応力除去焼鈍は、粗加工と仕上げ加工のどちらの前に入れるべきか?
結論から言うと、応力除去焼鈍は粗加工の直後、仕上げ加工に入る前に挟むのが基本の工程順です。[1] ただし全加工後・検査前に応力除去熱処理を入れた公開事例もあるため、まず自社部品の材質と要求精度で工程順を判断します。[4]
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材質と工程順の希望だけで始められます。図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。Meta-Naviの応力除去焼鈍・残留応力の記事と公開事例を見てから、条件の整理はこのページで進めてください。
まず確認すること
応力除去焼鈍をどこに入れるかで迷う相談の多くは、工程順そのものより先に、残留応力がなぜ反りを生むかが整理されていないことが原因です。判断の起点は自社の用語ページで示している「粗加工と仕上げ加工の間に挟むのが一般的な工程順」という基本ルールで、[1] そこに公開加工事例(材料:銅、寸法mm単位の平面度実績)と海外の熱処理技術資料、検査に使うJISの用語定義を重ねて、基本と例外を分けて確認します。
納期が遅れやすいポイント
- 粗加工まで終えた鋼材部品が、仕上げ加工の途中で反り始める。[2]
- 長尺・大径のシャフトや片肉が多い部品で、加工後に真直度や同軸度が公差から外れる。[2]
- 応力除去焼鈍を仕上げ加工の後に入れたら、熱処理でわずかに寸法が動き、検収でやり直しになった。[1]
- 銅など柔らかい材質の大型プレートで、平面度の要求を満たせない。[4]
- 外注先に応力除去焼鈍を依頼する際、温度・保持時間の妥当性をどう確認すればよいか分からない。[6]
Q. 応力除去焼鈍はなぜ必要で、どんな効果があるのか?
A. 切削や溶接、焼入れで生じた残留応力だけを、硬さや金属組織を大きく変えずに取り除くためです。[1] 応力除去焼鈍は、変態点より低い温度域(鋼ではおおむね500〜650℃)まで加熱し、保持したあと徐冷する熱処理です。焼なましや焼ならしのように組織を軟化・均質化する処理とは異なり、すでに必要な硬さや組織を持つ材料にもかけられ、検査でも寸法(mm単位)への影響を最小限に抑えられます。[1] 残留応力を抱えたまま材料を大きく削ると、応力の釣り合いが崩れて反りや曲がりが出やすくなります。特に長尺・大径のシャフトや、片側に偏って肉を削り取る部品ほど、真直度や同軸度(mm単位)への影響が目立ちます。[2] 加工歪みは、残留応力の解放、切削熱による膨張収縮、クランプを外したときの戻りという3つの要因に分けて考える必要があり、応力除去焼鈍はこのうち残留応力側を工程の途中で断つための対策です。[3] 海外の熱処理技術資料でも、応力除去は曲げ加工や溶接、今回のような機械加工、鍛造といった工程で材料内部に生じた応力を低減する処理として位置づけられており、正しく行えば内部応力の90%以上を取り除けるとされています。工具や治具の設計を変えるのではなく、材質側を処理して対応する点が特徴です。[6]
Q. 応力除去焼鈍は工程のどこに入れるべきか?
A. 基本は粗加工と仕上げ加工の間ですが、全加工後に入れる例外もあります。[1][4] 残留応力は粗加工で材料を大きく削った直後に最も大きくなりやすいため、応力除去焼鈍は粗加工と仕上げ加工の間に挟むのが一般的な工程順です。仕上げ加工のあとに焼鈍をかけることも可能ですが、熱処理そのもので寸法がわずかに動く場合があるため、焼鈍のあとに最終検査の工程を置く必要があります。[1] 一方で、公開加工事例では異なる工程順も確認できます。銅材(C1020-O)の800×120×t20mmプレートでは、水平面の加工と穴加工、冷却路の加工まで一通りの機械加工を終えたあとに歪取り熱処理250℃×2hを挟み、そのあとに最終の平面度・位置度検査を行っています。この工程順で、平面度は0.1mmの要求を満たせなかった状態から0.06mmまで改善しました。[4] つまり「粗加工と仕上げ加工の間」という基本ルールと、「全加工後・検査前」という実例は、どちらも成立する工程順であり、部品の形状や求める公差によってどちらが適するかが変わります。[4] JIS B 6905の用語定義でも、応力除去焼なましは鋼製品の場合Ac1点(変態点)以下の適切な温度に加熱し、通常は炉内で徐冷する処理とされており、工程順そのものについての規定はありません。[5] 工程順の判断は規格では決まらず、この部品の形状がどうなっているか、公差がどれだけ厳しいか、材料が何かによって個別に決める必要があります。
