硬質クロムめっきとは
読み: こうしつくろむめっき
硬質クロムめっきとは、電気めっきによって鋼材表面に比較的厚いクロム皮膜を析出させ、耐摩耗性・耐食性・低摩擦性を高める表面処理である。
概要
クロムめっきには、外観を整える薄い装飾クロムめっきと、機能を目的として厚く付ける硬質クロムめっきの2種類がある。硬質クロムめっきは後者に当たり、皮膜厚さは用途に応じて数十マイクロメートルから数百マイクロメートル程度まで幅がある。
硬度が高く摩擦係数も低いため、繰り返し摺動する面や、腐食環境にさらされる面の保護に使われる。装飾用途とは狙いも膜厚設計も異なる処理である。
皮膜の特性と用途
硬質クロムめっきの皮膜は耐摩耗性・耐食性に優れ、相手材との摺動抵抗も小さい。代表的な用途は油圧シリンダのロッド、圧延ロールの表面、金型のパーティング面など、繰り返し摺動や腐食にさらされる部位である。
めっき皮膜には微細なクラックが入りやすい性質があり、腐食因子が入り込むとクラックを起点に下地まで腐食が進むことがある。皮膜厚さやクラックの管理は用途によって求められる水準が異なる。
めっき前後の加工工程
硬質クロムめっきは素材にそのまま厚く付けるため、めっき前の素材寸法はめっき厚み分だけ小さく仕上げておく必要がある。めっき前の面粗さは、めっき後の面粗さにほぼそのまま反映されるため、めっき前研磨で下地面を整えておくことが仕上がりを左右する。
めっき後は、厚み公差を狭める目的で研削仕上げを行うのが一般的である。めっきと研削を別業者にまたぐ場合は、加工基準の引き継ぎ方法を事前に決めておくと手戻りが減る。
無電解ニッケルめっきとの違い
同じ機能めっきでも、無電解ニッケルめっきは電流を使わない化学反応で析出させるため、複雑形状や穴の内部にも均一な膜厚が付きやすい。一方、硬質クロムめっきは電気めっきのため、電流密度の分布によって厚さにばらつきが出やすく、複雑な内部形状には不向きな場合がある。
硬さや摺動特性を優先するか、均一な膜厚を優先するかで、どちらの処理を選ぶかが変わる。
よくある誤解
✕ 硬質クロムめっきは装飾用のクロムめっきと同じものである。
○ 膜厚の設計思想が異なる。装飾クロムめっきは薄く外観を整える目的、硬質クロムめっきは耐摩耗性・耐食性という機能を目的に厚く付ける処理であり、同じクロムめっきでも別の工程として扱われる。
✕ めっきは素材寸法そのままの上に付ければよい。
○ めっき厚みの分だけ最終寸法が大きくなるため、素材段階でめっき厚みを見込んだ小さめの寸法に仕上げておく必要がある。見込みを誤ると、めっき後に公差から外れる。
✕ 穴の内面にも均一にめっきが付く。
○ 電気めっきは電流密度が形状によって偏るため、複雑な内部形状や深穴の奥では膜厚が薄くなりやすい。均一な内面皮膜が必要な場合は、電流を使わない無電解ニッケルめっきの方が適することが多い。
よくある質問
硬質クロムめっきはどのくらいの厚さで付けますか。+
めっき前の素材寸法はどう指定すればよいですか。+
深穴や複雑形状の内面にも硬質クロムめっきはできますか。+
関連用語
- 無電解ニッケルめっき
- 油圧シリンダチューブ
- 圧延ロール
- 表面粗さ
- 工具摩耗
出典
- JIS H 8615(工業用クロムめっき)
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