印刷機械の部品加工はどこまで外注できるか、発注前に何を確認すべきか?
印刷機械の部品加工は、まず対象部品の系統を確認します。版胴や圧胴、ロールのような回転体は振れと釣合いの管理[4]、胴間ギアは精度等級の指定[3]、フレームや軸物は普通公差と個別公差の区別[5]と、系統ごとに効く公差の種類が違うためです。図面の指定と材料、数量がそろえば、加工先への条件提示は一度で済みます。
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図面の公差や等級の出どころが分からない段階でも、部品の系統と分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!公差の切り分けから一緒に進めます。
まず確認すること
印刷機械の部品加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、図面の公差と等級がどの系統から来ているかです。歯車の精度等級、回転体の釣合い良さ等級、普通公差で扱う寸法の三つを切り分けると、加工先に伝えるべき条件が定まります[3]。深江特殊鋼は、この切り分けから入り、最大φ1,200mm×15mの大型旋盤と面粗度Ra0.1の円筒研削の工程能力を物差しに、対応可否と見積を回答します[10]。
納期が遅れやすいポイント
- 版胴や圧胴の図面にある釣合い良さ等級や振れの指定が、どの規格から来ているのか分からず、加工先に管理方法をどう確認すればよいか決まらない。[4]
- 個別公差の指示が無い寸法に普通公差が適用されることを知らないまま相見積を取り、加工先ごとに前提の公差水準が食い違ってしまう。[5]
- ロールの材料調達と旋削、研削、めっきを別々の発注先に分けた結果、工程間の基準合わせに時間を取られ、補修に伴う機械の停止期間が読めなくなる。[17]
- 長尺の胴軸を仕上げたあとで振れが出て、原因が切削力によるたわみか、熱変形か、残留応力かを切り分けられない。[12]
- 印刷機械メーカーの事業統合で図面の出どころとなる系列が変わり、既設機の補修部品をどこへ発注すべきか判断できない。[9]
Q. 印刷機械の部品図面にある公差や等級は、どの規格から来ているのか?
A. 大きく三つの系統に分かれます。歯車はJIS B 1702-1の精度等級[3]、回転する胴やロールはJIS B 0905の釣合い良さ等級[4]、個別指定の無い寸法はJIS B 0405とB 0419の普通公差[5]です。図面の数値がどの系統かを読み分けると、材料や検査の条件も含めて、加工先への条件提示が具体的になります。 まず適用範囲が最も広い普通公差から確認します。図面に個別公差の指示が無い寸法には普通公差が適用され、精級、中級、粗級、極粗級の4等級のうち通常は中級(m)が使われます。中級の許容差は、寸法区分6mm超30mm以下で±0.2mm、120mm超400mm以下で±0.5mm、400mm超1,000mm以下で±0.8mmです[5]。平面度と真直度にはJIS B 0419の普通公差があり、呼び長さ100mm超300mm以下でH水準0.2mm、K水準0.4mmと定められています[5]。フレームや架台の寸法の大半はこの範囲で扱えます。逆に言えば、軸受のはめあい部や胴の取り合いのように機能が掛かる箇所は普通公差では足りず、個別公差が指定されているはずです。見積で最初に確認する対象はその箇所になります[5]。 歯車には別の等級システムがあります。JIS B 1702-1:2016はインボリュート円筒歯車の歯面精度を1級から11級までの11段階で定め、1級が最も高精度、隣接する等級の許容値(公差)は公比2、つまり1等級上がるごとに許容値がちょうど半分になります[3]。適用範囲は歯数5〜1,000、基準円直径5〜15,000mm、モジュール0.5〜70mmと広く、版胴や圧胴、ブランケット胴を同期回転させる胴間の駆動歯車もこの体系で指定できます。ただし、実際に何級が指定されるかは機種と図面によります。旧規格(JIS B 1702:1976)とは等級の数え方が違うため、古い図面の等級表記を現行等級とそのまま読み替えることはできません[3]。 回転体には釣合い良さの等級があります。JIS B 0905(ISO 1940対応)は釣合い良さをG0.4からG4000まで(単位mm/s)の11段階で表し、参考付表では工作機械や一般機械の部品がG6.3の代表例として挙げられています[4]。許容残留不釣合いの実値は回転速度と質量で個別に決まるため、図面に等級指定が無い場合は、使用回転数が分かる資料を図面に添えると、加工と検査の条件確認が早く進みます[4]。 安全規格は部品の寸法公差を決めませんが、発注の背景として現れます。印刷機や製本、紙工の機械にはISO 12643という安全規格シリーズがあり、Part 1が設計と製造の一般要求を定めます[1]。国内では厚生労働省の機械安全に関する指針(2007年改訂)がISO 12100と整合する形で、はさまれ・巻き込まれ防止の隔離の原則と停止の原則を示しています[2]。保護カバーの枠やインターロックの取付部といった加工部品の要求はこの体系から生まれ、材料と寸法は機種の図面で指定されます[2]。
