金属部品調達のチャイナリスクに、どこから備えるべきか?
チャイナリスクを一つの塊で評価せず、費用、材料規格と検査書類、供給の途絶に分けて確認します。関税率は発注者側で動かせませんが、図面の公差指示と検査証明書の等級は自社で決められます。[1][3]
Meta-Navi bridge
Meta-Naviの海外調達ネットワーク記事から相談へ進む
図面や具体的なアイデアがなくてもOK!現在の調達先へ出している図面、直近の受入検査記録、月産数量のうち手元にあるものだけで確認を始められます。とりあえず相談してみることで、費用、材料規格と検査書類、供給の構成のどこから手を付けるかを整理できます。
まず確認すること
中国調達の書類で最初に効くのは、ミルシートが届くかどうかではありません。ミルシートは発行元の工場自身が作成する書類であり、それ単独では第三者による検証になりません。[6] EN10204の四つの等級のうち、第三者の署名を伴うのはType 3.2だけです。しかもType 3.2を発行できるのは製造者自身に限られ、商社や卸は既に発行された書類の写しを渡すことしかできません。[1] 調達経路を商社に付け替えても、書類の検証強度は自動では上がりません。だからこそ、供給元を追加するときは証明書の等級と発行者を先に発注条件として決める必要があります。[1][6]
納期が遅れやすいポイント
- 関税や輸出管理の変更が報じられるたびに、自社の部品がいくら影響を受けるか集計できていない[3]
- 単価は安いが、物流、受入検査、不良対応まで足した年間の実額を出したことがない[3]
- 同じ図面で発注しているのに、供給元を変えると仕上がりの公差が変わる[2]
- ミルシートは届くが、その数値を誰が検証したのかを確認する手順が社内にない[1][6]
- 供給が止まったとき、材料の入手経路まで含めて代わりに出せる加工先の当てがない[5]
Q. チャイナリスクは、関税、材料規格と検査書類、供給の途絶のどれから確認すべきか?
A. 自社で数字にできる費用の集計から始めます。関税率や輸出管理の変更は制度側で決まりますが、受入検査と不良対応の実費、材料の入手経路は今日集計できます。[3] 海外調達の総費用は、単価のほかに材料の物流と関税、受入検査、不良対応、安全在庫、特急対応という区分に分かれます。社内の調達コスト試算では、年間10万個、単価差25円で250万円を節約したのに対し、物流と関税120万円、受入検査60万円、不良対応90万円、安全在庫30万円、特急対応40万円の合計340万円がかかり、年間90万円の増加に逆転しました。[3] この区分ができていれば、関税率が上がったときに何円増えるかは単価表を差し替えるだけで出ます。 費用の次に効くのは材料規格です。中国のGB/T規格と日本のJISは、名称の近い材料でも規定値が違います。JIS G3101のSS400は降伏点235N/mm²以上、引張強さ400〜510N/mm²であるのに対し、GB/T700のQ235Bは板厚16〜40mmで降伏点225N/mm²以上、引張強さ370〜500N/mm²です。[6] 同じ一般構造用鋼として発注していると、この差は受入検査ではじめて表に出ます。 供給の途絶は、三つのうちで最も洗い出しに手間がかかります。調達先を二社に分けても、その二社が同じ材料商社や同じ熱処理業者を使っていれば、上流の一点で同時に止まるからです。[5] 依存度の洗い出しは、一次サプライヤーの社名ではなく、材料の入手経路、熱処理の外注先、検査を誰が行うかまで下りて初めて意味を持ちます。[5]
Q. 中国調達を続けるか国内へ切り替えるかは、材料と公差と月産数量のどこで決まるのか?
A. 部品ごとに、どのリスクが致命的かで決まります。材料規格と公差等級、月産数量が決まらないうちは、価格差だけで判断が付きません。[4] 海外調達から国内へ戻した社内の6件を並べると、動機は一つではありませんでした。φ12×L28mmのSUM24L部品は供給網の逼迫、φ42×t7mmのSUS440C部品は品質と最小発注数量の過大、φ380×L5,600mmのSNCM815シャフトは納期、φ80×W18mmのSUJ2部品はコストと不良率、180×140×120mmのSUS630 H900部品は規制対応が動機でした。[4] 切替後、最小発注数量は500個から50個へ、SNCM815シャフトの納期は5か月から2か月へ変わっています。[4] 切替後の実測値も出ています。EVバッテリの温度センサハウジング(SUM24L、φ12×L28mm、公差±0.008mm)は、国内切替後に工程能力Cpk1.82、不良率0.08%、月産41,000個を24か月連続で維持しました。[7] 産業ロボットの関節に使う精密ベアリング内輪(SUJ2、φ80×W18mm、真円度0.0012mm)では、海外外注比で単価15%の削減とppm単位の不良率になりました。[8] この2件は「海外調達」「海外外注」として記録されています。[6][7] 材料と公差が近い案件かどうかを見たうえで、海外調達全般からの切替パターンとして参照してください。 逆に、国内へ戻さないほうが現実的な部品もあります。数メートルを超える長尺や大物、金属粉末射出成形の部品は、要求される公差を満たせる国内サプライヤーの選択肢が少なく、材料の投入量も多いため、海外調達を維持したほうが合う場合があります。[4][5]
