食品機械の部品加工を外注する前に、衛生設計の何を確認すべきか?
食品機械の部品加工は、まず対象部品が食品接触部(接液部)かどうかを確認します[2]。接触部の部品は、面粗度とコーナー半径、継手の段差0.2mm以下といった衛生設計の数値が図面の前提になり、材質にも含有量の法規制が掛かります[3][5]。非接触の構造部やフレームは、通常の機械部品と同じ判断で外注できます。
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対象部品が食品接触部かどうか分からない段階でも、部品名と分かっている条件だけで送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!区分の確認から一緒に進めます。
まず確認すること
食品機械の部品加工の外注で最初に決まるのは、加工方法ではなく、その部品が食品に接触するかどうかの区分です。接触部なら、面粗度の推奨値(Ra0.8μm以下)や材質の含有量規制が図面の前提に入ってきます[3][5]。深江特殊鋼は、SUS304の食品用サニタリーバルブボディを内面Ra0.3で仕上げた公開事例を持ち[15]、区分と図面指定の確認から入って、対応可否と見積を回答します[14]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面に内面Ra0.8μmの指定があるが、JIS B 9650-2を引いても具体的な数値が見つからず、指定の出どころも緩和の相談先も分からない。[2][3]
- 2025年6月にポジティブリスト制度が完全施行され、樹脂部品の適合確認は進めたものの、金属部品にはどの規制が掛かるのか、境界が整理できていない。[6]
- ハンダ付けやロウ付けを含む部品で、鉛0.1%やアンチモン5%という告示370号の上限に触れないかどうか、材質選定の段階で判断できない。[5]
- 2021年のHACCP義務化以降、洗いにくい部品の見直しを衛生管理計画の側から求められるが、面粗度とコーナーRをどの数値で発注すればよいか決めかねている。[9][3]
- 発注側の食品製造事業者の約98%は従業者300人未満の中小企業で、専任の保全や調達の体制を置きにくく、摩耗部品の交換のたびに加工先探しから始めることになる。[10]
Q. 図面のRa0.8μmやコーナーR3mmという指定は、どの規格から来ているのか?
A. 多くはJISではなく、EHEDGなど衛生設計指針の推奨値です。JIS B 9650-2は洗浄できる構造とデッドスペースの回避を要求しますが、Ra0.8μmのような面粗度の数値は規定していません[2]。 食品機械の設計の土台には、JIS B 9650があります。第1部が安全設計基準で、工場で商用の食料品を量産する機械を対象に、巻込みや切傷などの危険源を、本質的安全設計、保護装置、取扱説明書の3段階でリスク低減目標まで下げることを求めます(家庭やレストランの厨房機械は対象外です)[1]。第2部が衛生設計基準で、食品接触部の材料に無毒性と耐食性、非吸収性を求め、洗浄と清掃ができる構造、デッドスペースの回避を要求します[2]。 ここで冒頭の疑問に戻ります。図面のRa0.8μmは、このJISのどこに書いてあるのか。実は、書いてありません。JIS B 9650-2は表面粗さのパラメータにRa(JIS B 0601)を用いることが望ましいとするだけで、数値そのものは規定せず、食品が飛散する部位は接触部の値より大きくてよい、という相対的な言い方までです[2]。数値の出どころは指針側にあります。欧州の衛生設計団体EHEDGのガイドラインには、ステンレスの製品接触面はRa0.8μm以下、135°以下の内角は最小半径3mm以上(90°以下の鋭角は避ける)、自然排水のため水平面を避けて片側3°以上の勾配、取り外し可能な継手の段差は0.2mm以下、エラストマーの圧縮率は20〜25%まで、という推奨値が並びます[3]。一方、乳業系のIDF規格の基準としてはRa0.63μm未満という別の値が紹介されており[4]、団体によって数値が違います。図面がどの基準を採っているかは、図面だけを見ても分かりません。 数値の先には試験があります。EHEDG認定試験所の洗浄適正評価試験は、63℃の洗剤溶液を流速1.5m/sで10分間流し、耐熱性の芽胞菌を使った培養(58℃)で洗い残しを判定します[3]。日本食品分析センターは2023年にこの認定試験所として認められています[3]。認証制度としては、液体で洗浄する機器向けのType ELと乾式洗浄機器向けのType EDがあり、初回発行500ユーロ、年間延長150ユーロ、5年ごとの更新という体系です[7]。米国向けには3-A SSIという別のサニタリー規格体系があり、2018年にANSI規格として承認されています[8]。 発注側にとってこの二層構造が効くのは、公差の緩和を相談できる相手が変わる点です。法規と告示から来る指定(材質の含有量など)は動かせません。EHEDG系の推奨値(面粗度やコーナー半径)は機器メーカーの設計判断なので、緩和の可否を決めるのは加工側ではなく設計側です[3]。見積の場では、指定の出どころが一つ分かるだけで、詰めるべき条件の順番が決まります。
