防爆機器の部品加工はどこまで外注できるか、発注前に何を確認すべきか?
防爆機器の部品加工は、まず対象部品が型式検定に合格した設計の一部かどうかを確認します[2]。合格済み設計の部品は、接合面やねじの寸法、材料、表面処理を加工側の判断で変更できないため[5]、図面どおりの再現(寸法公差と面粗度の指定を含む)が発注条件になります。検定と関わらない部品や申請前の試作は、通常の精密部品と同じ判断で外注できます。
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対象部品が型式検定とどう関わるかが分からない段階でも、機器名と分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!検定上の位置づけの確認から一緒に進めます。
まず確認すること
防爆機器の部品加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、その部品の検定上の位置づけです。型式検定に合格した機器の部品なら、接合面やねじの寸法は合格の前提になっており、加工側が公差や材料を提案し直す余地がありません[5]。深江特殊鋼は、この位置づけの確認から入り、図面と数量をうかがったうえで対応可否と見積を回答します[14]。
納期が遅れやすいポイント
- 加工先のサイトに「防爆対応」の記載が見つからず、そもそも部品単位の加工外注が検定の制度上どこまで許されるのかから分からない。[2]
- 長年の加工先が廃業し、検定合格済み機器の交換部品を作れる先が無くなった。合格内容に無い代替品の使用は合格条件違反になるため、市販の同等品で済ませる逃げ道もない。[6][10]
- 図面にある接合面のすきまや面粗度Ra6.3μmの指定がどの規格から来ているのか分からず、公差緩和を頼んでよいのかどうか判断できない。[3]
- 検定申請前の試作と合格後の量産部品で、加工先に許される提案の範囲が変わることを知らないまま、同じ聞き方で見積を依頼してしまう。[4]
- IECExやATEXが前提の海外向け図面と、国内の型式検定が前提の図面で、要求の読み方が変わることに気づかないまま発注を進めてしまう。[7][8]
Q. なぜ防爆機器の部品は、寸法も材料も加工側の判断で変えられないのか?
A. 型式検定が図面込みで機器を合格させる制度であり、防爆性能に関わる寸法や材料の変更は合格の条件から外れる行為になるためです。図面の寸法公差も材料の指定も、検定に通った型式の一部として扱われます[2][4]。 危険場所で使う電気機械器具は、労働安全衛生法で型式検定が義務付けられた17種類の機械等の一つで、登録型式検定機関の検定に合格しなければ譲渡も貸与も設置もできません[2]。合格すると、合格証の有効期間内はその型式を数量の制限なく製造できます[2]。ここだけ見れば、製造側に有利な仕組みに見えます。ただし量産の自由には、合格した構造を守り続ける義務が付いてきます。 では、合格後にどこまで変えられるのでしょうか。認められているのは社名や型式の名称といった記載事項までで、それも変更から14日以内の届出が要ります[5]。防爆構造そのもの、爆発等級、発火度、温度等級といった防爆性能に関わる事項は、変更が認められていません[5]。この線引きの厳しさは、TIISの検定FAQの回答に表れています。製造中止になった電子部品を合格内容に無い代替品で置き換えて製造することは合格条件違反になる、ケーブルも合格証に記載されたもの以外は使えない、という回答です[6]。 名指しされているのは電子部品とケーブルなので、機械加工の部品は別枠だと読みたくなります。そう読めない理由が、申請図面の側にあります。型式検定の申請図面には、接合面の寸法、ねじの寸法、固着長さ、容器肉厚まで記載することが求められており[4]、機械加工部品の寸法も検定を通った図面の一部だからです。そのため交換部品や追加製作の外注は、同等品でよいかを加工側と相談する話ではなく、合格時の図面を寸法も材料もそのまま再現する話になります。変更の要否を判断できるのは型式を保有する機器メーカー側で、加工側が公差を丸めて提案する余地はありません。