Q. 調達先を追加するとき、図面の公差指示と検査証明書の等級に何を書き足せばよいか?
A. 普通公差の等級と、検査証明書の等級を書き足します。この二つは、暗黙の前提を文字にできる数少ない項目です。[1][2] 同じ図面でも供給元が変わると仕上がりが変わるのは、個別指示のない寸法をどこまで詰めるかが工場ごとの慣習に委ねられているからです。JIS B 0405は、金属の除去加工または板金成形で作る部品について、個別指示のない長さ寸法と角度寸法に精級f、中級m、粗級c、極粗級vの4等級の許容差を定めています。[2] 30〜120mmの寸法区分では、精級±0.15mm、中級±0.3mm、粗級±0.8mm、極粗級±1.5mmです。[2] 寸法が大きくなるほど等級の差は開きます。400〜1000mmの区分では、精級±0.3mmに対して極粗級は±4mmです。[2] 大物部品ほど、図面に等級を書かないまま供給元を追加したときの振れ幅が大きくなります。面取り部分の許容差は通常の長さ寸法とは別の表で規定されているため、図面レビューで見落としやすい項目です。[2] 書類側はEN10204の等級で指定します。Type 2.1は製造者が発行する文書のみ、Type 2.2は製造者の定常試験結果を添付、Type 3.1は製造部門から独立した検査員がそのロットの試験結果を証明し、Type 3.2は製造者と第三者が連名で署名します。[1] Type 3.2で立ち会う項目は、試験片の採取、機械試験、外観検査、表示の確認、寸法検査、非破壊検査、耐圧試験です。[1] すべての部品にType 3.2を求める必要はありません。圧力設備やエネルギー設備のように安全性の要求が高い部品に絞り、それ以外はType 3.1以下で運用する分け方ができます。[1] 証明書に記載できるのは発注者が指定した要求事項に対する適合であり、供給元の品質管理の成熟度を保証するものではないため、材料規格と公差の指定を先に固めておく必要があります。[1][2] 国内側の受け皿も同じ粒度で決めておきます。深江特殊鋼の加工協力先では、出荷前検査を寸法、幾何公差、粗さ、硬さ、非破壊検査、溶接検査の6区分で行い、ミルシートと熱処理証明書を電子発行しています。[6] 受け取る書類の形が国内側で決まっていれば、中国側から届く書類と同じ検査区分で比較できます。 当社のターゲット調達は、国内の認定加工パートナー150社超から要件に合う候補を3〜5社に絞り、同時見積りと比較レポートを出し、検査証明書を付けて納品する5段階の流れです。[9] ただし対象は国内サプライヤーであり、海外調達そのものは別枠の相談になります。材料手配を含むか支給材かで見積りの出し方が変わるため、中国側の既存取引を残したまま国内の第二調達先だけ立てる、という使い方が現実的です。[9]
図面で見ておきたい条件
- この2件の切替実例は「海外調達」「海外外注」として記録されています。工程能力と不良率の実測値は、材料と公差が近い案件かどうかを見たうえで、海外調達全般からの切替パターンとして参照してください。[7][8]
- GB/T規格とJISの成分と機械的性質の差として確認できているのは炭素鋼(SS400系、板厚16〜40mm)とSUS系までであり、アルミ、銅、チタンなどの非鉄材料には別途の検査確認が必要です。[6]
- EN10204の検査証明書が適用されるのは鋼板、棒鋼、鍛造品、鋳造品、管、線材、溶接棒であり、配管ユニットや圧力容器のような組立品には適用されません。組立品を調達している場合は、別の検証手段を決める必要があります。[1]
相談前に知っておきたいこと
- 深江特殊鋼自身も中国、韓国、台湾の協力工場を通じた海外調達を仲介しており、中国調達を一律に避けるべきという立場は取りません。部品ごとに費用、書類、供給の三点を数字にしたうえで、現状維持、部分切替、全量切替のどれを取るかの材料を出します。[6][9]
- 関税率の適用区分や輸出管理の該当判定そのものは、当社では判定できません。通関実務の担当者に確認していただく範囲であり、当社が扱えるのは材料規格、公差、検査の設計と、加工先の手配までです。[3][9]
- 切替後の単価と納期の絶対値は、材料規格、寸法、公差等級、月産数量が決まってから算出します。図面と直近の受入検査記録がそろえば、対応可否と見積りを回答します。[4][9]
業界での実機事例(参考)

SUM24自動車センサハウジングのスイス式旋盤加工

SUJ2精密ベアリング内輪の研削加工
よくある質問
図面や見積書がそろっていない段階でも相談できますか?+
中国の調達先をすべて切り替える前提でないと相談できませんか?+
関税率が自社の部品にいくら効くかを計算してもらえますか?+
検査証明書はどの等級を要求すればよいですか?+
現在の中国側サプライヤーへ、図面に公差等級を追記して伝えるだけでも効果はありますか?+
候補先の絞り込みと見積りには、どのくらいの日数で回答が出ますか?+
小ロットや試作でも相談できますか?+
海外調達そのものの代行は頼めますか?+
自社で加工していない材質や分野でも受けてもらえますか?+
既存の調達先の名前を出さずに相談できますか?+
部品点数が多く、どれから手を付ければよいか分かりません。+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [7] 事例: EVバッテリ温度センサハウジングの国内切替
- [8] 事例: 精密ベアリング内輪の海外外注から国内切替
このページの情報は役に立ちましたか?