SUS303の機械加工を外注するとき、弊社が材料と公差のどこを先に確認するか?
まず確認するのは、図面の鋼種記号がSUS303かSUS303Cuか、外径公差と穴径と加工長、そして後工程に溶接や曲げが入るかどうかです。[1] SUS303は硫黄を加えて削りやすくした鋼種で、その代わりに耐食性と溶接性を落としています。[2]
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鋼種記号、外径と長さ、穴径と加工長、後工程の有無のうち、分かっているものだけメモにしてMeta-Naviのお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくても構いません。条件の整理から一緒に進められます。
まず確認すること
深江特殊鋼はSUS303の加工記録を公開しています。検査装置用のシャフトで、外径φ60、長さ670mmの素材の外径をg6公差で仕上げてから、φ18の穴をガンドリルで貫通させ、その後マシニングセンタで口元のRcネジ加工と横穴加工を行っています。[3] この順序は成り行きで決まったものではなく、外径仕上げと穴あけのどちらを先にするかで同軸度が変わるためです。[4]
納期が遅れやすいポイント
- 図面にSUS303と書いたが、SUS303Cuとの使い分けが決まっていない[1]
- SUS304の見積感覚のまま出したところ、加工費の差がどこから出るのか分からない[2]
- 外径公差と深穴を同じ軸物で要求したときに、同軸度がどこまで出るか読めない[4]
- 後工程で溶接する設計なのに、削りやすさを優先してSUS303を指定してしまった[2]
- 長尺の軸物で、加工中に出る反りがどの程度になるか見当がつかない[7]
Q. なぜSUS303はSUS304より削りやすく、工具の負担が小さいのか?
A. 硫黄を加えて切りくずが分断されやすいようにした鋼種で、SUS304より工具にかかる負担が下がるためです。[2][4] JIS G4303はSUS303の硫黄を0.15%以上と規定しています。同じ規格の中で、他の鋼種のリン上限が0.045%以下であるのに対し、SUS303系だけは0.20%以下と緩められています。[1] 削りやすさを優先した材料設計であることは、規格の数値の側からも読み取れます。 硫黄は鋼の中で硫化物系の介在物になります。この介在物が切りくずの分断点として働くため、切りくずが短く切れて工具の刃先から逃げます。[4] SUS304では切りくずがつながって刃先に絡み、いったん加工硬化した層を繰り返し削ることになりますが、SUS303ではその往復が起きにくくなります。[4] 差の大きさは、材料メーカーの試験にも出ています。日本冶金工業がSUS303相当鋼で行ったドリル試験では、SUS304が1個目の穴で工具を破損したのに対し、SUS303相当鋼は625個の穴を開けても破損しなかったと報告されています。[2] ただしこれは同社の試験条件での結果で、工具材種も回転数も送りも公開されていません。量産の工具寿命をこの比で見積もると外れます。[2]
Q. SUS303を選ぶと、材料として何を手放すことになるか?
A. 耐食性と溶接性、それに曲げの余地です。SUS304を材料として残す理由はここにあります。[2][4] 硫黄は耐食性を下げる元素です。材料メーカーである日本冶金工業の資料では、SUS303相当鋼の孔食電位はSUS304より低く、SUS430よりは高い位置にあると説明されています。[2] 塩水噴霧試験では発銹が認められなかったとも書かれていますが、これは試験の一条件での結果であり、実際の使用環境での耐食性を保証する数値ではありません。[2] 腐食が厳しい環境の部品では、削りやすさを手放してSUS304やSUS316を選ぶ判断になります。[4] 溶接の可否は、耐食性ほど使用条件に左右されません。硫黄の含有量が高い分だけ溶接割れの感受性が高く、材料メーカー自身が溶接を推奨していません。[2] 図面に溶接記号が入っている部品でSUS303が指定されていたら、弊社では材質の再確認から相談させていただきます。[4] 曲げも同じ理由で不利になります。硫黄を添加した分だけ伸びがSUS304より低く、曲げ加工には向きません。[2] 旋盤やマシニングセンタで削り出す部品には向き、板を曲げて作る部品には向かない、という分かれ方をします。