Q. 耐圧防爆容器の接合面やねじ部には、どんな数値が指定されているのか?
A. 国際整合技術指針(JNIOSH-TR-46-2:2018)が、接合面の奥行きとすきま、面粗度Ra6.3μm以下、ねじのはめ合い5山以上といった数値を定めており、図面の指定値の多くはここから来ています[3]。 耐圧防爆構造は、容器の内部にガスが入って爆発しても、容器が圧力に耐え、外部のガスに火炎で点火させない全閉構造と定義されています[1]。これを成り立たせるのがふたと本体の接合部(フレームパス)で、奥行きLは表の最小値以上、すきまiはどの箇所でも表の値以下という形で管理されます[3]。つまりすきまは、狙い値のまわりに振れてよい寸法公差ではなく、どこを測っても超えてはならない上限値です。数値の幅も一定ではありません。たとえば奥行き25mmのフランジ接合部なら、グループIIA(内容積100cm³以下)で0.40mm以下、すきまの許容が最も小さいグループIICでは内容積2,000cm³超で0.04mm以下と、ガスと内容積の区分で1桁変わります[3]。 接合面の仕上げにも規定があります。面粗度(平均粗さRa)は6.3μm以下とされ、接合面への塗料や粉体塗装は認められません[3]。防食グリースや電気めっきは認められますが、めっきは皮膜厚さ0.008mm(8μm)以下なら追加の検討が不要という条件付きです[3]。ふたを固定するねじを通す穴が接合面にある場合は、穴の縁までの距離にも奥行きに応じて6mmから9mmの下限があります[3]。 ねじで組む接合部も同様です。円筒ねじでピッチ0.7mm以上、はめ合いのねじ山5山以上、はめ合い長さは内容積100cm³以下で5mm以上、それを超える容器で8mm以上が求められます[3]。ケーブルなどを引き込むねじ穴には、メートル雌ねじで公差域6H以上、入口の面取りは深さ2mm以内という指定まであります[3]。 容器の材料にも規定があり、鋳鉄はISO 185で品質150以上、亜鉛を80%以上含む合金は容器に使えません[3]。市販品の実例でも、耐圧防爆形電磁開閉器の容器は本体が鋼板製、ふたが形式により鋳鉄製または鋼板製と、型式ごとに材料が決まっています[9]。一方、細部まで数値で縛ってきた指針も、容器の肉厚には一律の規格値を置かず、申請図面に個別の設計値として記載し、耐圧試験の合格で裏付ける決まりです[4]。 これだけ指定が細かく決まっていると、よほど高精度の加工が要るように見えます。実際には、これらの数値は精密加工の水準として特別に細かいわけではありません。面粗度Ra6.3μmは、深江特殊鋼が真空機器のシール面加工で常用する精密研削のレンジ(Ra0.1〜1.6、寸法精度±0.005mm)より粗い側にあります[12]。難しさは仕上げの細かさよりも、ガスグループと内容積の区分で決まったすきまと奥行きを、図面から一切動かさずに作り込んで検査で示す管理の側にあります[3]。
Q. 深江特殊鋼に防爆機器の部品加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 検定上の位置づけの確認から入り、図面と材料条件がそろえば、対応可否と見積を回答します[14]。 最初に確認するのは、対象部品が(1)型式検定に合格した機器の部品か、(2)検定申請前の試作か、(3)検定と関わらない周辺部品か、という位置づけです。同じ図面でも、この位置づけで相談の進み方が分かれます。合格済み設計の部品なら、寸法も材料も図面どおりが前提になり、変更が絡む相談は機器メーカー側での検定手続きの確認が先になります[5]。申請前の試作や検定対象外の部品なら、公差や工程を加工側から提案できる、通常の精密加工として進められます[2]。 平面研削と円筒研削、マシニング、旋盤の設備を持ち、精密研削には真空機器のシール面加工で公開しているRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmの数値があります。接合面の面粗度と平面の管理は、この工程能力を物差しにして判断します[12]。接合面と同種の面精度管理では、コバール気密封止パッケージの封止面を平面度0.003mm、面粗度Ra0.2で仕上げた公開事例があります[15]。規格が求める面粗度Ra6.3μmに対して、工程能力には十分な余裕があります[3]。鋳物の素材手配や大物加工、表面処理を含む案件も、国内認定パートナー150社超のネットワークで、材料と精度、ロット、納期の4軸に合わせて一括で受けます[14]。 