Q. 版胴や圧胴、ロールのような長尺回転体の加工精度は、何で決まるのか?
A. 支持方式と工程順でほぼ決まります。直径に対して長さが大きい回転体は自重のたわみが精度に直結するため、旋盤の最大径と長さに載るかどうかより先に、どう支持して削るかと、残留応力をいつ抜くかを確認します[10]。 長尺の回転体は、削っている最中も自重でたわみます。振れ止めやフェースプレートといった旋盤側の支持方式を先に決めるのはこのためです[10]。仕上げてから振れが出た場合、原因は切削力によるたわみ、熱変形、芯ずれの3系統に切り分けられます[12]。どの系統かで対策が変わるため、要求精度の相談では、どの姿勢でどこを基準に測るかという検査の条件まで含めて確認します[12]。 工程順では、残留応力の抜きどころが要になります。素材や粗加工で入った応力を抱えたまま大きく削ると、仕上げ後に反りや曲がりが出ます。応力除去焼鈍(鋼でおおむね500〜650℃)を粗加工と仕上げ加工の間に挟むのが基本です[13]。鍛造ロールなら、焼きならし、焼入れと焼戻し、粗旋盤、仕上げ旋盤、研削の順で進め、内部欠陥はJIS G 0587の超音波探傷で管理します[10]。ロール表面にわずかな凸形状(クラウニング)を付けて接触圧を均す指定も、この工程の中で作り込みます。公開事例では、S45C圧延ロールφ800×L2,500mmでクラウニング形状誤差±0.01mmの数値があります[10]。 表面処理まで含めると、発注の単位が変わってきます。回転体の外周に施す硬質クロムめっきは、一般に膜厚1〜1000μmの範囲で用途ごとに指定され、JIS H 8615ではHV750以上の硬度が求められます[6]。同じ紙を扱う機械では製紙用ロールの膜厚20〜50μmという目安が公開されていますが、印刷機のロールに適用する膜厚は機種の仕様で決まるため、図面か仕様書の指定を確認してから見積に織り込みます[6]。外周に別材の層を持つロールでは、しめしろと加熱温度、線膨張係数の差が内筒の仕上げ外径を左右します[11]。旋削と研削、めっきの発注先が分かれるほど、工程間の運搬と基準合わせの回数が増え、全体の納期が読みにくくなります。SCM440油圧シリンダー(φ120×L5,200mm、BTA穴φ80×5,000mm、内径公差H7、Ra1.6)では、材料調達からめっきまでの工程集約で納期を40%短縮した公開事例があります[17]。
Q. 深江特殊鋼に印刷機械の部品加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 部品の系統と図面、数量がそろえば、対応可否と見積を回答します。図面が固まっていない段階でも、公差と等級の出どころを切り分けるところから進められます[15]。 旋盤は最大φ1,200mm×15mの超大型NC旋盤(唐津プレシジョンLTⅡ)を含む4台で、旋削の公差±0.01mm、面粗度Ra0.8〜6.3に対応します[10]。仕上げの円筒研削には、面粗度Ra0.1、寸法精度±0.005mmの公開値があります[11]。長尺回転体の公開事例では、S45C大型シャフトφ800×L12,000mm(外径公差h7、面粗度Ra3.2、振れ0.05mm/全長)を材料の即時供給で納期60%短縮した記録があり[16]、版胴や圧胴、ロール軸と同型の、長尺で振れ管理の掛かる回転体の到達値として参照できます。材質の判断では、機械構造用炭素鋼S45C(炭素量0.42〜0.48%)の生材と調質(引張強さ570〜690MPa、硬さHB160〜230)の選択から、熱処理と加工の順番までを図面と一緒に確認します[14]。 補修部品の引き合いでは、加工の条件より前の事情が効いてきます。国内の印刷機械の生産台数は2024年で18,536台、ピークだった2015年の27,490台に対して67.4%の水準です[7]。この統計は完成機メーカーの出荷動向で、部品加工の受注動向そのものではないものの、機械の供給側が縮小と統合を続けてきたことは読み取れます。枚葉機では、1943年設立のリョービと三菱重工系の印刷機事業が2014年1月に統合した実例があり、機種によって図面の出どころとなるメーカー系列が変わっています[9]。発注側の印刷産業も、事業所数13,371(2024年)と20年前の4割の水準まで減り、97.3%が従業者100人未満です[8]。機械を導入した当時の取引網が同じ形で残っているとは限らないため、補修部品の発注は、手元の図面と検査記録を軸に発注先を組み直す作業になります。発注先の供給継続性は、BCP計画書の有無ではなく、事業影響度分析と目標復旧時間、演習の三つを聞くと判断できます[15]。材料の調達や熱処理、硬質クロムめっきを含む案件は、パートナー150社超のネットワークで一括で受けます。調達サービスは年間320件、リードタイム40%短縮の実績があります[15]。
