光学部品の鏡筒・ハウジング加工はどこまで外注できるか、発注前に何を確認すべきか?
鏡筒や光学ハウジングの加工外注は、まず図面の要求を、レンズやミラーの光学面に効く規格由来の指定と、金属部品としての機械要求とに分けて確認します[1]。スクラッチ・ディグや面欠陥の等級は光学面の検査基準なので[3]、鏡筒側は寸法公差と真円度、内面のアルマイト、清浄度の条件として整理すると、加工先への条件提示と見積が進めやすくなります。
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対象の光学機器と、材質や数量など分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!光学面の指定と機械要求の切り分けから一緒に進めます。
まず確認すること
鏡筒とハウジングの外注で最初に決まるのは加工方法ではなく、図面のどの数値が光学面の規格から来ていて、どの数値が金属部品への要求なのかという切り分けです[1]。光学面のスクラッチ・ディグ等級は光学素子側の検査基準として扱い[3]、鏡筒側は材質と公差、表面処理の条件で整理します。深江特殊鋼は、この切り分けの確認から入り、図面と数量をうかがったうえで対応可否と見積を回答します[13]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面にスクラッチ・ディグの番号(80-50など)と機械寸法の公差が混在しており、どの数値が鏡筒の加工先への要求なのか切り分けられないまま見積依頼が止まる。[3]
- 鏡筒内径の真円度をどの水準で要求すべきか判断材料がなく、公開されている加工実績値(A5056のΦ70以下で真円度0.003mm以下など)とのオーダー比較もできていない。[7]
- 内面の反射防止を「つや消し黒アルマイト」とだけ書いて出図し、皮膜厚さの等級(JIS H 8601のAA表記)や外観の判定条件が決まらないまま、表面処理の条件合意が見積の最終盤までずれ込む。[4]
- 真空対応の光学ユニットで清浄度レベルの指定(IEST-STD-CC1246E)を受けたが、レベル番号やNVRの数値が何を意味するのか分からず、洗浄と梱包の仕様を決められない。[5]
- 半導体検査装置向けに光学コンポーネントの生産増強が国内で進む局面なのに、鏡筒とハウジングの加工を新規に出せる発注先の条件整理が社内で手つかずになっている。[9]
Q. なぜ光学部品の図面は、光学面の規格と鏡筒の機械要求を分けて読む必要があるのか?
A. ISO 10110やMIL-PRF-13830Bが対象にするのはレンズやミラーの光学面であり、鏡筒やハウジングという金属部品の寸法公差や面粗度は、これらの規格の守備範囲に入っていないためです[1]。 光学素子と光学システムの図面表記は、ISO 10110シリーズが定めています。総則の10110-1(2019年版)を起点に、面形状公差や面欠陥、材料欠陥といったテーマをパートごとに分担する規格体系です[1]。表面のキズやディグ(打痕状の局所欠陥)の許容水準には2つの系統があります。国際側のISO 10110-7:2017は、欠陥を長い欠陥と局所的欠陥に分類したうえで、視認性による指定と寸法による指定という2つの評価アプローチを用意しています[2]。米国系のMIL-PRF-13830Bは、1954年制定のMIL-O-13830の系譜を継ぐ国防総省仕様で、表面品質をスクラッチ番号とディグ番号の2つの数字(80-50など)で表します。スクラッチ番号は10から80まででキズの見た目の明るさを表し、ディグ番号は最大のディグを囲む円の直径をmmの100分の1単位で表して5から50の値をとり、検査は暗視野照明下での基準サンプルとの目視比較で行われます[3]。 図面にこうした番号が並んでいると、鏡筒の加工先にも同じ検査が要るように見えます。実際には、これらはレンズやミラーの光学作用面に適用される基準であって、鏡筒の内外径やねじ、取付面といった金属加工面の合否基準ではありません[3]。光学系の図面には、反射防止コーティングをR<0.5%(反射率0.5%未満)のような数値で要求する記法もありますが[8]、これも光学面側の指定です。鏡筒とハウジングへの要求は、寸法公差と真円度、面粗度、表面処理という機械部品の言葉で別に書かれます。この切り分けができていれば、光学面の指定は光学素子メーカーとの検査条件として扱い、鏡筒の加工先には機械要求だけを渡せるので、見積の前提がそろい、検査の計画も組めます[1]。切り分けないまま図面一式を渡すと、どの数値に回答すべきかの確認から往復が始まります。
