DLCコーティングとは
読み: でぃーえるしーこーてぃんぐ
DLCコーティングとは、ダイヤモンドライクカーボン(非晶質の炭素膜)を主成分とする硬質皮膜を工具や金型の表面に成膜し、高硬度と低摩擦を両立させる表面処理である。
概要
DLCはDiamond-Like Carbonの略で、ダイヤモンドに似た炭素の結合構造と、黒鉛に似た結合構造が混在した非晶質の炭素膜を指す。膜厚は数マイクロメートル以下と薄いが、高い硬度と低い摩擦係数を併せ持つのが特徴である。
この特性から、金型の摺動部や切削工具、樹脂成形金型のように、摩耗と凝着(材料が工具側にくっつく現象)の両方を抑えたい部位に使われる。
皮膜の特性
DLC皮膜は摩擦係数が低く、相手材との凝着が起きにくいため、離型性(成形品が金型から離れやすい性質)の改善や、切削工具での構成刃先の抑制に効果がある。
一方で皮膜が薄いため、下地の面粗さや硬度が皮膜の性能に直接影響する。下地が粗いまま成膜すると、皮膜自体の性能を十分に発揮できないため、成膜前の下地仕上げが重要になる。
成膜方法
DLCコーティングは、真空中でイオン化した炭素源を対象物表面に堆積させるPVD(物理蒸着)や、化学反応を利用するCVD(化学蒸着)などの方法で成膜される。成膜には一定の温度がかかるため、下地材質の耐熱性(焼戻し温度)によっては、成膜温度を下げた方式を選ぶ必要がある。
複雑形状や穴の内部への成膜は、蒸着源から見える範囲(視野)に制約があるため、形状によって膜厚が不均一になりやすい点に注意が必要である。
適用範囲と注意点
樹脂成形金型のキャビティ・コア、プレス金型の摺動部、切削工具の刃先など、耐摩耗性と低摩擦性の両方が求められる部位に使われる。TiN等の金属系コーティングに比べ摩擦係数が低く、樹脂や軽金属の凝着抑制に優れるとされる。
一方で高温環境や強い衝撃荷重には金属系コーティングより弱い場合があり、用途に応じてコーティング種類を選ぶ必要がある。
よくある誤解
✕ DLCコーティングをすれば、下地の面粗さは関係なくなる。
○ 皮膜が薄いため下地形状をほぼそのまま反映する。下地の面粗さが粗いままでは皮膜の低摩擦性能を十分に発揮できず、成膜前の下地仕上げの精度が仕上がりを左右する。
✕ DLCコーティングはどんな材質・形状にも均一に成膜できる。
○ PVD・CVDとも蒸着源から見える範囲に制約があり、深穴や複雑な内部形状では膜厚が不均一になりやすい。形状によっては成膜が難しい部位が出るため、事前に対象形状を伝える必要がある。
✕ DLCコーティングはTiNコーティングより常に優れている。
○ 摩擦係数の低さや凝着抑制ではDLCが優れる場面が多いが、高温環境や高い衝撃荷重への耐性はTiN等の金属系コーティングの方が有利な場合がある。用途に応じた選定が必要である。
よくある質問
DLCコーティングはどの部品に向いていますか。+
深穴の内部にもDLCコーティングはできますか。+
成膜前の下地仕上げはどの程度重要ですか。+
関連用語
出典
- ダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜のPVD・CVD成膜に関する一般的な表面工学の知識
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