SUS440Cとは
読み: さすよんよんまるしー
SUS440Cとは、炭素を約1%、クロムを約17%含むマルテンサイト系ステンレス鋼であり、ステンレス鋼の中では最も高い硬度まで焼入れできる材質である。
概要
ステンレス鋼はクロムが形成する不動態被膜によって耐食性を持つが、系統によって焼入れによる硬化の可否が異なる。SUS440Cはマルテンサイト系ステンレスの中でも炭素含有量が最も多いグループにあたり、焼入れ焼戻しによって高い硬度・強度を得られる。
この性質から、耐食性と高硬度の両方が求められる刃物、軸受、精密機械部品に使われる。ステンレス鋼としては高硬度側の代表格であり、同じマルテンサイト系のSUS420J2より炭素・クロムとも多く、到達硬度も高い。
組成が硬度に与える影響
SUS440Cの炭素量約1%はマルテンサイト系ステンレスの中でも高い水準にあり、焼入れ時に硬いマルテンサイト組織を生成する量として設定されている。クロム約17%は炭素と結びついて炭化物を作りつつ、なお不動態被膜による耐食性を確保できる量である。
焼入れ焼戻しによって、機械部品用ステンレス鋼としては最高硬度クラスに達する。強度・硬度を必要とする機械部品や刃物に用いられるのは、この炭素とクロムのバランスが理由である。
加工上の注意点
焼入れ後のSUS440Cは硬度が高く、切削では工具摩耗が進みやすい。焼なまし状態で荒加工・穴あけを済ませ、焼入れ焼戻し後は研削・ホーニングなど硬い材料に適した仕上げ加工に切り替える工程が一般的である。
ステンレス鋼共通の性質として熱伝導率が低く切削熱がこもりやすいため、切削油の供給と送り条件の設定が工具寿命を左右する。深穴加工では、切りくずを刃先から遠ざける油穴付き工具やBTA加工のような排出経路の確保がさらに重要になる。
主な用途
研削盤のアクスル、軸受、刃物、耐摩耗性が必要な精密機械部品に使われる。実例として、外径80・穴径4・材料長さ400mmの研削盤アクスル向け深穴加工事例が報告されている。
ステンレス鋼の中では最も高硬度を有する鋼だが、焼入れ前後の工程を分けることで、深穴加工でも精度を維持できる。
よくある誤解
✕ SUS440Cは焼入れ後の方が加工しやすい。
○ 逆である。焼入れ焼戻し後は硬度が上がり工具摩耗が進みやすくなる。荒加工・穴あけは焼なまし状態で行い、焼入れ後は研削やホーニングなど硬さに適した仕上げに切り替えるのが一般的である。
✕ ステンレス鋼はすべて焼入れで硬くならない。
○ オーステナイト系(SUS304等)は焼入れで硬化しないが、SUS440Cのようなマルテンサイト系は炭素鋼と同じ原理で焼入れ焼戻しにより硬化する。系統によって性質が大きく異なる。
よくある質問
SUS440CはSUS304よりも耐食性が高いですか。+
SUS440Cの深穴加工はどのタイミングで発注すべきですか。+
SUS440Cはどんな部品に使われますか。+
関連用語
出典
- BTA・ガンドリル加工.com 技術コラム「ガンドリル加工が可能な素材~ステンレス鋼~」(深江特殊鋼)
- JIS G 4303(ステンレス鋼棒)
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