Q. 鏡筒とハウジング固有の要求(真円度、内面の黒アルマイト、清浄度)は、どんな数値で指定するのか?
A. 真円度は公開されている加工実績値(mm単位の到達値)でオーダー感をつかんで要求値と測定方法を図面に書き、内面の黒アルマイトはJIS H 8601の皮膜厚さ等級(AA表記、μm単位)で、清浄度はIEST-STD-CC1246Eのレベルで指定します[4]。 鏡筒の切削加工を手掛ける加工会社の公開カタログには、A5056のアルミ合金でΦ70以下なら真円度0.003mm以下、Φ250以下で0.015mm以下、ガラス繊維入りポリカーボネート(PC-GF30%)ではΦ70以下で0.015mm以下、Φ200以下で0.03mm以下という加工精度の実績値が示されています[7]。1社の到達実績で、形状によって変わるという注記の付いた数値ですが、2つのことが読み取れます。同じ径でも材質によって到達水準が1桁近く違うこと、そして径が大きくなるほど水準が緩むことです。要求値を決めるときは、この2軸を前提に、光学設計側で必要な値と測定方法(測定機と測定温度)をセットで図面に書くと、加工側の回答が具体的になります。加工サイズの公開実績はΦ250×200mmまで、カム溝の内径直彫りはΦ15mmからという数値もあり、5軸マシニングと旋盤を組み合わせる工程が使われています[7]。 内面の反射防止はどうでしょうか。鏡筒内面のつや消し黒アルマイトの図面指定で使えるのは、JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)の皮膜厚さ等級です。AA3(3.0μm以上)からAA25(25.0μm以上)まで7段階があり、規定平均厚さの80%未満の測定点があってはならないという合格基準を持ちます[4]。注意が要るのは、規格が決めているのは皮膜の厚さと品質であって、黒さや反射率ではないという点です[4]。つや消し黒の外観の合否は規格から導けないので、限度見本や判定条件を図面か仕様書で取り決めておかないと、受入検査の基準が宙に浮きます。 真空や宇宙の光学系では、これに清浄度の指定が重なります。IEST-STD-CC1246Eは、1962年制定の軍規格MIL-STD-1246を1997年に民間へ移管した清浄度規格で、パーティクル清浄度と不揮発性残渣(NVR)清浄度の2本立てでレベルを定めます[5]。レベル番号は0.1m²の表面に許容される最大粒子径(μm)にちなんで付けられ、NVRは0.1m²または0.1Lあたり10ngから25mgの範囲で定義されます[6]。カメラ光学面の清浄度がレベルR5E-1(A/2)(0.5µg/cm²相当)と指定された実例もありますが、要求水準は案件ごとに異なるため、指定の有無とレベル、検査方法を見積前に確認する項目として扱ってください[6]。
Q. 深江特殊鋼に鏡筒やハウジングの加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 図面要求の切り分けから入り、材料と公差、表面処理、数量、希望納期がそろえば対応可否と見積を回答します[13]。 判断の物差しになるのは公開している工程能力の数値です。アルミの精密ハウジングでは、A6061-T651の衛星構造フレーム(300×200×50mm)を5軸マシニングのワンチャックで加工し、薄肉部の変形を加工順序で抑えながら全寸法±0.015mmを達成、導電性黒色アルマイト処理まで含めてロット3個で納めた公開事例があります[14]。レンズ座面や取付基準面のような面精度の管理では、コバール気密封止パッケージ(25×15×8mm)の封止面を平面度0.003mm、面粗度Ra0.2、公差±0.005mmで月産200個維持した公開事例が物差しになります[15]。精密研削には、真空機器のシール面加工で公開しているRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmのレンジがあります[12]。真鍮や樹脂を含む多材質の鏡筒、アルマイトやめっきを含む案件も、国内認定パートナー150社超のネットワークで、材料と精度、ロット、納期の4軸に合わせて一括で受けます[13]。 相談の背景には市場の動きもあります。半導体検査装置向けの光学コンポーネント市場は約2,000億円程度と見込む業界誌の記載があり[10]、コニカミノルタは2026年3月末に東京サイト八王子でレンズ研磨工程を稼働させ、2026年度のレンズ生産能力を2024年度比2.6倍へ引き上げる見込みと発表しています[9]。これはレンズという光学素子側の増強であり、鏡筒部品の受発注量を直接示す統計ではありません。それでも、光学ユニットの生産が国内で積み増される局面にあることは、鏡筒とハウジングの発注条件(材料と公差、表面処理)を早めに整理しておく理由になります。カメラ側でも、交換レンズは2025年に1,060万本(前年比102.8%)が出荷されており[11]、鏡筒という部品カテゴリは新規需要と補修需要の両方で図面が動き続けています。 発注の実務としては、材質(合金記号と質別)、図面(公差と測定方法の指定を含む)、内面アルマイトの等級と外観の判定条件、清浄度指定の有無、数量と希望納期がそろった時点で、対応可否の回答が最短になります[13]。試作の単品と量産では素材の取り方と検査の段取りが変わるため、素材が支給か手配込みかも見積の条件に含めてください。