図面で見ておきたい条件
- 相談の最初に、部品の系統(回転体か、歯車か、フレームや軸物か)と、図面の等級指定の有無をお知らせください。歯車は精度等級と基準円直径、モジュール[3]、回転体は釣合い良さ等級と使用回転数[4]が分かると、工程と検査の確認が早く進みます。
- 個別公差の指示が無い寸法は、JIS B 0405とB 0419の普通公差(通常は中級)で扱われます。機能が掛かる箇所(軸受のはめあい部、胴の取り合い面など)で普通公差より厳しい管理が要る場合は、図面上の個別指定として明示してください[5]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と部品の系統、数量を確認してから回答します。
- 胴間ギアの精度等級や胴の釣合い良さ等級は、機種と図面の指定で決まります。指定の無い図面では、使用回転数と質量が分かる資料をいただいてから管理値を取り決めます[4]。
- 硬質クロムめっきの膜厚と硬度は部位と用途で指定が異なります(一般範囲1〜1000μm、JIS H 8615でHV750以上)。図面に指定が無い場合は、めっき仕様が決まってから見積を確定します[6]。
業界での実機事例(参考)

S45C造船用大型シャフトの旋盤加工

SCM440油圧シリンダーのBTA深穴加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
元の加工先が廃業していて、図面しか残っていない補修部品でも依頼できますか?+
版胴やロールの補修加工を1本だけ頼めますか?+
硬質クロムめっきまで含めて一括で発注できますか?+
図面に釣合い(バランス)の等級指定がありません。どう伝えればよいですか?+
胴間ギアのような歯車部品の加工も頼めますか?+
材質がステンレスやSCM440でも対応できますか?+
海外メーカー製の印刷機の部品図面でも見てもらえますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
検査成績書や測定データは付けてもらえますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] ISO 12643-1:2023 Graphic technology — Safety requirements for graphic technology equipment and systems — Part 1: General requirements
- [2] 機械の包括的な安全基準に関する指針の解説等について(平成19年7月31日 基安安発第731004号)
- [3] JIS B 1702-1:2016 円筒歯車―精度等級―第1部: 歯車の歯面に関する誤差の定義及び許容値
- [4] JIS B 0905:1992 回転機械―剛性ロータの釣合い良さ
- [5] 長さ寸法に対する普通公差(JIS B 0405-1991)と真直度・平面度等の普通公差(JIS B 0419-1991)のまとめ(埼玉大学 機械工学系実習資料)
- [6] 三和メッキ工業: 硬質クロムめっき 技術解説ページ
- [7] 日本印刷産業連合会: 印刷産業Annually Report Vol.4 2025年(資機材: 印刷機械の生産台数)
- [8] 日本印刷産業連合会: 印刷産業Annually Report Vol.4 2025年(印刷産業の事業所数・従業者数)
- [9] リョービMHIグラフィックテクノロジー: 沿革
内部事例
- [16] 加工事例: S45C造船用大型シャフトの旋盤加工
- [17] 加工事例: SCM440油圧シリンダーのBTA深穴加工
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