超高真空(UHV)のベローズやフランジの加工は、どの規格系統を前提に発注すべきか?
超高真空(UHV)向けのベローズやフランジの加工は、まず図面がどの規格系統を前提にしているかを確認します。金属ガスケットをナイフエッジで締めるICF(CF)はISO 3669[2]、Oリングをクランプで挟むNW/KFはISO 2861[3]、国内のVG/VF形はJIS B 2290[1]と系統が分かれ、シール部の寸法と仕上げ、検査の要求がそれぞれ違うためです。
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図面の規格系統が分からない段階でも、用途と分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!ICFかNW/KFかの切り分けから一緒に進めます。
まず確認すること
超高真空部品の加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、図面が乗っている規格系統です。ICFかNW/KFかで、シール面の仕上げも検査の確認項目も変わります[11]。深江特殊鋼は、この系統の確認から入り、図面と数量をうかがったうえで対応可否と見積を回答します[13]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面にDN40とφ2.75inのような呼び径表記が混ざっており、ICFとNW/KFのどちらの規格系統で加工条件を確認すべきか特定できない。[11]
- ガスケット溝の深さに0/-0.2mmという片側公差が指定されているが、この数値がJIS B 2290の規定から来ていると知らず、公差緩和を頼んでよいのか判断できない。[1]
- ベークアウト温度とガスケット材質の組み合わせに制約があること(ステンレスフランジにアルミガスケットを使う場合は200℃までなど)を知らないまま、材質だけ先に決めてしまう。[4]
- 図面にヘリウム漏れ試験の指定はあるが、試験方法(JIS Z 2331の7手法のどれか)と要求漏れ率が書かれておらず、検査条件を見積に織り込めない。[5]
- プロセスチャンバーの大気開放を伴うメンテナンスでは真空復帰に半日を要したという装置ユーザーの事例が公開されているほど、シール部の再現性が装置の稼働に直結する。[10]
Q. なぜ超高真空のフランジは、寸法より先に規格系統の確認なのか?
A. シール方式ごとに別の規格が寸法を定めており、系統を取り違えると相手部品と組み合わない部品ができるためです。ICF(CF)はISO 3669:2020[2]、NW/KFはISO 2861:2020[3]、VG/VF形はJIS B 2290[1]が、それぞれの系統内の互換性を担保しています。 3系統は、シールの原理から違います。ICF(CF)は、フランジ両側のナイフエッジがボルトの締結で軟質金属ガスケット(銅など)の両面に環状の溝を刻み込んでシールする方式で、雌雄の区別がない対称設計です[2]。もともとConFlatフランジとして開発された設計が普及して事実上の標準になり、それをISO 3669が成文化しました。同規格は大気圧から10^-11Pa程度までの真空システムで使うボルト締めナイフエッジフランジの寸法を規定します[2]。NW/KFは、対称な2枚のフランジでOリングとセンタリングリングを挟み、クランプで締める方式で、DN10、16、25、40、50といった呼び径系列を持ちます[3]。VG/VF形は、ゴムOリングシールで繰り返し着脱できるフランジをJIS Z 8601のR10数列(呼び径10〜1000mm)で規定した、国内の配管とチャンバー継手の系列です[1]。 では、どの系統を選ぶかは何で決まるのでしょうか。実務の目安は到達真空度です。10^-8mbar程度までの領域はNW/KFの呼び径(DN40など)で発注でき、10^-13Torr台まで狙う超高真空の領域は、ベークアウトに耐える金属シールを持つICF(CF)のナイフエッジ形状が前提になります[11]。真空部品メーカーの技術資料でも、CFフランジの動作圧力範囲は大気圧(760Torr)から1×10^-13Torr未満までとされています[4]。ゴムのOリングでは加熱脱ガスの温度に耐えられないという材料側の制約が、この住み分けの背景です。 系統の確認が最初に来るのには、稼働側の事情もあります。半導体製造装置では、プロセスチャンバーを大気開放するメンテナンスの後、真空復帰に半日を要していたという装置ユーザーの事例が公開されています[10]。フランジとベローズは着脱と再締結を繰り返す部品であり、シール部の寸法が規格どおりに再現されているかどうかが、この復帰時間と稼働率に直接響きます。だからこそ図面は特定の規格系統を前提に描かれており、加工側が寸法の意味を系統から読み取れることが、発注の前提条件になります。
