タフピッチ銅C1100とは
読み: たふぴっちどう
タフピッチ銅C1100とは、電気銅を精錬・鋳造した工業用純銅の代表的な種類であり、酸素を0.02〜0.04%程度含んだ状態でJIS H3100(伸銅品)に規定される銅材である。
概要
タフピッチ銅C1100は、銅鉱石から得た電気銅を反射炉などで精錬してつくる純銅で、銅材の中で最も生産量が多く流通量も豊富な材種である。名前の「タフピッチ」は、この工程で銅の粘り強さ(タフネス)が最も良くなる酸素濃度に調整することに由来する。
導電率・熱伝導率はどちらも高く、無酸素銅C1020とほぼ同水準である。脱酸処理を行わない分、C1020より製造コストを抑えやすく、電線や熱交換部品など常温加工が中心の用途で広く使われている。
無酸素銅C1020との違い
C1100とC1020は同じ純度99.9%以上の純銅だが、製法上、C1100には酸化第一銅がわずかに残る。この酸化物は常温での使用では問題にならないが、水素を含む雰囲気での高温加熱時に水蒸気を発生させ、内部に微小な割れを生じさせることがある。これが水素脆化と呼ばれる現象である。
そのため、溶接・ろう付け・水素還元雰囲気での熱処理を伴う部品にはC1020が選ばれ、常温加工のみで完結する電線・板金・機械部品にはコストの低いC1100が選ばれる傾向がある。
加工上の注意点
純銅は延性が高く軟らかいため、旋盤・フライスでは切りくずが長く連続してつながりやすい。この切りくずが工具や加工面に巻き付くと、面粗さの悪化や工具破損の原因になる。
深穴加工のように切りくずの排出経路が長くなる工法では、この影響がさらに大きくなるため、チップブレーカ付き工具の選定や送り・回転数の調整で切りくずを短く分断する工夫が必要になる。
主な用途
導電率の高さを活かし、電線・バスバーなどの電気配線部品、熱伝導性を活かした熱交換器のチューブやフィン、電子機器の放熱部品などに使われる。常温での加工性がよいため、板金プレス品や絞り加工品にも向いている。
高温工程を伴わない冷却プレートや配管部品では、無酸素銅よりも入手性・コストの面でC1100が選ばれることが多い。
よくある誤解
✕ タフピッチ銅は不純物が多いから、無酸素銅より品質が劣る。
○ 不純物が多いわけではなく、精錬工程で酸素をあえて残す点だけが異なる。常温での強度・導電率にはほとんど差がなく、水素脆化リスクの有無で使い分けるのが実務上の基準である。
✕ 銅は軟らかいので、深穴加工でも特に対策は要らない。
○ 軟らかさゆえに切りくずが長く連なりやすく、排出経路の長い深穴加工では工具への巻き付きが加工不良につながる。チップブレーカ付き工具や送り条件の調整が必要になる。
✕ 溶接を伴う部品でもタフピッチ銅で問題ない。
○ 水素を含む雰囲気での溶接・ろう付け・熱処理では、内部の酸化物が水素脆化を起こし割れの原因になることがある。高温工程を伴う部品には無酸素銅C1020を検討すべきである。
よくある質問
タフピッチ銅と無酸素銅はどちらが安いですか。+
タフピッチ銅は溶接に使えますか。+
電気伝導率は無酸素銅と比べてどの程度違いますか。+
深穴加工にも対応できますか。+
関連用語
出典
- JIS H3100(伸銅品)
- BTA・ガンドリル加工.com 技術コラム「ガンドリル加工が可能な素材〜銅合金〜」(深江特殊鋼)
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