法まで含めて決める話になります。[8] 調達側にも差があります。弊社の材質ページでは、SUS304系のオーステナイト系ステンレスを在庫材として扱う一方、チタンは在庫材としていません。[6][7] 材料手配から入る案件では、この差が初回の納期の見立てに出ます。[7]
Q. 深江特殊鋼には、316Lの医療部品をどこまで頼めるのか?
A. 小径の量産部品は自社のスイス式旋盤で受けています。公開加工事例はφ4×L45mmの整形外科用海綿骨ねじで、公差±0.015mm、面粗度Ra0.4、月産12,400本、リードタイム10営業日という条件です。[3] この事例では、スイス式旋盤4台を並列にし、ガイドブッシュの温度補正を加えて、頭部の六角ソケットからねじ、先端のシャンクまでをワンチャックで加工しています。1本あたりのサイクルタイムは54秒、工程能力はCpk1.67でした。加工後は電解研磨とパッシベーション処理を行い、生体適合性の抜取試験はISO 10993-5に沿って実施しています。[3] 穴が入る形状では、加工硬化を先に見ます。SUS316製の骨固定スクリューでは、φ3×L80mmの小径深穴で工具折損が多発し、TiAlNコーティングのガンドリルと送りと回転数の見直しで工具寿命を4倍にしました。素材はφ8×L90mm、公差H8、面粗度Ra0.8、穴位置精度±0.05mm、月産500本です。[4] この事例の材質はSUS316であってSUS316Lではないため、316Lの加工結果としてそのまま当てはめることはできません。両者は同じJIS G 4303のオーステナイト系で、被削性はやや難、加工硬化ありという同じ位置づけになっています。[6] 工具寿命と1本あたりのサイクルタイムの絶対値は、材質規格と熱処理状態、穴径と穴深さが決まってから算出します。それまでは、工具寿命4倍という数字を御社の部品の見込みとしては使えません。 品質体制については、医療機器業界ページに、ISO13485に基づく品質管理とISOクラス5クリーンルームでの清浄度管理が必須要件だと書いています。[8] これは業界側の要求の説明であって、弊社がその認証を保有しているという記載ではありません。求められる品質記録の形式が分かれば、どの工程をどの法人が担当するかを含めてお答えします。[8] 316Lの板物や大型部品については、寸法、要求公差、数量が決まった段階で対応可否と費用を回答します。国内認定パートナー150社超のネットワークにより対応できる範囲は材質、精度、ロット、納期のいずれでも広く持っています。[3]
図面で見ておきたい条件
- JIS T 7403-1が求める耐孔食性指数26以上、オーステナイト結晶粒度4番より細かいこと、固溶化処理後にδフェライトが認められないこと、非金属介在物の指数上限は、いずれも材料の溶製段階で決まる条件です。ミルシートでこれらを確認できる材料かどうかを、発注前に材料側と取り決める必要があります。[1]
- 同規格は成分をクラスDとクラスEに分けており、窒素、モリブデン、ニッケルの範囲と機械的性質の水準が違います。棒材の固溶化処理材で、クラスDは引張強さ490から690MPa、クラスEは590から800MPaです。どちらのクラスで発注するかが決まらないと、強度の見込みも決まりません。[1]
- 弊社の材質ページに載せている引張強さ520MPa以上という数値は、SUS304の値として書かれたものです。SUS316L単体の機械的性質の表を社内に持っていないため、強度の根拠が要る案件ではミルシートと該当規格の表で確認します。[6]
- 電解研磨とパッシベーション処理を含む工程は、公開加工事例ではφ4×L45mmの小径部品で実施したものです。板物や大型部品で同じ表面処理を求められる場合、寸法と数量が決まった段階で対応可否と費用を回答します。[3]
相談前に知っておきたいこと
- 弊社の公開加工事例でSUS316Lと医療機器の条件がそろっているのは、φ4×L45mmの整形外科用骨ねじ1件です。板物や大型ハウジングでの316L実績としては使えません。[3]
- 参照したJIS T 7403-1の本文は2005年制定時のもので、成分クラスDとEの統合など見直しが進行中であると規格自身が注記しています。契約書類や薬事の書類で条項番号を引く場合は、最新版を日本規格協会の配布物で確認する必要があります。[1]
- 耐食性の説明に使った技術資料は2004年公開の工業用316Lのデータで、インプラント用グレードの規格値ではありません。滅菌条件や体内環境での腐食挙動は、この資料からは判断できません。[2]
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

SUS316L医療用骨ねじのスイス式旋盤加工

SUS316医療用インプラントのガンドリル加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
材料規格は一般の316Lでよいか、外科インプラント用まで指定すべきか、一緒に決められますか?+
316L、SUS316L、UNS S31603は同じものとして扱ってよいですか?+
ミルシートでは何を確認すればよいですか?+
材料は支給材でも受けてもらえますか?+
電解研磨とパッシベーション処理まで含めて依頼できますか?+
試作1個からでも見てもらえますか?+
ISO 13485の認証は保有していますか?+
現在の加工先で工具折損が続いている案件も相談できますか?+
見積り依頼のとき、最低限どの条件を伝えればよいですか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [3] 金属加工ジャパン: SUS316L医療用骨ねじのスイス式旋盤加工
- [4] 金属加工ジャパン: SUS316医療用インプラントのガンドリル加工
設備・会社情報
- [5] 金属加工ジャパン: スイス式自動旋盤の加工条件
- [6] 金属加工ジャパン: オーステナイト系ステンレスの材質情報
- [7] 金属加工ジャパン: チタンの材質情報
- [8] 金属加工ジャパン: 医療機器向け加工の業界情報
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