SUS316Lとは
読み: えすゆーえすさんいちろくえる
SUS316Lとは、JIS G4303に定めるオーステナイト系ステンレス鋼のうち、SUS316の炭素含有量をさらに低く抑えた低炭素版の等級である。「L」はLow Carbon(低炭素)を表し、溶接時に生じる炭化物析出を抑えることで、溶接部の耐粒界腐食性を高めている。
概要
SUS316Lは、SUS316と同じくモリブデンを添加した耐食性の高いステンレス鋼だが、炭素量を低く抑えている点が異なる。ステンレス鋼は溶接時の熱影響でクロム炭化物が結晶粒界に析出し、その部分のクロム濃度が下がって腐食しやすくなる現象(鋭敏化)が起きることがある。SUS316Lは炭素量を抑えることでこの現象を抑制し、溶接後も安定した耐食性を保ちやすい。
溶接を伴う配管・容器・チャンバー部品や、高い清浄度・耐食性が要求される半導体製造装置の部品に使われることが多い材質である。
半導体装置部品での用途
半導体製造装置では、腐食性ガスや薬液に接する部品にSUS316Lが選ばれることが多い。ガスマニホールドブロックのように、内部に複数のガス配管経路を持つ部品では、深穴加工によって内部の流路を形成する。溶接を伴う組立部品では、溶接後の耐食性が長期の装置稼働における信頼性に直結するため、SUS316Lが標準的な選択肢になる。
こうした部品は流路の交差や分岐が複雑になりやすく、穴同士の位置関係(交差穴)や表面の清浄度(内面粗さ、パーティクル対策)まで含めて要求されることが、一般的な機械部品との違いである。
SUS316との使い分け、加工性
SUS316LとSUS316は、炭素量以外の基本組成が近く、切削加工の難易度もおおむね同等である。溶接を伴わない部品や、わずかに高い強度を優先したい部品ではSUS316が選ばれることもあるが、溶接部の耐食性が重要な用途ではSUS316Lが優先される。
加工性の観点では、SUS304・SUS316と同様に加工硬化と低熱伝導率という難削材としての性質を持つ。深穴・多孔加工では、切削油の供給条件と送り速度の管理に加え、穴同士が交差する複雑な流路では加工順序の設計も重要になる。
よくある誤解
✕ SUS316LはSUS316の下位互換で、強度が低いだけの材質である。
○ 炭素量を抑えたことで強度はわずかに下がるが、目的は溶接部の耐粒界腐食性の向上である。溶接を伴う部品ではSUS316Lのほうが長期的な信頼性で有利になる。
✕ 半導体装置部品はステンレスなら何でも同じ性能が出せる。
○ 半導体装置では腐食性ガス・薬液への耐性に加え、パーティクル対策としての表面清浄度も要求される。SUS316Lが選ばれるのは、こうした複合的な要求に対する実績があるためである。
よくある質問
SUS316LはSUS316とどう使い分けますか?+
SUS316Lのガスマニホールドブロックはなぜ深穴加工が必要ですか?+
SUS316Lは加工が難しいと聞きましたが、対応できますか?+
関連用語
- SUS316
- SUS304
- 交差穴
- マニホールドブロック
- 内面仕上げ加工
- トレーサビリティ
出典
- JIS G4303(ステンレス鋼棒)
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