SUS420J2とは
読み: さすよんにーまるじぇいつー
SUS420J2とは、クロムを約13%、炭素を約0.26〜0.40%含むマルテンサイト系ステンレス鋼であり、焼入れ焼戻しによって高い硬度と耐食性を両立できる材質である。
概要
ステンレス鋼は組織の違いでオーステナイト系・フェライト系・マルテンサイト系などに分かれ、SUS420J2はこのうちマルテンサイト系に属する。マルテンサイト系の特徴は、他系統と違って焼入れによる硬化が可能な点にある。SUS304のようなオーステナイト系ステンレスは焼入れで硬化しないが、SUS420J2は炭素鋼と同様に焼入れ焼戻しで硬度を作り込める。
このため、耐食性がある程度必要で、かつ刃先や摺動面のように硬さそのものが機能に直結する部品に選ばれる。SUS420J1(C量が低い型)に対しSUS420J2は炭素量が高く設定されており、より高い硬度まで焼入れできる。
組成と熱処理による性質変化
クロム約13%は不動態被膜を形成して赤錆の発生を抑える一方、炭素約0.26〜0.40%は焼入れ時にマルテンサイト組織を作るために添加されている。炭素が多いほど焼入れ硬さは上がるが、耐食性はわずかに下がる方向に働く。
焼入れ焼戻しを行うと、焼なましのままの状態と比べて硬度・耐摩耗性が大きく向上する。ただし焼入れ後は炭素鋼と同様に切削抵抗が増し、工具摩耗が進みやすくなるため、熱処理前の状態(焼なまし材)で荒加工を済ませ、熱処理後は仕上げ加工のみに絞る工程設計が一般的である。
SUS440Cとの違い
同じマルテンサイト系ステンレスであるSUS440Cは炭素量・クロム量ともにSUS420J2より多く、焼入れ後の到達硬度も高い。刃物やベアリングのように極めて高い硬度・耐摩耗性を要求される部品にはSUS440Cが選ばれ、金型部品や一般的な軸物のように中程度の硬度と加工性のバランスが求められる部品にはSUS420J2が選ばれる傾向がある。
加工性の面では、SUS420J2の方が炭素・クロムが少ない分だけ被削性が良く、焼入れ前の切削加工では工具寿命を確保しやすい。
主な用途
刃物(包丁、はさみ)、バルブ部品、金型のキャビティ・コア、油圧機器の軸部品など、耐食性と一定の硬度を両立させたい用途に使われる。深穴加工の対象になるケースでは、油圧シリンダのロッドや軸物部品の中心穴あけが代表例である。
焼入れ焼戻し材の深穴加工を依頼する場合は、熱処理の有無・タイミングを発注時点で明確にしておくと、加工難易度と見積り精度が上がる。
よくある誤解
✕ ステンレス鋼はどれも焼入れで硬くならない。
○ 焼入れで硬化するかどうかは金属組織による。SUS304などのオーステナイト系は焼入れで硬化しないが、SUS420J2のようなマルテンサイト系は炭素鋼と同じ原理で焼入れ焼戻しにより硬化する。
✕ SUS420J2とSUS440Cはほぼ同じ材質なので互換で選んでよい。
○ 炭素・クロムの含有量が異なり、到達硬度と加工性が違う。高硬度・高耐摩耗性が必須ならSUS440C、加工性とのバランスを取りたいならSUS420J2というように、要求硬度で選定する。
よくある質問
SUS420J2は深穴加工に向いていますか。+
SUS420J2とSUS440Cはどちらを選べばよいですか。+
SUS420J2は錆びにくいですか。+
関連用語
出典
- JIS G 4303(ステンレス鋼棒)
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