図面で見ておきたい条件
- 図面のうち、レンズやミラーの光学面に関する指定(スクラッチ・ディグ、面欠陥の等級、コーティングの反射率)と、鏡筒とハウジングの機械加工要求(寸法公差、真円度、面粗度、表面処理)を分けてお知らせください。光学面の指定は光学素子側の検査基準であり、鏡筒の加工条件はそれとは別に決まります[2]。
- 内面のつや消し黒アルマイトは、皮膜厚さの等級(JIS H 8601のAA表記、AA3=3.0μm以上からAA25=25.0μm以上まで)と、色や外観の判定条件(限度見本や検査方法)の指定をご確認ください。規格が定めるのは皮膜の厚さと品質で、黒さや反射率の合否は図面か仕様書での取り決めが要ります[4]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と材質、表面処理の要求を確認してから回答します。
- スクラッチ・ディグ(MIL-PRF-13830B)やISO 10110-7の面欠陥等級は、レンズやミラーなど光学面の検査基準です[3]。加工側が担うのは、図面に指定された鏡筒とハウジングの寸法と公差、面粗度、表面処理の実現と、注文時に取り決めた検査記録の提出までです。
- 清浄度レベル(IEST-STD-CC1246E)の要求水準は案件ごとに異なります[5]。要求されるレベルと検査方法が決まれば、洗浄と梱包の扱いを含めて対応可否を回答します。
業界での実機事例(参考)

A6061衛星構造部品の5軸精密加工

コバール気密封止パッケージの精密加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
鏡筒の真円度や同軸度はどこまで要求できますか?+
内面のつや消し黒アルマイトはどう指定すればよいですか?+
黒アルマイトの反射率も指定できますか?+
真鍮や樹脂(PC-GF)の鏡筒も依頼できますか?+
カム溝や偏心穴のある鏡筒形状も対応できますか?+
真空や宇宙用途の清浄度指定には対応できますか?+
レンズやミラーの光学素子もまとめて相談できますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
検査成績書や測定データは付けてもらえますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] ISO 10110-1:2019 Optics and photonics — Preparation of drawings for optical elements and systems — Part 1: General
- [2] ISO 10110-7:2017 Optics and photonics — Preparation of drawings for optical elements and systems — Part 7: Surface imperfections
- [3] MIL-PRF-13830B 光学部品の製造・組立・検査に関する米国防総省一般仕様(Redlux社解説記事による)
- [4] JIS H 8601:1999 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜
- [5] IEST-STD-CC1246E Product Cleanliness Levels — Applications, Requirements, and Determination
- [6] IEST-STD-CC1246E 清浄度レベルの数値定義(Astro Pak社解説記事)
- [7] 光学部品(鏡筒等)加工の加工精度実績(共栄エンジニアリング株式会社 製品カタログPDF)
- [8] Mastering Optics Production Drawings: A Comprehensive Guide to ISO 10110 Standards(Optics for Hire社解説記事)
- [9] コニカミノルタ: 東京サイト八王子で半導体検査装置向け光学コンポーネントのガラスレンズ研磨工程が稼働(プレスリリース)
- [10] MONOist: 半導体検査装置向け2030年150億円へ、コニカミノルタのロードマップとは
- [11] CIPA(カメラ映像機器工業会): 2026年カメラ等品目別出荷見通しと交換レンズ統計
内部事例
- [14] 加工事例: A6061衛星構造部品の5軸精密加工
- [15] 加工事例: コバール気密封止パッケージの精密加工
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