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BTA加工とは

読み: びーてぃーえーかこう

BTA加工とは、専用のボーリングバーとBTAヘッドを用い、高圧の切削油で切りくずをバー内部から排出しながら深穴をあける切削加工である。名称はこの方式を規格化した団体 Boring and Trepanning Association に由来し、穴径に対して深さが5倍を超える深穴(L/D>5)を高い真直度と面品位で加工するために使われる。

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概要

穴あけ加工では、切りくずの排出が品質と効率を決める。一般的なマシニングセンタとツイストドリルの組み合わせでは、穴が深くなるほど切りくずが穴の中に滞留しやすくなり、排出性を優先した工具形状にすると今度は工具剛性が落ちる。実用上、ツイストドリルで対応できる深さは穴径の30倍程度が目安で、それを超える深穴や高い真直度が要る穴では専用工法が必要になる。

BTA加工はこの問題を、切削油の流路設計で解決した工法である。切りくずは穴の内面に触れずにボーリングバーの内部を通って機外へ出る。このため深い穴でも内面を傷つけにくく、剛性の高いバーで送りをかけられるため加工能率も高い。深穴加工の分野では、小径域を受け持つガンドリル加工と並ぶ代表的な工法として使われている。

原理と構造

BTA加工の切削油は、次の経路で循環する。

1. タンク内の切削油をポンプで加圧する 2. 高圧の切削油がプレッシャーヘッドに送られる 3. 切削油が穴の内壁とボーリングバー外周のすき間を通って刃先に到達する 4. 刃先で発生した切りくずを含んだ切削油が、ボーリングバーの内部を通って戻る 5. 切削油は切りくずと分離されてタンクに戻る

つまり切削油は「外側から入って内側から出る」。切りくずが加工済みの穴内面に接触しないため内面品位を保ちやすい、というBTA加工の特長はこの流路から来ている。刃先を保持するBTAヘッドにはガイドパッドが付いており、加工中は穴の内壁を基準にヘッド自身を支える。これが深い穴でも真直度を維持できる理由である。

ガンドリル加工との違い

深穴加工の工法としては、BTA加工とガンドリル加工が並んで挙げられる。両者の到達できる精度に大きな差はなく、使い分けの軸は穴径である。ガンドリルは小銃(gun)の銃身加工のために開発された経緯のとおり小径・細穴が得意で、BTAはそれより大きい中径から大径を受け持つ。

切削油の流れも逆になっている。ガンドリル加工では工具内部の油穴から刃先に切削油を送り、切りくずは工具外周のV溝を通って手前に排出される。BTA加工は前述のとおり外側から給油して内側から排出するため、流路断面を大きく取れ、大径や高送りに向く。

実務上の境目の一例として、深江特殊鋼(BTA・ガンドリル加工.com運営)では穴径φ32以下をガンドリル加工、φ33以上をBTA加工で対応している。

加工方式の種類

BTA加工には3つの加工方式がある。

ソリッドボーリング加工は、無垢の素材にそのまま深穴をあける方式で、最も一般的なBTA加工である。

トレパニング加工は、中心部に芯材を残して環状に切削する方式である。大径の穴をあける場合に使われ、切削量が少なく済むほか、残った芯材を別の用途に使える。

カウンターボーリング加工は、既に穴があいている素材やパイプ状の素材の穴を拡げる方式である。既存穴の面粗度や精度を上げたい場合にも使われる。

主な用途

長い貫通穴・止まり穴を持つ回転体や構造部品が主な対象である。代表例は、工作機械のスピンドル(例: SCM440・穴径φ118)、ドローチューブ(例: S45C・外径φ190×長さ1,280mmにφ160を貫通)、油圧シリンダのチューブ、産業機械の中空シャフト(例: SCM415・φ27×加工長630)、圧延ロール、燃料ポンプ部品(例: S25C・φ106)など。自動車、造船、油圧機器、工作機械といった業界で使われる。

