マルエージング鋼とは
読み: まるえーじんぐこう
マルエージング鋼とは、炭素をほとんど含まずニッケルを多量に添加した低炭素高ニッケル鋼を、マルテンサイト化と時効処理の組み合わせによって超高強度化した特殊鋼である。
概要
「マルエージング」は、マルテンサイト(martensite)とエージング(aging、時効処理)を組み合わせた造語である。通常の高強度鋼が炭素量を増やして焼入れ硬化させるのに対し、マルエージング鋼は炭素をほとんど含まず、ニッケルを多量に(グレードによっては18%前後)添加した鋼を、まず軟らかいマルテンサイト組織にしてから時効処理で硬化させる。
この製法により、炭素鋼の焼入れ材を上回る引張強さを得ながら、同時に高い靭性も維持できる点が特徴である。
熱処理変形が小さい理由
炭素鋼の焼入れは急冷によってマルテンサイト変態を起こすため、体積変化と急激な温度勾配により寸法変形や割れのリスクを伴う。一方マルエージング鋼は、固溶化熱処理後の冷却で生じるマルテンサイト自体が軟らかく、この時点ではほとんど変形が生じない。
強度を上げる工程は、その後の時効処理(比較的低い温度での加熱保持)によるニッケル化合物の析出で行われるため、急冷を伴わず熱処理による寸法変化が小さい。精密な寸法精度が要求される部品を、機械加工後に時効処理で高強度化する使い方に向いている。
主な用途
超高強度と低歪みを両立できる特性から、航空宇宙用の構造部品、ロケットのモーターケース、精密金型の一部、工具などに使われる。機械加工を先に済ませてから時効処理で強度を作り込む工程を取れるため、複雑形状の部品でも仕上げ寸法を管理しやすい。
価格面では高ニッケル添加のためコストが高く、一般構造用鋼に比べて採用は限定的である。要求強度が特に高く、かつ熱処理変形を抑えたい部品に絞って選定される材質である。
よくある誤解
✕ マルエージング鋼は炭素鋼の焼入れ材と同じ仕組みで硬化する。
○ 炭素鋼は炭素量を利用した焼入れマルテンサイトで硬化するが、マルエージング鋼は低炭素マルテンサイトを時効処理で硬化させる。時効処理による析出強化が主体であり、炭素による硬化ではない。
✕ 高強度鋼は熱処理で必ず歪む。
○ マルエージング鋼は固溶化・マルテンサイト化の段階では変形が小さく、その後の時効処理も急冷を伴わないため、通常の焼入れ鋼より熱処理変形を抑えやすい。
よくある質問
マルエージング鋼はなぜ寸法が狂いにくいのですか。+
マルエージング鋼はどんな部品に使われますか。+
機械加工と時効処理はどちらを先にすべきですか。+
関連用語
出典
- マルエージング鋼の析出硬化機構に関する一般的な金属材料知見(低炭素高ニッケル鋼の時効硬化)
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