Q. SUS303の加工を相談いただくとき、弊社が公差と工程のどこを先に伺うのか?
A. SUS303の鋼種記号、外径公差と穴の関係、加工長、後工程の4点です。[1][3] 最初は鋼種記号です。SUS303とSUS303Cuは硫黄0.15%以上という点では共通しますが、SUS303CuにはCu1.50〜3.50%が追加で規定されています。[1] 発注書と図面で記号が食い違っていると、調達した素材のミルシートと検収の基準がずれます。固溶化熱処理状態での規定値は、耐力205N/mm2以上、引張強さ520N/mm2以上、伸び40%以上、硬さHBW187以下です。[1] 次に外径公差と穴の関係です。公開しているSUS303の加工記録では、外径φ60、長さ670mmの素材を外径g6で仕上げてから、φ18の穴をガンドリルで貫通させています。[3] 外径仕上げと穴あけの順序は同軸度に効くため、どちらの公差が優先かを先に伺います。[4] 軸物の一般的な目安としては、穴径の公差が±0.2〜0.3mm、穴の曲がりが長さ1mあたり約1mmです。これはSUS303専用の値ではなく、SCM440やS45Cを含む軸物加工全体の目安として出しているものです。[3] 加工長も先に伺います。オンラインの自動見積は長さ2000mmまでを対象にしており、それを超える長さは個別に見ます。[3] 深穴側では、公開しているガンドリルの条件表にSUS304の行(切削速度55m/min、送り0.020mm/rev、片刃切込み0.4mm、クーラント圧14MPa)はありますが、SUS303の行はありません。[5] SUS303では切りくずが分断されやすい分だけ工具にかかる負担が下がりますが[4]、切削速度と送りの数値としてお出しできるのは条件出しを終えてからです。[5] 最後に後工程です。溶接、曲げ、酸洗、固溶化熱処理のどれが入るかで、材料の選定そのものが変わります。固溶化熱処理は1010〜1150℃から急冷、酸洗は硝酸と弗酸の混酸が使われますが、酸洗をかけすぎると表面が荒れます。[2] 深江特殊鋼はSUS303と304から400番系、600番系までを、対応できる材質の範囲として公開しており、この範囲は一括で受けます。[7]
図面で見ておきたい条件
- JIS G4303が定める径公差(径15mm以下で±0.3mm、15超25以下で±0.4mm)は素材である棒鋼段階の値であり、加工後の寸法公差とは別物です。[1]
- ガンドリルの条件表に載っているのはSUS304の行(切削速度55m/min、送り0.020mm/rev、片刃切込み0.4mm、クーラント圧14MPa)です。SUS303の条件は、穴径と加工長が決まってから条件出しで確定します。[5]
- ステンレスの材料ページに載る被削性の評価「やや難(加工硬化あり)」はSUS304の水準で書いた値で、SUS303の被削性としては読み替えられません。[6]
相談前に知っておきたいこと
- SUS303の切削速度、送り、工具寿命の絶対値は、材質のロットと熱処理状態、穴径と加工長が決まってから、実加工で条件出しを行ったうえで算出します。[5]
- 公開しているSUS303の加工記録は検査装置用シャフトです。外径φ60、長さ670mm、外径g6、φ18貫通という条件から離れた形状や要求精度では、対応可否と費用を個別に回答します。[3]
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

SUS440C研削盤スピンドルのガンドリル加工

SUS304食品タンク撹拌軸のマシニング加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
SUS303とSUS303Cu、どちらで見積もればよいですか?+
SUS303の材料手配から依頼できますか?+
溶接が必要な部品でもSUS303で相談できますか?+
SUS304で見積もった部品をSUS303に変えると安くなりますか?+
支給材でも加工だけ依頼できますか?+
初回の回答を早くするには、何を伝えればよいですか?+
SUS303の工具寿命や加工時間の目安を教えてもらえますか?+
外径公差と深穴の同軸度を同じ部品で要求できますか?+
長さ2000mmを超える軸物も相談できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [3] 金属加工ジャパン: シャフトの旋盤加工におけるポイント
設備・会社情報
- [4] 深穴加工用語辞典: SUS303
- [5] 金属加工ジャパン: ガンドリル加工
- [6] 金属加工ジャパン: ステンレス鋼(SUS303/304/316/316L)
- [7] 金属加工ジャパン: ステンレス加工でお困りではないですか?
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