ガンドリル加工とは
読み: がんどりるかこう
ガンドリル加工とは、ガンドリルと呼ばれる専用工具の先端から高圧の切削油を吐出し、切りくずを工具外周の溝から手前に排出しながら小径の深穴をあける切削加工である。芯ずれ精度と直進性に優れ、穴径に対して深さが5倍を超える深穴(L/D>5)を高能率にあけるために使われる。
概要
一般的なドリル加工では、穴が深くなるほど切りくずが穴の中に滞留しやすくなり、無理に押し込めば工具の摩耗や折損、穴の曲がりにつながる。ガンドリル加工はこの問題を、切削油の噴出方向と工具形状の組み合わせで解決した工法である。
工具先端の油穴から切削油を吐出し、刃先で発生した切りくずをその油の流れに乗せて工具外周のV字溝から手前側へ押し出す。切りくずが穴の内面に長く留まらないため、深い穴でも内面を傷つけにくい。深穴加工の分野では、大径域を受け持つBTA加工と並ぶ代表的な工法として使われている。
工具の構造
ガンドリルは、刃先を含む先端部分の「刃部」、刃部と主軸をつなぐ「シャンク」、主軸に取り付けられる「ドライバー」の3つの部分で構成される。刃部には外刃と内刃があり、刃先の反対側にはガイドパッドと呼ばれる突起が付いている。
ガイドパッドは加工中に穴の内壁へ軽く接触し、工具自身の位置を穴の中心軸に沿わせる役割を持つ。このガイドパッドの働きによって、細長い工具でも穴が曲がりにくくなる。シャンクにはV字の溝があり、切削油とともに運ばれてきた切りくずをこの溝から効率よく機外へ排出する。
工具の種類
ガンドリルにはいくつかの派生形状がある。標準タイプは先端刃の径を変えることで様々な穴径に対応でき、汎用性が高い。オイルホールを三日月形状にして切削油量を確保したタイプは、切りくずの排出をより安定させる。
ガイドパッド部分を標準より長くしたタイプは、工具の直進性が高まり穴曲がりを抑えやすい。すくい面に突起や溝を設けてチップブレーカとしての機能を持たせた高送りタイプは、切りくずの分断性が向上し、標準タイプの2〜3倍の送り速度でも精密な加工が可能になる。
BTA加工との違い
深穴加工の工法としては、ガンドリル加工とBTA加工が並んで挙げられる。両者の到達精度に大きな差はなく、使い分けの軸は穴径である。ガンドリルは小径・細穴が得意で、BTAはそれより大きい中径から大径を受け持つ。
切削油の流れも逆になっている。ガンドリル加工では工具内部の油穴から刃先に切削油を送り、切りくずは工具外周のV溝を通って手前に排出される。BTA加工は外側から給油して内側から排出するため、流路断面を大きく取れ、大径や高送りに向く。実務上の境目の一例として、深江特殊鋼(BTA・ガンドリル加工.com運営)では穴径φ32以下をガンドリル加工、φ33以上をBTA加工で対応している。
主な用途
自動車のプレス金型スペーサーブロック、船舶用エンジン部品、鉄道車両のシャフト、工作機械のスピンドル、産業機械の熱板など、長い穴を持つ部品に幅広く使われる。材質はSS材・S45C・SCM440などの構造用鋼を中心に、ステンレス鋼や工具鋼、銅合金、アルミニウム合金、耐熱・耐食合金まで対応例がある。
傾斜穴や交差穴のような専用工具・専用機が要る形状にも対応できる点が、マシニングセンタでの一般的な穴あけとの違いである。ワークを傾けて固定する治具設計や、切りくずが長くつながりやすい粘りのある材質でのノウハウが加工品質を左右する。
ガンドリル加工の対応範囲の目安
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 対応穴径 | φ4〜32 | 深江特殊鋼の保有設備における実績範囲 |
| 最大加工長 | 1,500mm | 設備・材質により変動 |
| 最大ワークサイズ | 1,290×2,200 | 設備依存 |
※ 対応範囲は深江特殊鋼の保有設備での実績値。境界域(φ32〜33付近)は個別確認が必要。
よくある誤解
✕ ガンドリル加工はBTA加工より精度が高い、あるいは低い。
○ 到達精度に大きな差はない。使い分けの軸は精度ではなく穴径で、小径はガンドリル、中径〜大径はBTAが受け持つ。
✕ ガンドリルはまっすぐな穴しかあけられない。
○ ワークを専用の治具で傾けて固定すれば、素材に対して斜めに入る傾斜穴も加工できる。ただし専用工具とワークセットのノウハウが必要で、一般的な横型マシニングセンタでの加工より工程設計の比重が大きい。
✕ 切りくずが長くつながる材質でも、送り速度を上げれば排出性が改善する。
○ 送り速度だけでなく送り量や工具形状(チップブレーカの有無)との組み合わせが排出性を決める。銅合金のように粘りのある材質は切りくずが分断されにくく、工具側の対策が別途要る。
よくある質問
ガンドリル加工とBTA加工はどちらが安く済みますか?+
小径で深い穴(例: φ4×400mm)は加工できますか?+
斜めに入る穴(傾斜穴)も対応できますか?+
どんな材質に向きますか?+
関連用語
出典
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