Q. 温度・保持時間はどう決め、外注先には何を確認すべきか?
A. 材料ごとの目安温度をもとに、JISの用語定義に沿っているかを検査で確認します。[5][6] 海外の熱処理技術資料では、炭素鋼・合金鋼はおおむね500〜650℃(下部変態点より105〜165°F低い温度が目安)、保持時間は最大断面厚さ25mm(1インチ)あたり約1時間(30分〜2時間程度)、工具鋼は500〜550℃、熱間工具鋼・高速度鋼は600〜700℃、ステンレス鋼は290〜425℃が目安とされています。[6] 冷却は593℃までは比較的速く、そこから150℃までは緩やかに、150℃以下は自由に冷やしてよいとされ、急冷は材料に新たな残留応力を生む要因になるため避けるべきとされています。[6] 焼入れ焼戻し材に応力除去焼鈍をかける場合は、処理温度が焼戻し温度よりおおむね20℃以上低いことが目安になります。[8] 温度が高いほど残留応力は取れやすくなりますが、部品形状によっては変形のリスクも上がるため、板厚(mm)・形状に応じて温度を決める必要があります。[8] 外注先に確認する際は、JIS B 6905が定める用語「応力除去焼なまし(stress relieving / stress relief annealing)」を使い、処理温度がAc1点以下で徐冷条件を満たしているかを聞きます。[5] あわせて、機械加工で生じる残留応力は工程条件によって大きさも向きも変わり、統一した数値ルールがないため、[7] 自社部品と近い材料・板厚(mm)での処理実績と検査データがあるかを確認したほうが判断しやすくなります。
図面で見ておきたい条件
- 残留応力の大きさや向きは、削る材料が鋼材かステンレスか銅かで変わるだけでなく、どの順序で削るか、切込みや送りをどう設定するかでも変わるため、統一した数値ルールはありません。応力除去焼鈍を挟むかどうかは、この部品の材料と加工順序を踏まえて個別に確認する必要があります。[7]
- 応力除去焼鈍を仕上げ加工の後に入れると、熱処理そのもので寸法(mm単位)がわずかに動く場合があるため、焼鈍のあとに最終検査の工程を置く必要があります。[1]
- 焼入れ焼戻し材に応力除去焼鈍をかける場合、処理温度は焼戻し温度よりおおむね20℃以上低い温度が目安になり、材料の板厚(mm)によっても調整します。[8]
相談前に知っておきたいこと
- 応力除去焼鈍を挟んでも、歪みが完全になくなるわけではありません。金属積層造形(AM)部品のように熱履歴が複雑な場合、焼鈍後も反りの傾向が残ることがあります。[1]
業界での実機事例(参考)

C1020無酸素銅超電導ブスバーのマシニング加工
よくある質問
工程順をまだ決めていない段階でも、粗加工と仕上げのどちらの前かを相談できますか?+
応力除去焼鈍と焼なまし・焼ならしは同じ処理ですか?+
応力除去焼鈍を挟めば反りは完全になくなりますか?+
銅材でも鋼材と同じ考え方で工程順を決められますか?+
外注先に伝える公差は、平面度・真直度・同軸度のどれを優先すべきですか?+
応力除去焼鈍の温度・時間を数値で保証してもらえますか?+
応力除去焼鈍を全加工後に入れるべき部品の目安はありますか?+
長尺・大径シャフトでも同じ判断で工程順を決められますか?+
海外調達材でも応力除去焼鈍の工程を相談できますか?+
短納期案件でも応力除去焼鈍込みで対応できますか?+
既に反りが出た部品を、あとから応力除去焼鈍で直せますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [4] 深江特殊鋼: 銅製バスバーの歪取り熱処理事例
設備・会社情報
- [1] Meta-Navi用語集: 応力除去焼鈍
- [2] Meta-Navi用語集: 残留応力
- [3] Meta-Navi用語集: 加工歪み
- [8] Meta-Navi コラム: 焼きなましとは?
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