プリハードン鋼とは
読み: ぷりはーどんこう
プリハードン鋼とは、鋼材メーカーの段階であらかじめ調質(焼入れ・焼戻し)を行い、一定の硬度に仕上げた状態で出荷される金型用鋼材の総称である。
概要
金型に使う鋼材の多くは、荒加工後に焼入れ・焼戻しを行って必要な硬度を出す。この方法では熱処理による寸法変化(歪み)が避けられず、焼入れ後に仕上げ加工の工程が必要になる。
プリハードン鋼は、鋼材メーカーが素材の段階で調質を済ませてから出荷する鋼材で、購入後は熱処理を挟まずにそのまま最終形状まで機械加工できる。これにより、焼入れによる歪みを心配せずに寸法出しができ、工程数と納期を短縮できる。
焼入れ鋼との違い
SKD11やSKD61のような焼入れ鋼は、荒加工後に焼入れ・焼戻しを行うため高い硬度域まで上げられるが、熱処理後の歪みを見込んだ取り代設計と仕上げ加工が必要になる。
プリハードン鋼はあらかじめ中程度の硬度(HRC30台前後が多い)に調質されており、熱処理工程を挟まない分、リードタイムを短縮できる。ただし到達できる硬度の上限は焼入れ鋼より低く、非常に高い耐摩耗性が必要な部位には向かない場合がある。
代表銘柄と使い分け
代表的な銘柄にNAK80(鏡面仕上げ性に優れる)やPX5、HPM系などがある。透明樹脂の光学部品や外観部品の金型のように、鏡面研磨が必要なキャビティにはNAK80のような高純度・低偏析のプリハードン鋼が選ばれる。
一般的な樹脂成形金型のベースやプレート部品には、コストを抑えたプリハードン鋼が使われることが多く、要求される表面品位と耐久性のバランスで銘柄を選定する。
加工上の注意点
調質済みのためある程度の硬度があり、生材(未熱処理材)の鋼材に比べると切削抵抗や工具摩耗は大きくなる。超硬工具の選定と切削条件の管理が必要になる。
金型の分野では、素材から荒加工・仕上げ加工まで一式仕上げて納品する「金工完」という発注形態が使われることがあり、プリハードン鋼はこの一貫対応との相性がよい。
よくある誤解
✕ プリハードン鋼は熱処理をしていないので、生材と同じ感覚で加工できる。
○ 調質済みで一定の硬度(HRC30台前後が多い)を持つため、生材より切削抵抗が大きく工具摩耗も進みやすい。生材と同じ条件で加工すると工具寿命が短くなることがある。
✕ プリハードン鋼はSKD61のような焼入れ鋼の代用品であり、性能は劣る。
○ 熱処理による歪みを避けられるという焼入れ鋼にはない利点があり、代用ではなく別の目的で選ばれる鋼材である。到達硬度の上限が低い点はトレードオフであって、一律に劣るわけではない。
✕ プリハードン鋼を使えば、追加の熱処理は一切不要である。
○ 基本的には熱処理を挟まずに使うことを想定した鋼材だが、局所的な硬化処理(窒化処理等)を追加する場合もある。要求仕様によっては追加処理の要否を確認する必要がある。
よくある質問
プリハードン鋼と焼入れ鋼はどちらを選べばよいですか。+
プリハードン鋼は追加の熱処理ができますか。+
金工完で依頼する場合、材料指定はどうすればよいですか。+
関連用語
出典
- 一般的な金型用鋼材の調質に関する工学的知見(JIS G4404 合金工具鋼鋼材等)
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