深穴加工とは
読み: ふかあなかこう
深穴加工とは、穴径に対して深さが5倍を超える穴(L/D>5)をあける切削加工の総称である。ガンドリル加工とBTA加工という2種類の専用工法があり、一般的なドリルでは対応が難しい真直度・面品位・切りくず排出の課題を、専用の機械と工具構造で解決する。
概要
穴あけ加工は径と深さの比率が大きくなるほど難度が上がる。深さの絶対値ではなく、穴径に対する深さの比(L/D比)で難度を捉えるのが実務上の考え方であり、一般にL/D比が5を超える穴を深穴と呼ぶ。φ4×400mmのような細穴も、φ160×1,280mmのような大径穴も、比率の条件を満たせば深穴に含まれる。
穴が深くなるほど、加工中に発生した切りくずが穴の中に滞留しやすくなる。これを放置すると工具の摩耗・欠損や、穴の曲がり、面粗度の悪化につながる。深穴加工は、切削油の流路設計と工具構造によってこの切りくず滞留を防ぐことを目的とした専用工法である。
2種類の工法
深穴加工は、ガンドリル加工とBTA加工の2種類に大別される。ガンドリル加工は工具先端の油穴から切削油を吐出し、切りくずを工具外周のV溝から手前に排出する方式で、小径・細穴を得意とする。
BTA加工は逆に外側から切削油を供給し、切りくずをボーリングバー内部から排出する方式で、中径から大径を得意とする。実務上の境目の一例として、深江特殊鋼(BTA・ガンドリル加工.com運営)では穴径φ32以下をガンドリル加工、φ33以上をBTA加工で対応している。どちらの工法も到達精度自体に大きな差はなく、径によって適した工法が変わる。
よくあるトラブルと対策
深穴加工で頻発する問題は、切りくずの排出不良、工具のたわみによるびびり、穴の曲がりの3つである。切りくずが穴底に溜まったまま加工を続けると、工具の溝が詰まり切削抵抗が増して摩耗・欠損につながる。対策として、送り速度や送り量を調整して切りくずを分断しやすくする、溝長の長いロングドリルを選定する、切削油の種類と供給条件を材質に合わせて見直す、という組み合わせが有効である。
突出し長さの長い工具では刃先がたわみやすく、びびりや穴曲がりが起きやすい。ガイド穴の径を穴径に近づける、切削条件を工具の食いつきに合わせて調整するといった対策で直進性を確保する。
精度と検査の目安
深穴加工では、穴径の公差だけでなく穴の曲がり(真直度)も品質の指標になる。目安として孔径は±0.2〜0.3mm程度、穴の曲がりは1mにつき1mm程度とされるが、小径になるほど曲がりが大きくなりやすいため、径と深さの組み合わせごとに個別確認が必要になる。
貫通穴は基本的に両側から加工することが多いが、孔径と長さの条件によっては片側貫通で対応できる場合もある。加工可否は自動見積の範囲を超える長さも含め、個別の相談で判断されることが多い。
深穴加工の精度・公差の目安
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 孔径公差 | ±0.2〜0.3mm程度 | 設備・条件により変動 |
| 穴の曲がり | 1mにつき1mm程度 | 小径になるほど曲がりが大きくなりやすい |
※ 深江特殊鋼(BTA・ガンドリル加工.com)の実務目安。個別条件では別途確認が必要。
よくある誤解
✕ 深穴とは単に「深い穴」のことである。
○ 一般に、穴径に対して深さが5倍を超える穴(L/D>5)を深穴と呼ぶ。深さの絶対値ではなく径との比率で定義される。
✕ マシニングセンタの一般的なドリルでも深穴はあけられるので専用工法は不要である。
○ 一般的なドリルの実用限界は穴径の30倍程度とされる。それを超えるL/D比では切りくず排出と工具剛性が両立せず、専用工法(ガンドリル・BTA)が標準的な選択になる。
✕ 切りくずの排出は送り速度を上げれば必ず改善する。
○ 送り速度の調整だけでなく、送り量・工具の溝形状・切削油の選定を組み合わせて初めて排出性が安定する。材質ごとに切りくずのつながりやすさが異なるため、条件は個別に決める必要がある。
よくある質問
何mm以上の深さから深穴と呼びますか?+
片側からの貫通加工はできますか?+
穴の曲がりはどの程度まで許容されますか?+
どちらの工法(ガンドリルかBTA)を選べばよいか分かりません。+
関連用語
出典
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