Q. 図面のどの数値が、シール性能と検査の要求を決めているのか?
A. ガスケットまわりの寸法公差と面粗度、フランジとガスケットの材質の組み合わせ、そしてヘリウム漏れ試験の指定です。JIS B 2290はガスケット溝深さ3〜7mm(公差0/-0.2mm)のような数値を規定し[1]、検査の方法はJIS Z 2331が定めています[5]。 まずシール部の寸法から見ます。JIS B 2290(VG/VF形)は、ガスケット溝の深さを3〜7mmの範囲で公差0/-0.2mm(上側の公差なし)と規定します[1]。上下に振れてよい普通公差と違い、下側だけに0.2mmの余地を残した片側公差です。保持リングの寸法公差もリング厚み区分ごとに±0.02mmから±0.03mmと細かく、カラー幅は2.5mm以下、シール線荷重の計算には200N/mm2という応力値が使われます[1]。Oリングを溝で受ける面には、溝底面でRa0.4程度、側面でRa1.6程度という面粗度の目安があります[12]。図面の片側公差や面粗度指定は、このシール構造から来ている数値なので、加工の都合で丸めてよい値かどうかは、出どころの規格まで戻って確認することになります。 材質の指定は、フランジ本体とガスケットの組み合わせで読みます。真空部品メーカーの技術資料では、CFフランジの本体はステンレス鋼304L/316L/316LNまたは表面硬化処理した溶接可能なアルミ合金、標準ガスケットは高純度無酸素銅(OFHC)とされています[4]。組み合わせには制約があり、アルミフランジに銅ガスケットは使えず、ステンレスフランジにアルミガスケットを使う場合はベークアウトが200℃までに限られます[4]。動作温度範囲は材質により-196℃から450℃で、550℃を超える長時間のベークは銅ガスケットの焼きなましによるリーク発生のリスクが注意喚起されています[4]。ボルトなどの締結部品も低透磁率の18-8ステンレス鋼で構成され、かじり付き防止に銀めっきかねじ用潤滑剤の使用が推奨されています[4]。ガスケット材質を変える相談は、ベークアウト温度の条件まで戻って確認する話になります。 検査の指定は、方法と合否基準を分けて読みます。ヘリウム漏れ試験の方法はJIS Z 2331が定めており、真空吹付け法や真空外覆法など7種類の手法があります[5]。ヘリウムが使われるのは、大気中の濃度が体積分率で約5×10^-6と低く、不活性で分子径が小さいため、微小な漏れの検出に向くからです[5]。代表的な条件の浸せき法では10^-6から10^-8Pa・m3/sオーダーの漏れ率が検出対象になります[5]。ただし同規格が定めるのは試験の方法であり、その部品がどの漏れ率までなら合格かという基準は、装置メーカーと用途ごとの個別仕様で決まります。図面に「Heリーク試験」とだけ書かれている場合は、方法と要求漏れ率の両方を確認してから見積条件に織り込みます[5]。 半導体装置向けでは、寸法と気密の外にもう1軸、内面の清浄度が加わることがあります。ガスや薬液が触れるステンレス部品の内面には、SEMI F19がGP、HP、UHPの3等級で表面状態の要求を定めています[6]。規格正本を扱う電解研磨業者の解説によれば、UHP等級では表面欠陥が写真1枚あたり平均10個以下、Cr/Fe比1.5超といった数値要求になります[7]。また、シール材や接着剤など非金属材料のアウトガス評価には、125℃、24時間の真空環境で全質量損失(TML)1.00%以下、揮発性凝縮物質(CVCM)0.10%以下という合否基準がNASAなどで使われる、ASTM E595の試験があります[8]。どちらも金属フランジ本体の寸法規格とは別軸の要求です。図面のどの注記がどの規格から来ているかを切り分けて読むことが、見積条件の整理そのものになります。
Q. 深江特殊鋼に超高真空部品の加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 図面の規格系統と検査要求の確認から入り、材質と数量がそろえば、対応可否と見積を回答します[13]。 最初に確認するのは、図面がICF、NW/KF、VG/VF形のどの系統を前提にしているかと、ガスケットの方式です。系統が決まれば、シール部で管理すべき寸法と面粗度、検査の確認項目が定まります。呼び径の表記(DN40とφ2.75inのような違い)から系統を読み分ける整理は、真空フランジのポート部加工のページで公開しています[11]。 シール面の仕上げは、自社の平面研削と円筒研削の工程能力を物差しにして判断します。精密研削の対応レンジは、真空機器のシール面加工でRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmとして公開しています[12]。