Q. 食品接触部の材質と表面処理は、法規で何が決まっているのか?
A. 金属は含有量の上限、樹脂はポジティブリストです。食品衛生法の下の告示370号が、食品接触部の金属に鉛0.1%以下かつアンチモン5%未満などの上限を定めています[5]。 金属の規制は「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)の第3にあります。器具は銅または鉛とこれらの合金が削り取られるおそれのある構造であってはならない、食品接触部の製造や修理に使う金属は鉛0.1%以下かつアンチモン5%未満、メッキ用スズは鉛0.1%以下、ハンダは鉛0.2%以下、という条文です[5]。名指しされているのは鉛とアンチモンと銅なので、この規制が効いてくるのは、快削鋼や青銅系合金、ハンダ付けやロウ付けを含む部品を選ぶ場面です[5]。電流を直接食品に通す装置の電極には、鉄、アルミニウム、白金、チタン以外の金属は使えないという材質の限定もあります(食品を流れる電流が微量ならステンレスも認められます)[5]。 樹脂は別の制度で決まります。2018年の食品衛生法改正で導入されたポジティブリスト制度が、食品用器具の合成樹脂を対象に、リストに載っていない原材料を原則使えない仕組みへ変えました。2020年6月に施行され、5年の経過措置が2025年5月31日で満了し、いまは完全施行の下にあります[6]。新規物質は食品への溶出量が0.01ppm未満であることが使用可能の条件で、販売先への適合の説明義務には罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)まで付いています[6]。制度の適用対象は合成樹脂に限られるため、金属の加工部品にこの制度は直接掛かりません[6]。 つまり同じ1台の機械でも、パッキンやガイドの樹脂部品はポジティブリストの確認経路、金属部品は告示370号の含有量とJIS系の衛生設計という、別々の経路で材質が決まります。図面の材質欄にSUS304やSUS316Lが指定されている案件で見積の論点になるのは、含有量そのものより、材料証明(ミルシート)の要否と電解研磨のような表面処理の指定です[5]。加工側が代わりに決められない項目(樹脂の適合、食品接触部への銅合金の使用可否)は、見積の前に機器メーカー側での確認をお願いすることになります。
Q. 深江特殊鋼に食品機械の部品加工を相談すると、何がどこまで進むのか?
A. 食品接触部の区分と図面指定の出どころの確認から入り、材質と数量がそろえば、対応可否と見積を回答します[14]。 最初に確認するのは、対象部品が(1)食品接触部か、(2)洗浄水や食品が飛散する部か、(3)非接触の構造部か、という区分です。JIS B 9650-2自体が、飛散部の表面粗さは接触部の値より大きくてよいと区分で扱いを分けており[2]、同じ機械の部品でも、区分で図面の読み方と見積の条件が変わります。接触部なら面粗度と材質証明を前提条件として扱い、構造部なら通常の機械部品として公差や工程を加工側から提案できます。 接触部の面粗度には、到達値の物差しがあります。SUS304の食品用サニタリーバルブボディでは、内面Ra0.4以下という要求に対し、加工硬化を考慮した切削条件を組み、マシニングから旋盤、研削へ工程を分けて面粗度を段階的に上げ、電解研磨仕上げで内面Ra0.3に到達した公開事例があります(φ80×L120、ボア公差H6、月産50個)[15]。精密研削の対応レンジはRa0.1〜1.6、寸法精度±0.005mmで、EHEDGが推奨するRa0.8μm以下に対して工程能力に余裕があります[12][3]。ガスケット溝やシール面の図面指定は、溝底面Ra0.4程度という目安を含めてOリング溝の加工ページに整理しています[12]。ノズルや攪拌軸のような深穴部品は、材質、穴径、深さ、公差、検査、納期という確認条件から詰めます[13]。素材の調達や大物の製缶加工、電解研磨のような表面処理を含む案件も、国内認定パートナー150社超のネットワークで、材料と精度、ロット、納期の4軸に合わせて一括で受けます[14]。 相談の入り方には、食品業界側の事情が映ります。2021年6月から、HACCPに沿った衛生管理が原則すべての食品等事業者に義務化されました[9]。HACCPは衛生管理計画の制度で、設備の改修を直接義務付ける条文ではありません[9]。ただ、計画を作ると洗浄手順と設備の構造が対応づくため、洗いにくい部品や液溜まりは計画の側から見えるようになります。食品機械の販売額は2024年に6,346億円(前年比5.0%増)と3年連続で過去最高を更新しており[11]、設備の更新と増設は続いています。一方で発注側の食品製造事業者は、約98%が従業者300人未満の中小企業です[10]。専任の設備担当を置きにくい規模の工場から、摩耗した攪拌翼やシール部品の交換の相談が図面の固まりきらないまま届くのは自然なことで、部品の現物と測定できる寸法、材料の見込みから条件を整理する段階でも進められます。交換部品は単品から見積できます。
