振れ公差とは
読み: ふれこうさ
振れ公差とは、JIS B 0021で定める幾何公差の一つで、対象となる部品をデータム軸線を中心に回転させたとき、指定した位置で表面がどれだけ振れる(変位する)かを許容範囲として規定するものである。
概要
シャフトのように回転して使われる部品では、実際に回転させたときの表面のブレが機能上重要になる。真円度や同軸度がそれぞれ単独の特性を評価するのに対し、振れ公差は部品を実際にデータム軸線周りで回転させ、測定点にダイヤルゲージなどを当てたときの変位量として評価する、より実測に近い公差である。
このため振れ公差の値には、真円度・同軸度・偏肉といった複数の要因が複合的に影響する。振れ公差を満たすには、これらの個別要因をそれぞれ抑える必要があり、振れ公差だけを見て単一の原因を特定するのは難しい場合がある。
円周振れと全振れ
振れ公差には円周振れと全振れの2種類がある。円周振れは、部品を回転させたときの1つの円周上(1断面)での振れ幅を規定する。全振れは、部品を回転させながら測定子を軸方向にも動かし、円筒面や端面全体にわたる振れ幅を規定する、より厳しい評価である。
円周振れは各断面ごとの局所的な精度を、全振れは対象面全体を通した総合的な精度を保証する。要求される機能に応じて、どちらの振れを指定するかが決まる。全振れは円周振れよりも多くの要因(真直度や円筒度も含む)に影響されるため、一般的に達成の難易度は高くなる。
真円度・同軸度との関係
振れ公差は、真円度(断面の丸さ)、同軸度(軸線どうしのずれ)、偏肉(肉厚のばらつき)など、複数の形状・位置公差が組み合わさった結果として現れる。振れ公差を単独で厳しく指定しても、その裏付けとなる真円度や同軸度の管理ができていなければ達成は難しい。
実務では、機能上まず振れの許容値を決め、そこから逆算して真円度や同軸度にどこまでの精度が必要かを工程設計に落とし込む、という順序で扱われることが多い。図面に振れ公差だけが書かれている場合、加工先は経験に基づいてどの工程要因を重点的に管理するかを判断することになる。
長尺シャフト加工での振れ
長尺のシャフトや大径のスピンドルの加工では、部品の長さゆえに、加工中の保持方法(チャッキング、振れ止めの使用)が振れに直結する。深江特殊鋼の技術コラムでも、長尺シャフト加工でよく相談される課題として、振れやしなり、たわみ、歪み、反り、曲がりなどにより、同軸度や円筒度、振れ公差、内径寸法、面粗さといった精度を出すことが難しいという点が挙げられている。
こうした問題への対策として、専用治具によるチャッキング方法の工夫や、断続切削ではなく連続切削を選ぶといった加工方法の見直しが行われる。振れ公差を厳しく要求する長尺部品では、加工方法そのものが精度を左右するため、発注段階で要求精度と加工可否をすり合わせておくことが望ましい。
よくある誤解
✕ 振れ公差を厳しく指定すれば、それだけで真円度や同軸度も自動的に良くなる。
○ 振れ公差は真円度・同軸度・偏肉など複数の要因が複合した結果として現れる特性であり、振れ公差の数値を厳しくするだけでは達成できない。裏付けとなる個別の形状・位置精度を管理する工程設計が必要になる。
✕ 円周振れと全振れは同じ意味で使ってよい。
○ 円周振れは1断面での振れを、全振れは軸方向も含めた面全体の振れを規定するもので、評価範囲と難易度が異なる。図面では要求する機能に応じてどちらかを明確に区別して指示する必要がある。
✕ 長尺シャフトの振れは、素材や工具さえ良ければ加工方法によらず抑えられる。
○ 長尺部品では加工中のチャッキング方法や振れ止めの使用、連続切削か断続切削かといった加工方法自体が振れに大きく影響する。素材・工具だけでなく工程設計まで含めて振れ対策が検討される。
よくある質問
振れ公差はどんな部品に指定されますか?+
円周振れと全振れ、どちらを指定すべきか迷います。+
長尺シャフトの振れ公差を発注時に相談する際、何を伝えればよいですか?+
関連用語
出典
- JIS B 0021(製図-幾何公差表示方式)
- BTA・ガンドリル加工.com 技術コラム「長尺シャフト加工におけるよくあるトラブルと対策」(深江特殊鋼)
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