S45Cの機械加工を発注する前に、材質指定と熱処理、公差のどこまでを決めておくべきか?
S45Cの発注前に決めるべきは、生材のまま使うか焼入れするか、熱処理を機械加工の前後どちらに置くか、図面に書く寸法公差の等級です。この3点が先に決まれば、工法と工程順、内径公差の見当がつきます。[1][4]
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生材で進めるか調質材にするか、熱処理を機械加工の前後どちらに置くかで迷うなら、材質と外径、穴径、要求公差をメモにしてお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!条件の整理から一緒に進められます。
まず確認すること
最初に決まっていないと見積が止まるのは、S45Cという材質記号そのものではなく、その材料をどの状態で使うかです。S45Cは生材のまま使うことも、焼入れと焼戻しで硬度を上げて使うこともでき、図面に材質記号しか書かれていない段階では、工具も工程順も決まりません。[1] 調質後の引張強さは570〜690MPa、硬さはHB160〜230が目安です。被削性は良好と整理されており、同じ設備と工具でも他の材質より切削速度を高く取れます。[2] ただしこの数値は熱処理を経た後の値なので、生材のまま使う材料に当てはめると強度の見積もりがずれます。[2] 深穴加工のように取り代の大きい工程は、焼入れ前に済ませるのが一般的です。焼入れ後の材料は硬さが上がり、同じ工具と切削条件では削れないため、深穴を先に空け、摩耗面だけを後から焼入れて研磨する分業がよく使われます。[1]
納期が遅れやすいポイント
- 図面にS45Cとだけ書かれていて、生材で使うのか調質材で使うのかが読み取れない[1]
- 手配の都合でSS400へ置き換えてよいのか、判断の根拠が社内にない[1]
- 焼入れを機械加工の前に頼むか後に頼むかで、外注先から返ってくる工程案が変わる[1]
- みがき棒鋼で材料を買うときに、寸法公差の等級を指定しないまま発注している[4]
- S45Cで強度が足りるのか、S50Cや焼入性の高い鋼種へ上げるべきか決めきれない[1][3]
Q. S45Cは、SS400やS50Cとどう違うのか?
A. 炭素量が管理されているかどうかと、熱処理で性質を変えられるかどうかが分かれ目です。[1] SS400は一般構造用圧延鋼材で、炭素量の規定がなく、熱処理による硬度向上を前提としていません。溶接構造物や建築材料のように、そのまま使う用途が中心です。[1] これに対しS45Cは炭素量が0.42〜0.48%の範囲で管理された機械構造用炭素鋼で、焼入れと焼戻しによって硬さと強度を変えられます。図面がS45C指定なのに材料手配の都合でSS400へ置き換えると、熱処理を前提にした部位で必要な硬さが出ません。[1] S50Cは炭素量が0.47〜0.53%程度とS45Cよりわずかに高く、その分やや硬くなります。油圧回路のマニホールドブロックのように強度を要する部品に使われる材料です。[1] S45CとS50Cのどちらを選ぶかは、必要強度と削りやすさのどちらを優先するかで決まります。[1] 材質記号の体系としては、S45CはJIS G4051の機械構造用炭素鋼(S10C〜S58C)の一員です。[3] 同じ用途に対してボロンを添加した鋼種を代替材と位置づけている材料メーカーもあり、そうした鋼種はS45Cより素材硬さが低いため被削性と冷間加工性が良好で、かつ焼入性が高いため高周波焼入れで硬化層を深く入れられると説明されています。[3] 大径の軸部品で芯に近い位置まで硬さが必要なときは、S45Cのままでは硬化層が届かないことがあるので、要求硬さと必要な深さを図面に書いてから材質を確定させると手戻りが減ります。[3]
Q. 熱処理と寸法公差は、発注前にどこまで決めておくべきか?
A. 熱処理を機械加工の前に入れるか後に入れるかと、寸法公差をどの等級で指定するかの2点です。[1][4] 深穴加工のような取り代の大きい工程は、生材または調質前の状態で行うのが一般的です。焼入れ後の材料は硬さが上がって切削抵抗が増えるため、同じ工具と切削条件では削り切れません。そこで深穴を先に空け、摩耗面だけを後から高周波焼入れして研磨する分業が使われます。[1] 寸法公差は、図面に個別指示があるかどうかで扱いが変わります。みがき棒鋼(S45C-D)として材料を調達する場合、寸法公差はJIS G3123が定めるIT6からIT13の等級で決まり、どの等級になるかは断面形状と仕上げ工程(引抜きか研削か)によって変わります。規格が対象とする丸鋼の寸法は直径5〜100mmで、この範囲を外れる寸法は規格の公差表ではなく個別の取り決めになります。[4] 同じ材料でも、化学成分と機械的性質はJIS G3123ではなくJIS G4051側の規定です。材料の指定を1つの規格番号だけで済ませると、寸法か材質のどちらかが未指定のまま残ります。受入検査で何を見るかも、引張試験や硬さ試験、寸法検査、外観検査、脱炭層の検査のうち、どれを注文時に指定するかで変わります。[4] 素材形状の側では、黒皮のまま支給されるか、旋盤やフライスで基準面を作った状態かで、深穴加工に入るときの穴の位相合わせの精度が変わります。弊社に依頼いただくときは、材料手配を含めるかどうかもあわせて確認させていただいています。[1]
Q. 弊社に相談いただくとき、S45Cのどの条件から確認するのか?
A. 穴径と加工長、外径と全長、要求公差の3つです。この3つが決まると、対応可否と見積を回答できます。[5][6] S45Cの深穴加工では、穴径がBTA加工とガンドリル加工の分かれ目になります。BTA加工の対応径はφ20〜300mm(拡張時最大600mm)で最大深さ13,000mm、ガンドリル加工の対応径はφ4〜32mm(拡張時最大200mm)で最大深さ1,500mmです。同じS45Cでも穴径がこの境目をまたぐと、使う設備と達成できる真直度が変わります。[5][6] S45Cの標準的な切削条件は、BTA加工で切削速度85m/min、送り0.28mm/rev、クーラント圧4.5MPaです。[5] ガンドリル加工では切削速度95m/min、送り0.035mm/rev、クーラント圧10MPaを使っています。SUS304のBTA条件が切削速度45m/min、送り0.15mm/revであるのと比べると、S45Cは切削速度を高く取れる材料です。[5][6] 寸法帯の見当をつけるには、公開している加工事例が近い手がかりになります。S45Cのスリーブφ210×L1876mmにφ125mmの貫通穴を空けた事例では、内径公差±0.05mm、面粗度Ra6.3、月産30本、納期10営業日です。[7] 小径側では、φ30×L200mmのノズルにφ6mmの穴を深さ200mmまで空けた事例があり、穴曲がりは0.1mm以内、月産50個、納期7営業日です。[8] 大物側では、φ800×L12,000mmの船舶用プロペラシャフトを外径公差h7、面粗度Ra3.2で年間20本加工し、全長にわたる真直度と振れを0.05mmに収めています。[9] 公開している事例の寸法帯は、φ6mmの穴からφ800mmの外径までの範囲にあります。[8][9] ここから外れる図面でも、材質と要求精度が決まれば対応可否と見積を回答します。国内認定パートナー150社超のネットワークにより、対応できる材質や精度、ロット、納期の範囲を広く取れます。[7]
図面で見ておきたい条件
- BTA加工の対応径はφ20〜300mm(拡張時最大600mm)、ガンドリル加工の対応径はφ4〜32mm(拡張時最大200mm)であり、同じS45Cでも穴径がこの境目をまたぐと使う設備と達成できる真直度が変わります。[5][6]
- みがき棒鋼(S45C-D)として材料を調達する場合、寸法公差はJIS G3123のIT6からIT13の等級で決まり、規格が対象とする丸鋼は直径5〜100mmです。この範囲を外れる寸法は、規格の公差表ではなく個別の取り決めになります。[4]
- 深穴加工のように取り代の大きい工程は焼入れ前に行うのが一般的で、焼入れ後の材料は硬さが上がり、同じ工具と切削条件では削り切れません。[1]
相談前に知っておきたいこと
- 自社事例として寸法と公差を示せるのは、φ210×L1876mmのスリーブやφ800×L12,000mmの船舶用シャフトのように公開済みの案件に限られます。同じS45Cでも形状と要求精度が違えば、この数値をそのまま当てはめることはできません。[7][9]
- 工具寿命の絶対値と加工時間は、材質記号だけでは算出できません。熱処理状態と穴径、L/D比が決まってから算出します。[2][3]
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