図面で見ておきたい条件
- 相談の最初に、対象部品が食品接触部かどうかと、図面の面粗度指定の出どころ(規格名や社内基準)をお知らせください。接触部の部品は、面粗度と材質、表面処理の指定を前提条件として扱います[2][3]。
- 継手の段差0.2mm以下のような組立後の要求は、単品加工の寸法公差へ落とし込む必要があります。相手部品の図面や組立図があると、公差の割り付けの確認が早く進みます[3]。
相談前に知っておきたいこと
- 対応可否と費用は、図面と食品接触部の区分を確認してから回答します。
- EHEDG認証やサニタリー適合の証明は機器と機器メーカーに対する制度で、加工会社が発行するものではありません。加工側が担うのは、図面に指定された寸法と面粗度の実現と、注文時に取り決めた検査記録の提出までです[7]。
- 樹脂部品のポジティブリスト適合を加工側で判定することはできません。制度の対象は合成樹脂の原材料で、適合確認には素材側の情報が要ります[6]。
業界での実機事例(参考)

SUS304食品機械用バルブボディのマシニング加工

銅合金粉粒体機器ライナーのガンドリル加工
よくある質問
図面が固まっていない段階でも相談できますか?+
材料証明(ミルシート)は付けてもらえますか?+
内面Ra0.8μmやRa0.4といった面粗度指定には、どこまで対応できますか?+
電解研磨やバフ研磨などの表面処理まで含めて頼めますか?+
ステンレス以外の材質(銅合金や樹脂)の部品も依頼できますか?+
摩耗した交換部品を1個だけ作ってもらえますか?+
ラインが止まっていて急いでいます。納期はどれくらいで回答できますか?+
EHEDG認証やサニタリー適合の証明書を加工側で出せますか?+
3-A SSIなど海外規格を前提にした図面でも見てもらえますか?+
見積のとき何を伝えると初回の回答が早くなりますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
- [1] JIS B 9650-1:2011 食料品加工機械の安全及び衛生に関する設計基準通則 第1部: 安全設計基準
- [2] JIS B 9650-2:2011 食料品加工機械の安全及び衛生に関する設計基準通則 第2部: 衛生設計基準
- [3] 食品製造機械に求められる衛生設計〜EHEDGの指針及び認証について〜(JFRLニュース Vol.7 No.28、日本食品分析センター)
- [4] 食品機械の衛生とは?衛生設計の基礎知識(木本技術士事務所)
- [5] 食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号) 第3 器具及び容器包装(消費者庁掲載の抄録)
- [6] 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(消費者庁)
- [7] EHEDG Certification — Everything you want to know about certification(EHEDG公式)
- [8] ANSI/3-A 00-01-2018 — 3-A Sanitary Standard for General Requirements(プレビュー版)
- [9] HACCPに沿った衛生管理の制度化(厚生労働省)
- [10] 省力化投資促進プラン(食品製造業)(農林水産省、令和7年6月13日)
- [11] 食品機械販売額が3年連続増 過去最高を更新(マシニスト出版、一次統計は日本食品機械工業会)
内部事例
- [15] 加工事例: SUS304食品機械用バルブボディのマシニング加工
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