Meta-NaviProduced by 深江特殊鋼株式会社

形状記憶合金(ニチノール)の加工は、どこに何を伝えて依頼すべきか?

まず、材料をJIS T 7404のA種とB種のどちらで指定するか、Af温度をいくつに要求するか、切削で作るのかワイヤーカット放電加工で作るのかを先に決めます。[1][2] 深江特殊鋼では、この条件が決まった時点で、対応可否と見積を回答します。

確認項目を見る

Meta-Navi bridge

Meta-Naviで形状記憶合金の加工相談を続ける

図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。材料の種類、Af温度の目安、素材の形、必要な数量のうち、決まっている条件から相談できます。

まず確認すること

図面に「ニチノール」とだけ書かれていても、材料としてはA種かB種か、Af温度をいくつに要求するかで別物になります。[1] インプラント用のTi-Ni合金規格では、Af温度を37.0℃以下と定めています。[1] 体温付近で超弾性が出ることを材料側で決めているからです。[1] 加工側は、この条件が決まらないと除去速度も面粗度も見積もれません。[2]

材料: JIS T 7404のA種かB種か、Ni含有率53.5〜57.5質量%の指定、材料試験成績書の有無[1]
機能要求: Af温度の目標値と許容幅。インプラント用途では37.0℃以下が規格値です[1]
素材形状: 線、管、板、丸棒のどれか、外形寸法と肉厚をmm単位で[1]
加工方法: 切削で成立するか、ワイヤーカット放電加工が前提か、両方を組み合わせるか[2]
表面要求: 再鋳造層とマイクロクラックの許容、面粗度Raの上限値[2]
検査: 寸法公差の測定方法、Af温度の確認をどちらが行うか、報告書に載せる項目[1]

納期が遅れやすいポイント

  • 図面に「ニチノール」とだけ書かれ、材料の種類とAf温度が決まっていない[1]
  • 切削で削れるのか、ワイヤーカット放電加工でないと成立しないのかが判断できない[2]
  • 放電加工で出る再鋳造層とマイクロクラックを、どこまで許容するか決めていない[2]
  • 医療部品で要求される公差と面粗度に、加工先が実際に届くか確認できていない[3]
  • 自社設備で削れない材料の相談先が見つからず、材料手配から止まっている[5]

Q. なぜ形状記憶合金は普通の切削で作りにくいのですか?

A. 加工硬化しやすく強度が高いうえに、超弾性と形状記憶という機能そのものが、加工中の熱と工具からの力で変わるためです。[2] 形状記憶合金は、超弾性と形状記憶効果という二つの機能を持ちます。[2] NiTi系の従来切削は、加工硬化の傾向、高い強度、そして機能特性が機械的および熱的な損傷に敏感であることによって妨げられる、と査読論文では整理されています。[2] インプラント用のTi-Ni合金規格は、引張強さ800MPa以上、破断伸び8%以上、プラトーストレス300MPa以上、弾性ひずみ限界5%以上を材料の条件としています。[1] この強度域を、機能を壊さずに削り切る必要があります。[1][2] そこでNiTi系には、切削力をかけないワイヤーカット放電加工が使われます。[2] ただし放電も無傷ではありません。Ti50Ni40Co10(コバルトを加えたNiTi系合金)を黄銅ワイヤφ0.25mmで加工した実験では、パルスオン時間を長くしサーボ電圧を下げると材料除去速度が9.43mm³/minまで上がる一方、深いクレーター、マイクロクラック、厚い再鋳造層が出ています。[2] 条件を穏やかにすると面粗度はRa1.11μmまで良くなり、除去速度は1.5mm³/minまで落ちます。[2] 速さと表面性状が同時に取れないので、どちらを優先するかは図面の要求で決まります。[2] なお、この数値はコバルトを添加した合金での実験値です。二元系ニチノールの見込み値としてそのまま使うことはできません。[2]

Q. 依頼前に決めておく条件は何ですか?

A. 材料の種類、Af温度の要求値、素材の形、加工方法、そして加工後の表面をどこまで整えるかです。[1][2] インプラント用途なら、JIS T 7404がTi-Ni合金をA種とB種に分けています。[1] どちらもNiが53.5〜57.5質量%で残部がTiですが、B種には炭素0.08%以下、酸素0.08%以下、窒素0.05%以下、水素0.005%以下、鉄0.05%以下、コバルト0.05%以下という微量元素の上限が加わります。[1] 銅を加えた材料では、NiとCuの合計を53.5〜57.5%、Cuを3%から10%とする注記があります。[1] 図面の材料欄が「ニチノール」だけだと、この区別が決まりません。[1] 同じ規格は金属組織にも条件を置いています。300倍以上で観察し、Ti4Ni2Ox、TiC、Ti(C,N,O)といった介在物が、用途に対して有害な形状、大きさ、量で存在しないこととされています。[1] 一方でこの規格が決めているのは素材の化学成分、機械的性質、金属組織、そして検査と報告書の出し方までです。[1] 加工方法や加工後の寸法公差は含みません。[1] 表に無い元素や規定範囲外の機械的性質は受渡当事者間の協定によるとされているため、材料メーカーとの取り決め内容も確認対象になります。[1] 加工後の表面については、放電加工を選ぶなら再鋳造層とマイクロクラックの扱いを先に決める必要があります。[2] 除去するのか、残してよいのか、面粗度の上限をいくつにするのかが決まらないと、条件出しの目標が立ちません。[2] 医療部品では、この判断が検査項目と後処理の工程数に直結します。[3]