交換部品の相談には、加工条件より手前の事情が絡むことがあります。長年の加工先が廃業し、図面だけが手元に残っている場合です。全国の中小企業の後継者不在率は52.1%(2024年、全産業の統計)で、後継者難による倒産は2024年1月から10月だけで455件あります[10]。この統計だけなら、どの調達部品にも共通する話です。検定済み設計では事情が一段重くなります。合格内容に無い代替品への置き換えが利かないため[6]、市販の同等品で欠品を埋める選択肢が最初からなく、残る道は同じ図面と同じ材料での再現発注になります。過去の検査成績書が残っていれば、その判断は早くなります。二次発注先を先に用意しておくデュアルソース化も、切り分けて相談できます[13]。
図面で見ておきたい条件
- 相談の最初に、対象部品が型式検定に合格した機器の部品かどうかをお知らせください。合格済み設計の部品は、寸法も材料も表面処理も図面どおりが前提になり、加工側から公差の緩和や材料の代替を提案できません[5][6]。
- 接合面(フレームパス)は、ガスグループと内容積の区分で許容すきまが変わります。図面の数値(奥行きとすきまのmm値、面粗度Ra6.3μm以下)に加えて、対象ガスのグループ(IIA、IIB、IICなど)が分かると、管理条件の確認が早く進みます[3]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と検定上の位置づけを確認してから回答します。
- 型式検定に合格した設計の部品について、寸法、材料、表面処理の変更可否を加工側で判断することはできません。変更を伴う相談は、型式を保有する機器メーカーでの検定上の手続き確認が先になります[5][6]。
- 型式検定の申請や取得の代行は行っていません。加工側が担うのは、申請図面に記載された寸法と面粗度の実現と、注文時に取り決めた検査記録の提出までです[4]。
業界での実機事例(参考)

コバール気密封止パッケージの精密加工
S45C大型ブロックの6面フライス+マシニング加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
型式検定に合格した機器の交換部品を、1個だけ作ってもらえますか?+
元の加工先が廃業していて、図面しか残っていません。それでも依頼できますか?+
接合面の面粗度や公差を、加工しやすい値に緩和してもらうことはできますか?+
検定申請前の試作容器の加工も頼めますか?+
材質が鋳鉄やアルミのハウジングでも対応できますか?+
型式検定の申請や取得を代行してもらえますか?+
IECExやATEXを前提にした海外向けの図面でも見てもらえますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
検査成績書や測定データは付けてもらえますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] 電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号)
- [2] TIIS: 機械等の検定制度の概要
- [3] JNIOSH-TR-46-2:2018 工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針) 第2編 耐圧防爆構造"d"
- [4] TIIS: 防爆構造電気機械器具 型式検定の手引き(申請の手続き一般)
- [5] TIIS: 型式検定合格後の合格証記載事項変更手続き
- [6] TIIS: 検定FAQ(製造中止部品の代替品の取扱い)
- [7] IECEx System(爆発性雰囲気機器の国際認証制度)公式サイト
- [8] ATEX指令 2014/34/EU(EU-OSHA解説ページ)
- [9] 戸上電機製作所: 耐圧防爆形電磁開閉器 製品ページ
- [10] 帝国データバンク: 全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
- [11] 防爆電気機器の構造と点検(1)(Safety & Tomorrow No.165、日本電気制御機器工業会防爆委員会)
内部事例
- [15] 加工事例: コバール気密封止パッケージの精密加工
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