調質とは
読み: ちょうしつ
調質とは、鋼を焼入れしたのち高めの温度(概ね500〜650℃)で焼戻しを行い、強さと靭性をバランスよく両立させた組織に仕上げる熱処理である。強度と粘り強さの両方が必要な構造用鋼の機械部品で広く使われる。
概要
調質という言葉は、焼入れと焼戻しという2つの処理を組み合わせた結果を指す用語である。単に硬さだけを追い求めるのではなく、高めの温度で焼戻しをかけることで、強度を保ちながら粘り強さ(靭性)も持たせるのが狙いになる。名前のとおり、材質の性質を「調える」処理と考えると理解しやすい。
SCM440やS45Cのような構造用鋼を使うスピンドルやシャフトでは、調質を行ってから最終形状に仕上げる工程がよく見られる。深穴加工を伴う部品では、調質のタイミングを粗加工の前にするか後にするかが、工数と精度の両方に関わる判断になる。
焼入れ・焼戻しとの関係
調質は、焼入れ・焼戻しという処理の中身自体が変わるわけではなく、高温焼戻しを前提にした組み合わせに対する呼び方である。低温焼戻しで硬さを残す使い方や、表面だけを硬化させる浸炭焼入れとは狙いが異なり、調質は断面全体にわたって強度と靭性のバランスを取ることを目的とする。
そのため、耐摩耗性を最優先したい部位には調質より浸炭焼入れや窒化処理が選ばれ、衝撃や繰り返し荷重に耐える必要がある軸物には調質が選ばれる、という使い分けが実務では行われている。
加工工程での位置づけ
調質をいつ行うかは案件によって分かれる。外径の荒加工を先に済ませてから調質を行い、その後に穴あけや仕上げ加工に入る進め方もあれば、調質を先に行ってから荒加工・穴あけを行う進め方もある。深江特殊鋼の公開加工事例では、SCM440の工作機械用スピンドル(外径φ133、長さ464mm)で調質後にガンドリル加工を行った例や、大型工作機械の主軸(外径φ230、長さ2000mm)で外形荒加工後に調質を行ってから穴あけを行った例が確認できる。
どちらの順序でも対応は可能だが、調質後は硬さが増すため工具摩耗と加工時間が増える傾向がある。ワークサイズや加工形状、必要な硬度によって、粗加工と調質のどちらを先に行うかを個別に判断するのが実務上のやり方である。
適用材質と用途
調質は、SCM440・S45Cのような機械構造用鋼のほか、SCM420のような肌焼鋼を通し調質で使う場合にも用いられる。工作機械のスピンドルや主軸、産業機械の回転軸など、強度と靭性の両方が求められる長尺・回転部品が代表的な用途である。
炭素含有量や合金元素の量によって焼入れ性が異なるため、同じ「調質」でも到達できる硬さの範囲は鋼種ごとに変わる。図面には材質記号とあわせて、調質後の目標硬度を明記しておくと、加工先が工程順を判断しやすくなる。
調質の工程順の例(深江特殊鋼 公開加工事例)
| 材質 | 部品例 | 調質のタイミング | 備考 |
|---|---|---|---|
| SCM440 | 工作機械用スピンドル(外径φ133×長さ464mm) | 調質後にガンドリル加工、その後旋盤で荒加工 | クロムモリブデン鋼。炭素量約0.38〜0.43% |
| SCM440 | 大型工作機械の主軸(外径φ230×長さ2000mm) | 外形荒加工後に調質し、その後φ75を貫通加工 | 焼入れ焼戻しで硬度と靭性を両立 |
| SCM420 | 研削盤の主軸(外径φ300×長さ670mm) | 荒加工後に調質し、BTA加工でφ65を貫通加工 | 低炭素の肌焼鋼で、浸炭焼入れとの使い分けがある |
※ 深江特殊鋼の公開加工事例に基づく。調質のタイミングや到達硬度は、ワークサイズ・形状・必要硬度によって個別に判断される。
よくある誤解
✕ 調質は焼入れと同じ処理を指す言葉である。
○ 調質は焼入れ後にあえて高めの温度で焼戻しを行い、強度と靭性のバランスを狙った処理の呼び方であり、焼入れ単体とは温度設定の意図が異なる。
✕ 調質をすれば硬さが最大化される。
○ 調質は靭性を残すためにあえて硬さを抑える処理であり、最大硬度を狙う耐摩耗部品では低温焼戻しや浸炭焼入れなど別の熱処理が選ばれる。
✕ 調質は必ず仕上げ加工の直前に行う工程である。
○ 荒加工後・仕上げ加工前に調質を行う工程順も一般的で、硬さが増す前に大きな取り代を削っておく狙いがある。粗加工と調質のどちらを先にするかは案件ごとに判断される。
よくある質問
調質はどのタイミングで行うのが一般的ですか?+
調質と焼入れ・焼戻しは何が違いますか?+
調質後は硬くなって加工しにくくなりますか?+
どんな部品に調質が使われますか?+
関連用語
出典
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