クロム銅とは
読み: くろむどう
クロム銅とは、銅に0.5〜1%程度のクロムを添加し、時効処理によって強度を高めながら純銅に近い高い熱伝導率を保った析出硬化型の銅合金である。
概要
純銅は熱伝導率が高い反面、強度や耐摩耗性が不足しやすい。クロム銅は微量のクロムを添加し時効処理を行うことで、純銅の熱伝導率をあまり落とさずに強度と耐摩耗性を引き上げた合金である。
同じ析出硬化型の銅合金であるベリリウム銅と比べると、強度の絶対値はやや控えめだが、熱伝導率はより高く保たれる傾向がある。成形サイクルの短縮など、冷却速度が結果に直結する部位で選ばれることが多い。
ベリリウム銅との違い
ベリリウム銅とクロム銅はどちらも析出硬化により銅の弱点である強度を補う合金だが、性能のバランスが異なる。ベリリウム銅は強度・耐摩耗性を優先したグレード、クロム銅は熱伝導率を優先したグレードと位置づけられる。
金型部品では、繰り返し荷重や摺動が主課題ならベリリウム銅、冷却速度の均一化やヒートシンクのような放熱性能が主課題ならクロム銅、という使い分けが目安になる。ベリリウムを扱わない分、加工環境の管理負担が軽い点もクロム銅の利点である。
加工上の注意点
時効処理後は硬度が上がるため、純銅と同じ切削条件では工具摩耗が早く進みやすい。超硬工具を使い、切削速度と送りを材質の硬度に合わせて調整する必要がある。
熱伝導率が高いため切削熱がワーク全体に逃げやすく、局所的な熱変形は起きにくい一方、放熱が良いぶん刃先温度が下がりすぎて構成刃先が発生しやすい条件もあるため、条件出しには経験が必要になる。
主な用途
射出成形金型の冷却水穴まわりや、放電加工用の電極、抵抗溶接の電極チップなど、高い熱伝導性が求められる部品に使われる。連続稼働で発熱する電気接点部品にも用いられる。
金型では、局所的に冷却を強化したい入れ子やコア部品にクロム銅を使い、他の部位は工具鋼のままにする、という部分的な使い方も一般的である。
よくある誤解
✕ クロム銅はベリリウム銅の代用品であり、性能は劣る。
○ 代用品ではなく、熱伝導率を重視した別グレードである。冷却速度が結果を左右する部品ではクロム銅の方が適していることが多く、優劣ではなく用途による使い分けの問題である。
✕ クロムを含むので、耐食性も高い特殊鋼のような性質を持つ。
○ クロム銅の強みは強度と熱伝導性のバランスであり、耐食性を主目的にした合金ではない。耐食性が主要件の場合はステンレス鋼や他の銅合金を検討すべきである。
✕ 純銅と同じ切削条件で加工できる。
○ 時効処理後は硬度が上がっており、純銅と同じ条件では工具摩耗が早く進む。超硬工具の選定と切削条件の調整が必要になる。
よくある質問
クロム銅とベリリウム銅、どちらを選べばよいですか。+
クロム銅は深穴加工に対応できますか。+
ベリリウム銅のように粉じん対策は必要ですか。+
関連用語
- ベリリウム銅
- 無酸素銅C1020
- タフピッチ銅C1100
- 金型冷却水穴
- ヒータ穴
出典
- 一般的な銅合金の析出硬化に関する工学的知見(JIS H3100 伸銅品等)
このページの情報は役に立ちましたか?