Meta-NaviProduced by 深江特殊鋼株式会社

最大実体公差方式とは

読み: さいだいじったいこうさほうしき

最大実体公差方式とは、部品を最大実体寸法(材料が最も多く残る側の寸法)で仕上げたときを基準に、実際の寸法が最大実体寸法から離れるほど、その分だけ幾何公差の許容量を追加できる指定方式である。

Meta-Navi bridge

まずはお気軽にご相談ください

図面や仕様が固まっていなくても構いません。条件を整理しながらMeta-Naviで相談できます。

概要

幾何公差は通常、対象の寸法がどこにあっても一定の許容量として適用される。しかし実際の部品では、寸法と幾何公差(例えば穴径と位置度)には相関がある場合がある。穴が最大実体寸法(穴であれば最小径、軸であれば最大径、つまり材料がもっとも多く残る状態)から離れて、材料が少ない側に仕上がるほど、多少位置がずれても組立に支障が出にくくなる、という関係である。

最大実体公差方式(MMC、Maximum Material Condition)は、この相関関係を利用して、寸法が最大実体寸法から離れた分だけ、指定した幾何公差にボーナス公差を上乗せできるようにする方式である。図面上ではMの中に丸を付けた記号を幾何公差指示枠に付記して表す。

ボーナス公差の考え方

例えば穴の位置度にMMCを適用した場合を考える。穴径がH7の最小許容寸法(材料が最も多く残る状態)で仕上がっているときは、指定された位置度の公差そのものしか許容されない。しかし穴径が公差の範囲内で最大許容寸法側(材料が少ない状態)に近づくほど、実際に位置がずれても組立可能な余地が増えるため、その差分がそのまま位置度のボーナス公差として上乗せされる。

この仕組みにより、寸法が公差の中心付近から外れて仕上がった部品でも、機能上問題なければ不合格にせず活用できる。結果として、加工のばらつきに対する許容度が実質的に広がり、歩留まりの改善につながる場合がある。

適用できる場面と条件

最大実体公差方式は、位置度や同軸度、対称度など、はめあいに関わる幾何公差に対して適用されることが多い。適用には、対象の寸法と幾何公差が実際にはめあい・組立の機能に関係していることが前提になる。単独の形状公差(平面度や真直度など)には通常適用されない。

また、部品側だけでなくデータム側にもMMCを適用できる場合があり、その場合はデータムの取り方自体にもボーナス公差の考え方が及ぶ。適用条件や記号の解釈は複雑なため、実務では機能要求と検査方法(ファンクションゲージの使用可否など)を含めて設計段階で検討する。

深穴部品での適用可否

深穴加工では、穴の径や位置に幾何公差を指定する場面が多く、理屈のうえでは最大実体公差方式を適用できる場合がある。ただし深穴は径そのものが全長で均一に保ちにくく、位置度や同軸度の評価も入口と奥とで変わりやすいという特有の事情がある。

そのため深穴部品にMMCを適用する場合は、ボーナス公差の計算根拠となる寸法(穴径)をどの位置で測定するかを明確にしておかないと、ボーナス公差の算定自体が曖昧になる。適用を検討する際は、加工先と測定位置・方法をあらかじめ取り決めておくことが望ましい。

よくある誤解

最大実体公差方式は、指定された幾何公差を単純に緩める仕組みである。

指定された幾何公差そのものが緩むわけではなく、寸法が最大実体寸法から離れた分だけボーナス公差が上乗せされる仕組みである。寸法が最大実体寸法ちょうどのときは、ボーナス公差はゼロになる。

最大実体公差方式はどんな幾何公差にも適用できる。

主に位置度や同軸度、対称度など、はめあい・組立に関係する幾何公差に適用される。平面度や真直度のような単独の形状公差には通常適用されない。

深穴部品でも、径1点の測定値だけでボーナス公差を確定できる。

深穴は径が全長で均一とは限らないため、ボーナス公差の算定根拠となる測定位置を明確にしないと、計算結果が測定箇所によって変わってしまう可能性がある。

よくある質問

最大実体公差方式を使うと、加工コストは下がりますか?+
寸法のばらつきに対する許容度が実質的に広がるため、機能上問題ない範囲で不合格を減らせる可能性はあります。ただし検査方法(ファンクションゲージの要否など)が変わる場合があり、必ずしも一律にコストが下がるとは限りません。
図面のMマーク(丸囲みのM)は何を意味しますか?+
その幾何公差に最大実体公差方式(MMC)を適用することを示す記号です。対象の寸法とその幾何公差の間に、ボーナス公差の関係があることを意味します。
深穴部品にMMCを適用したい場合、加工先に何を伝えればよいですか?+
ボーナス公差の算定に使う穴径をどの位置(入口・中間・奥)で測定するかを明確に伝えることをおすすめします。深穴は径が全長で一定とは限らないため、測定位置の取り決めがないと算定結果が曖昧になります。

関連用語

出典

  1. JIS B 0023(製図-幾何公差表示方式-最大実体公差方式及び最小実体公差方式)
  2. JIS B 0021(製図-幾何公差表示方式)

このページの情報は役に立ちましたか?

Meta-Navi bridge

ここまでご覧いただいた方へ

条件が固まっていなくても大丈夫です。図面や仕様が手元になくても、まずはMeta-Naviにご相談ください。