材質は構造用炭素鋼・合金鋼(S45C、SCM440等)を中心に、ステンレス鋼、工具鋼、銅合金、アルミニウム合金、耐熱合金まで対応例がある。ただし切りくずが分断されにくい低炭素鋼(S25C等)は刃物に絡みやすく、材質ごとの切削条件ノウハウが品質を左右する。

加工径・加工長の目安

対応範囲は設備に依存するが、実務の目安として深江特殊鋼の保有設備における対応範囲を下表に示す。マシニングセンタ(ツイストドリル)との比較を含む。

深穴加工の前工程として、黒皮材のままではなく旋盤・フライスで基準面を先に作っておくと、穴の位相合わせと後工程の工数短縮につながる。素材調達から前加工・深穴加工までを一貫で行うかどうかも、精度とリードタイムに効く要素である。

深穴加工の工法別対応範囲の目安

工法対応穴径最大加工長の目安備考
BTA加工φ33〜26513,000mm(最大加工サイズφ600×13,000)中径〜大径。高送りが可能
ガンドリル加工φ4〜321,500mm小径・細穴。最大ワークサイズ1,290×2,200
マシニングセンタ(ツイストドリル)汎用穴径の約30倍までL/D30超は工具剛性・切りくず排出で困難

対応範囲は深江特殊鋼の保有設備での実績値。設備・素材・形状により変わるため、境界域は個別確認が必要。

よくある誤解

マシニングセンタでも深穴はあけられるので、専用工法は不要である。

ツイストドリルの実用限界は穴径の30倍程度。それを超える深さでは切りくず排出と工具剛性が両立せず、面粗度や真直度が悪化する。L/Dが大きい穴はBTAまたはガンドリルが標準的な選択になる。

BTA加工はガンドリル加工より高精度である。

到達精度に大きな差はない。使い分けの軸は精度ではなく穴径で、小径はガンドリル、中径〜大径はBTAが受け持つ(実務上の境目の一例はφ32/φ33)。

深穴とは、単に「深い穴」のことである。

一般に、穴径に対して深さが5倍を超える穴(L/D>5)を深穴と呼ぶ。深さの絶対値ではなく径との比率で定義される。φ4×400mm(L/D=100)のような細穴も、φ160×1,280mmの大径穴も深穴である。

よくある質問

どの穴径からBTA加工になりますか?+
設備によりますが、実務上の境目の一例はφ33です。深江特殊鋼ではφ32以下をガンドリル加工、φ33〜265をBTA加工で対応しています。境界付近の径は素材・深さ・精度要求によってどちらが適するか変わるため、個別に確認するのが確実です。
BTA加工でどのくらいの深さまであけられますか?+
設備依存ですが、最大加工サイズφ600×13,000mmの実績設備があります。深さの絶対値よりもL/D(穴径に対する深さの比)と要求精度の組み合わせで難易度が決まります。
どんな材質に対応できますか?+
S45C・SCM440などの構造用鋼を中心に、ステンレス鋼、工具鋼、銅合金、アルミニウム合金、耐熱・耐食合金まで加工例があります。切りくずが分断されにくい低炭素鋼などは材質固有の条件設定が必要です。
素材が黒皮のままでも加工できますか?+
可能な場合もありますが、深穴加工の前に旋盤・フライスで基準面を作っておくと、穴の位相合わせの精度が上がり、後工程の工数も減ります。素材調達と前加工を深穴加工とまとめて依頼できるかは、リードタイムに影響します。

関連用語

出典

  1. BTA・ガンドリル加工.com 技術コラム「深穴加工とBTA・ガンドリル方式について」(深江特殊鋼)
  2. BTA・ガンドリル加工.com 技術コラム「BTA加工の流れ」「BTA加工の種類」「BTA加工とガンドリル加工との違いについて」(深江特殊鋼)
  3. 深江特殊鋼 保有設備一覧(BTA加工機・ガンドリル加工機)

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