応力除去焼鈍とは
読み: おうりょくじょきょしょうどん
応力除去焼鈍とは、変態点以下の比較的低い温度(鋼でおおむね500〜650℃)まで加熱・保持したのち徐冷し、材質の硬さや組織を大きく変えずに切削・溶接・焼入れなどで生じた内部応力だけを緩和する熱処理である。
概要
切削加工や溶接、焼入れを行うと、材料の内部にはその工程に応じた応力が残る。この残留応力は、後工程で削り込みが進んだり、時間が経過したりすると解放され、部品が反ったり歪んだりする原因になる。応力除去焼鈍は、この内部応力だけを狙って緩和し、組織や硬さをほぼ変えずに寸法安定性を高めるための熱処理である。
特に大型・薄肉のプレートや、多面フライスで大きく削り込む部品では、粗加工と仕上げ加工の間に応力除去焼鈍を挟むことで、仕上げ後の反りを抑える工程がよく取られる。
焼なまし・焼ならしとの違い
焼なましや焼ならしは、組織そのものを軟化させたり均一化させたりすることを目的とし、加熱温度も変態点付近まで上げる。これに対して応力除去焼鈍は、変態点よりも低い温度域で行われ、組織はほとんど変化させず、応力だけを抜くことに特化している。
そのため、既に必要な硬さや組織が確保されている部品に対しても、寸法安定性だけを改善する目的で追加できる点が、他の熱処理と異なる実務上の使いどころになる。
大型部品での効果と限界
銅やアルミニウムのような柔らかい材質の大型プレートでは、荒加工後に低温の応力除去熱処理を挟み、その後に仕上げ加工へ進む工程順にすることで平面度の要求を満たしやすくなる。柔らかい材質で歪みが出やすい大型プレートに対して、応力除去焼鈍が有効な対策の一つになることを示す事例である。
一方で、応力除去焼鈍を行えば歪みが完全になくなるわけではない点には注意が必要である。金属積層造形(AM)品のように、造形時の熱履歴が複雑な部品では、応力除去焼鈍を行っても反りの傾向が完全には消えない場合があると報告されている。応力除去焼鈍は歪みを抑える対策の一つであり、万能な解決策として扱うべきではない。
加工工程内での位置づけ
応力除去焼鈍は、粗加工と仕上げ加工の間に挟むのが一般的な工程順である。粗加工で大きな取り代を削った直後は残留応力が大きくなりやすいため、この段階で応力を抜いてから仕上げ加工に進むと、仕上げ後の反りを抑えやすい。
仕上げ加工後に応力除去焼鈍をかけることも可能だが、熱処理自体でわずかに寸法が動く場合があるため、平面度や平行度の公差が厳しい部品では、応力除去焼鈍の後に最終検査を行う工程を組んでおく必要がある。
よくある誤解
✕ 応力除去焼鈍をすれば歪みは完全になくなる。
○ 残留応力を緩和するだけであり、金属積層造形(AM)品などでは応力除去焼鈍後も反りの傾向が残る場合がある。歪み対策の一つと捉えるべきである。
✕ 応力除去焼鈍は焼なましと同じ処理である。
○ 焼なましより低い温度域・短めの保持時間で行われ、組織そのものを変えることを狙っていない点が異なる。硬さや組織を保ったまま応力だけを抜く処理である。
✕ 応力除去は仕上げ加工の後にかければ十分である。
○ 仕上げ加工後にかけると熱処理自体でわずかに寸法が動くことがあるため、粗加工と仕上げ加工の間に挟むのが一般的な工程順である。
よくある質問
応力除去焼鈍はどのタイミングで行うべきですか?+
応力除去焼鈍でどのくらい平面度は改善しますか?+
応力除去焼鈍をすれば歪みは完全に消えますか?+
応力除去焼鈍と焼なましはどう違いますか?+
関連用語
出典
- JIS G 0201(熱処理用語)
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