取り代とは
読み: とりしろ
取り代とは、荒加工や中仕上げの段階で、最終の仕上げ寸法に対してあえて削り残しておく厚み、すなわち次の工程で除去される予定の余肉のことである。
概要
機械加工では、最終寸法をいきなり狙わず、荒加工・中仕上げ・仕上げ加工と段階を踏むのが一般的である。各段階の間に残す削り代を取り代と呼び、荒加工は中仕上げのための取り代を、中仕上げは仕上げ加工のための取り代を、それぞれ意図的に残す。
取り代の設計は、単に「多めに残せば安全」というものではない。多すぎれば工数が増え、少なすぎれば後工程で狙いの寸法に届かないという、両方向のリスクがある。
取り代を残す理由
前工程で発生した熱変位や切削力による歪み、工具摩耗による寸法のばらつきを、後工程で吸収するために取り代を残す。荒加工直後の素材は内部にひずみが残っていることがあり、これを見込まずにいきなり最終寸法まで削ると、加工後に寸法が動いてしまう場合がある。
取り代はこうした不確実性を吸収するバッファとして機能する。取り代を段階的に減らしながら工程を重ねることで、最終的な仕上げ加工では小さな取り代を安定して除去できる状態に持っていく。
工程ごとの取り代の目安
取り代の量は素材・形状・要求精度によって大きく異なるため一律の数値はないが、一般に荒加工から中仕上げにかけての取り代は数mm単位、中仕上げから仕上げ加工にかけての取り代は0.1〜1mm程度まで絞り込まれることが多い。深穴加工のような細長い穴の内面仕上げでは、さらに小さい取り代を段階的に除去していく。
取り代の設定は、素材の入荷公差、前工程の加工精度、要求される最終公差の3つを踏まえて工程設計の段階で決める。
取り代不足・過大のリスク
取り代が不足すると、後工程で削り切れない部分が残り、最終寸法や面粗度が図面を満たせなくなる。特に黒皮材のように素材表面の凹凸が大きい場合、取り代が偏っていると一部だけ黒皮が残ってしまうこともある。
逆に取り代が過大だと、除去する体積が増えて工数とコストが上がるだけでなく、切削抵抗が大きくなって工具寿命や仕上げ精度に悪影響を及ぼすこともある。取り代の設計は、コストと精度の両方に直結する。
深穴加工での取り代設計
深穴加工では、下穴(パイロット穴)から本加工、必要に応じてリーマやホーニングによる内面仕上げまで、径を段階的に詰めていく。各段階の取り代が適切でないと、真直度や真円度が安定しない、あるいは切りくずの排出性が悪化するといった問題につながる。深穴は工具アクセスが限られるため、取り代の見誤りが是正しにくいという点が、通常の加工以上に注意を要する理由である。
よくある誤解
✕ 取り代は多めに残しておけば安全である。
○ 取り代が過大だと除去体積が増えて工数・コストが上がるだけでなく、切削抵抗の増大で工具寿命や仕上げ精度が悪化することもある。取り代は多ければよいわけではない。
✕ 取り代は荒加工の段階で一律に決めておけばよい。
○ 取り代は素材の入荷公差、前工程の加工精度、最終公差の3つを踏まえて工程ごとに設計する必要がある。荒加工の時点だけで決め切れるものではない。
よくある質問
取り代は図面のどこに書けばよいですか。+
取り代が足りずに寸法が出ない場合、どう対応しますか。+
深穴加工での取り代はどのくらいを見ておけばよいですか。+
関連用語
出典
- 一般的な機械加工工学の知見(取り代設計と工程分割)
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