Q. 深江特殊鋼はニチノール加工をどこまで受けられますか?

A. 社内にあるのは、ワイヤーカット放電加工の設備と、医療分野の小径精密部品の実績です。ニチノールの対応可否と見積は、材料規格と要求精度が決まってから回答します。[3][4] 放電加工は寸法精度±0.005mm、最小ワイヤ半径R0.1mm、面粗度Ra0.8〜3.2を対応範囲として公開しており、導電性があれば硬さに依存せず加工できます。[4] ただし対応材料として登録しているのはSKD11、SUS440、インコネル、チタン、銅などで、Ti-Ni系は入っていません。[4] 医療分野の公開実績としては、CP-Ti Grade4の歯科インプラントフィクスチャがあります。外形φ5×L16の素材にφ1.6×L14mmの下穴をガンドリルで加工し、公差±0.01mm、SLA面のSa2.5μmで月産9,300本を12営業日で回しています。[3] 材質はチタンでニチノールではありません。ただしφ1.6mmの細穴と±0.01mmの公差を医療部品で継続して出している点は、要求水準との距離を測る材料になります。[3] 自社で削らない領域も、協力企業ネットワークを通じて対応範囲に含めています。たとえばスイス型自動旋盤による小径部品はφ1〜32mm、寸法精度±0.005mmで対応していますが、これは自社設備ではなく協力企業ネットワークを通じた対応です。[5] 形状記憶合金も同じ扱いになる可能性があります。材料の種類と要求精度が決まった時点で、対応可否と費用を回答します。[1][5]

図面で見ておきたい条件

  • ワイヤーカット放電加工の対応範囲は寸法精度±0.005mm、最小ワイヤ半径R0.1mm、面粗度Ra0.8〜3.2で、登録材料にTi-Ni系は含まれていません。[4]
  • スイス型自動旋盤による小径部品はφ1〜32mm、寸法精度±0.005mmですが、これは協力企業ネットワークを通じた対応です。[5]
  • JIS T 7404が規定するのは素材の化学成分、機械的性質、金属組織、検査と報告書までで、加工後の寸法公差や表面の判定基準は含みません。[1]

相談前に知っておきたいこと

  • 除去速度と面粗度の見込み値は、材料の種類とAf温度、素材形状が決まり、試し加工の結果が出てから提示します。[2][3]

関連するものづくりトピックス

業界での実機事例(参考)

CP-Ti歯科インプラント用深穴ガンドリル加工の加工写真

CP-Ti歯科インプラント用深穴ガンドリル加工

gundrillswiss-turningsurface-treatmenttitanium
Ti-6Al-4V医療用ロッドのガンドリル加工の加工写真

Ti-6Al-4V医療用ロッドのガンドリル加工

gundrill5axistitanium
SUS316L医療用骨ねじのスイス式旋盤加工の加工写真

SUS316L医療用骨ねじのスイス式旋盤加工

swiss-turningsurface-treatmentsus304

よくある質問

図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
相談できます。材料の種類、Af温度の目安、素材の形(線、管、板、丸棒)、必要な数量のうち、決まっているものだけで確認を始められます。図面や具体的なアイデアがなくても、現物の写真や手書きメモから条件を整理します。
形状記憶合金の加工実績はありますか?+
医療分野ではチタンとステンレスの小径部品を継続して加工しており、ワイヤーカット放電加工の設備も社内にあります。ニチノールについては、材料規格と要求精度を確認したうえで、対応可否と見積を回答します。
切削では加工できないのですか?+
形状によっては切削も成立します。ただしNiTi系は加工硬化しやすく、加工中の機械的および熱的な損傷で超弾性や形状記憶の特性が変わることが指摘されています。板材や丸棒からの輪郭抜きであれば、ワイヤーカット放電加工のほうが条件を作りやすくなります。
放電加工で出る再鋳造層はどう扱いますか?+
加工条件によって厚さが変わります。除去速度を上げる条件では再鋳造層が厚くなり、マイクロクラックも出やすくなります。図面で許容値が決まっていれば、それに合わせて条件を落とします。除去が必要な場合は、後処理を別工程として組みます。
材料の手配もお願いできますか?+
材料手配を含めた相談を受けています。ただしTi-Ni材は在庫していないため、規格の種類とAf温度の要求値が決まってからの調達になります。支給材で進めていただく形でも構いません。
Af温度は発注側で指定する必要がありますか?+
用途によります。インプラント用のTi-Ni合金規格では、Af温度を37.0℃以下と定めています。体温付近で超弾性を使う部品なら、この値を材料側の条件として指定してください。医療以外の用途なら、動作させたい温度域を伝えていただければ材料メーカーと詰めます。
見積の回答までにどのくらいかかりますか?+
材料の種類、素材形状、加工形状、公差、数量が揃っていれば、対応可否と費用を回答します。条件が欠けている場合は、まず欠けている項目をお伝えします。
試作1個から相談できますか?+
相談できます。ニチノールは加工条件が表面性状に効く材料なので、量産前に試し加工で面粗度と寸法の実力値を確認する進め方を勧めています。数量が少ない段階では、材料の最小購入単位が費用に効きます。
海外で加工していたニチノール部品を国内に切り替えたいのですが相談できますか?+
相談できます。現物、既存図面、受入検査の記録があると、どの条件を再現する必要があるかが絞れます。材料規格が不明な場合は、成分と機械的性質の確認から進めます。
検査はどこまでお願いできますか?+
寸法検査は加工先で行います。Af温度や引張特性の確認は材料試験の領域なので、材料メーカーの試験成績書を使うか、外部の試験機関に出すかを案件ごとに決めます。規格では、同一の溶解と加工条件のロットから採取した2個以上の試験片で試験することとされています。

あわせて読みたい情報

参考事例・文献

このページの情報は役に立ちましたか?

Meta-Navi bridge

ここまでご覧いただいた方へ

条件が固まっていなくても大丈夫です。図面や仕様が手元になくても、まずはMeta-Naviにご相談ください。