リン酸塩皮膜処理とは
読み: りんさんえんひまくしょり
リン酸塩皮膜処理とは、鋼材表面をリン酸塩水溶液で化学反応させ、結晶状のリン酸塩皮膜を形成することで防錆性と塗装・潤滑油の密着性を高める表面処理である。
概要
鋼材の表面をリン酸塩を含む水溶液に浸すと、鋼の表面で化学反応が起こり、結晶状のリン酸塩化合物の皮膜が生成される。この皮膜は多孔質で、内部に微小な空隙を持つのが特徴である。
皮膜自体の耐食性はそれほど高くないが、皮膜の多孔質構造が塗料や油を保持しやすいため、塗装の下地処理や、潤滑油を保持させる下地処理として使われる。
黒染めとの違い
同じ鋼材の化学的表面処理として黒染め(四三酸化鉄皮膜)があるが、目的と皮膜の性質が異なる。黒染めは薄い酸化皮膜で寸法変化がほとんどなく、主に防錆と黒色の外観仕上げを目的とする。
リン酸塩皮膜処理は多孔質構造を活かして塗料や油を保持させることが目的であり、単独での防錆性能よりも、後工程(塗装・潤滑)との組み合わせで機能する処理である。
処理の役割と適用範囲
代表的な用途は、塗装前の下地処理(塗膜の密着性向上)と、冷間鍛造・伸線加工前の潤滑下地(皮膜が保持する油膜が焼付きを防ぐ)である。ねじ部品の防錆・潤滑を兼ねた表面処理としても使われる。
処理対象は主に鉄鋼材料で、アルミニウムなど他の金属には別の化成処理(クロメート処理等)が使われる。
実務での注意点
リン酸塩皮膜は薄いものの、寸法にわずかな影響を与えるため、極めて厳しい公差の面には処理後の仕上げ加工を検討する場合がある。また皮膜単独では屋外暴露のような厳しい腐食環境に耐えるほどの防錆力はなく、塗装や防錆油との併用が前提になる処理である。
発注時は、防錆目的か塗装下地目的か潤滑下地目的かを明確にしておくと、必要な皮膜の種類・工程が定まりやすい。
よくある誤解
✕ リン酸塩皮膜処理をすれば、それだけで十分な防錆になる。
○ 皮膜単独の防錆力はそれほど高くない。多孔質構造に塗料や防錆油を保持させることで機能する処理であり、塗装や油との組み合わせを前提に設計する必要がある。
✕ リン酸塩皮膜処理と黒染めは同じ目的の処理である。
○ 黒染めは薄い酸化皮膜による外観と防錆が目的、リン酸塩皮膜処理は多孔質皮膜による塗料・潤滑油の保持が目的であり、狙う機能が異なる。用途に応じて選ぶ処理である。
✕ アルミニウム部品にもリン酸塩皮膜処理をそのまま使える。
○ リン酸塩皮膜処理は主に鉄鋼材料向けの処理であり、アルミニウムなど他の金属にはクロメート処理などの別の化成処理が使われる。素材に応じた処理を選ぶ必要がある。
よくある質問
リン酸塩皮膜処理だけで屋外使用の防錆はできますか。+
黒染めとどちらを選べばよいですか。+
処理によって寸法は変わりますか。+
関連用語
出典
- 鉄鋼材料の化成処理(りん酸塩皮膜)に関する一般的な表面処理工学の知識
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