S45C包装機器スリーブのBTA長尺加工

S45Cプランジャーノズルのガンドリル細穴加工

S45C造船用大型シャフトの旋盤加工
よくある質問
図面にS45Cとしか書かれていなくても相談できますか?+
材料の手配から依頼できますか?+
黒皮のまま支給しても加工してもらえますか?+
焼入れや調質の手配も含めて依頼できますか?+
見積を依頼するとき、S45Cの条件は何を伝えればよいですか?+
S45CからS50Cや他の鋼種へ変えるべきかも相談できますか?+
SS400で見積を取っていた部品をS45Cに変更しても相談できますか?+
試作1個からでも依頼できますか?+
既存の外注先で公差が出ていない案件も相談できますか?+
S45C以外の炭素鋼でも同じ考え方で確認できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [7] 事例: S45Cスリーブの長尺BTA深穴加工
- [8] 事例: S45Cノズルのガンドリル小径深穴加工
- [9] 事例: S45C船舶用プロペラシャフトの大型旋盤加工
設備・会社情報
- [1] MetaNavi: S45Cとは(深穴加工用語辞典)
- [2] MetaNavi: S45Cの材質データ(機械構造用炭素鋼)
- [5] MetaNavi: BTA深穴加工の設備能力と材質別切削条件
- [6] MetaNavi: ガンドリル加工の設備能力と材質別切削条件
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