シール面と同種の面精度管理では、コバール気密封止パッケージの封止面を平面度0.003mm、面粗度Ra0.2で仕上げた公開事例があります[14]。Oリング溝の底面Ra0.4程度という目安に対して、工程能力の側に余裕を持たせた判断ができます[12]。素材の手配や電解研磨などの表面処理、洗浄を含む案件も、国内認定パートナー150社超のネットワークで、材料と精度、ロット、納期の4軸に合わせて一括で受けます[13]。 需要の側から見ても、この分野の調達は増える局面にあります。日本半導体製造装置協会は、日本製半導体製造装置の販売高を2025年度4兆9,111億円、2026年度は前年度比12%増の5兆5,004億円と予測しています[9]。装置の増産は真空チャンバーと接続部品の増産であり、フランジとベローズの図面が動く数も増えます。既存の加工先の負荷が上がる局面では、同じ規格系統の図面を読める二次発注先を持っておくことが納期の保険になります。見積の相談では、図面と数量、希望時期のほかに、ヘリウム漏れ試験の要求漏れ率が決まっていればその値もお知らせください。検査の指定まで含めて条件が確定した時点で、対応可否と見積を回答します[13]。
図面で見ておきたい条件
- 相談の最初に、図面の規格系統(ICFかNW/KFかVG/VF形か)とガスケットの方式をお知らせください。系統が決まると、シール部で管理すべき寸法(ガスケット溝の深さ、保持リングの公差など)と面粗度の確認項目が定まります[1][3]。
- ヘリウム漏れ試験を含む場合は、試験方法(JIS Z 2331の真空吹付け法、真空外覆法など)と要求漏れ率の指定を図面か注文書で確認してください。同規格が定めるのは試験の方法であり、許容漏れ量は装置側の仕様で決まります[5]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と規格系統の確認が済んでから回答します。
- 図面が引用する規格の版(改正年)の適用判断は、装置メーカーの指定が優先します。版の指定が図面から読み取れない場合は、その確認をお願いすることがあります。
- ヘリウム漏れ試験の合否基準(要求漏れ率)を加工側で設定することはありません。基準は装置側の仕様で決まるため、指定が無い図面は要求漏れ率の確認からになります[5]。
業界での実機事例(参考)

コバール気密封止パッケージの精密加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
ICFとNW/KFのどちらの図面か、自分では判断がつきません。それでも依頼できますか?+
銅ガスケットだけの製作も頼めますか?+
ベローズ単体や、ベローズ付きフランジの製作も相談できますか?+
ヘリウム漏れ試験まで含めて依頼できますか?+
シール面の面粗度はどこまで対応できますか?+
アルミ製のフランジやチャンバー部品でも対応できますか?+
電解研磨や洗浄まで含めて発注できますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
海外の装置メーカーの図面(ISO準拠)でも見てもらえますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] JIS B 2290:1998 真空装置用フランジ(ISO 1609対応)
- [2] ISO 3669:2020 Vacuum technology — Dimensions of knife-edge flanges
- [3] ISO 2861:2020 Vacuum technology — Dimensions of clamped-type quick-release couplings
- [4] Kurt J. Lesker: ConFlat (CF) UHV Flanges & Components — Technical Notes
- [5] JIS Z 2331:2006 非破壊試験−漏れ試験−ヘリウム漏れ試験方法
- [6] SEMI F19-0815 Specification for the Surface Condition of the Wetted Surfaces of Stainless Steel Components
- [7] Astro Pak: SEMI F19の等級別要求事項の技術解説
- [8] ASTM E595 真空環境でのアウトガス試験方法(TML/CVCM)
- [9] SEAJ: 半導体・FPD製造装置 需要予測(2026年1月発表)
- [10] 入江工研: 半導体製造装置向け真空部品の事例記事(メンテナンス時のライン停止)
内部事例
- [14] 加工事例: コバール気密封止パッケージの精密加工
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