ESC(モータ制御ユニット)の筐体と放熱部品は、発注前に何を確認すべきか?
ESCはモータの回転を制御する電子ユニットを指す略称で、その筐体は放熱部品を兼ねることが多い部品です。発注前は、放熱を筐体のどこに担わせるか、素子の取付面にどの平面度と面粗度を要求するか、素材を押出形材から取るかブロックから削り出すかの三つを先に確認します。[1][2]
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筐体の条件を整理して相談へ進む
図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。素子の発熱量、筐体のおおよその外形、想定数量だけ先に共有いただければ、放熱の担わせ方と加工の対応可否を一緒に確認できます。
まず確認すること
ESCという略称は、モータの回転を制御する電子ユニットを指す場合と、車両の横滑り防止装置を指す場合があります。お問い合わせの際にどちらかを書き添えていただけると、確認が早く進みます。モータ制御用の筐体では、筐体の壁そのものを放熱体として使う構成が取られることがあり、東芝の熱設計資料は、絶縁樹脂の筐体と全6面に1mm厚のアルミ板を持つ筐体を比べ、筐体を放熱体に使う構成が冷却に有効だとしています。[2] 加工側で決まるのは、その熱の通り道になる面の平面度と面粗度、壁の板厚、そして形材の公差等級です。[1]
納期が遅れやすいポイント
- 放熱を筐体の壁に担わせるのか、別体のヒートシンクに担わせるのかが決まらないまま、外形図だけで見積を取ることになります。どちらにするかで壁の板厚も取付面の要求も変わります。[2]
- 素子の取付面に平面度と面粗度の指定がなく、熱伝導材の当たり方が組立の段階まで確認できません。[2]
- アルミ押出形材の曲がりとねじれを機械加工で取り直す前提なのかどうかが、図面から読み取れません。[1]
- 内部に冷却流路を通したいものの、流路の径が細くなったときにどの工法へ切り替わるのかが分かりません。[5]
Q. 筐体そのものを放熱体として使う場合、加工側では何が決まるのか?
A. 素子から筐体の壁へ熱を渡す面の平面度と面粗度、そして壁の板厚と材質が決まります。[2] 筐体を放熱体として使う構成では、素子と筐体壁の間に熱伝導材を挟み、電気的に絶縁したまま熱を壁へ渡します。東芝の熱設計資料は、絶縁樹脂の筐体(120×200×40mm)と、全6面に1mm厚のアルミ板を持つ筐体(140×200×40mm)を比べ、筐体を放熱体に使う構成が冷却に有効だとしたうえで、同等の結果を得るには筐体の材料選定が要ると述べています。[2] 熱伝導材は素子と壁の隙間を埋めて熱を渡す材料なので、当たり面が反っていれば隙間の量が場所ごとに変わります。加工側で指定していただきたいのは、この当たり面の平面度と面粗度です。壁の板厚と材質も、放熱の効き方を左右する条件として先に決まっている必要があります。[2] 筐体の内側にどこまでボスやリブを立てられるかも、熱の側から制約を受けます。同資料は、発熱する素子をファンとグリルの間の気流経路上に置くこと、ファンの直前に大きな部品を置かないこと、グリルの開口が大きいほど筐体内部の全体が冷えることを挙げています。[2] 素子の位置とファンの向きが先に決まっていると、加工する開口とボスの位置を後から動かさずに済みます。 なお、同資料の温度上昇や熱抵抗の具体値は図表の画像として示されており、数値としては読み取れていません。放熱量の見積りは、素子の発熱量と筐体寸法が決まってから、材料メーカーの熱伝導率データと合わせて扱います。[2]
Q. 押出形材から取るのか、ブロックから削り出すのかで何が変わるのか?
A. 押出のまま残す面の公差が、JIS H 4100の等級で決まるか、機械加工で決まるかが変わります。[1] JIS H 4100は押出形材の断面寸法の許容差を普通級と特殊級の2等級で規定しています。外接円直径250mm以下で指定寸法3.20以下の区分では、普通級±0.23mm、特殊級±0.15mmです。外接円直径250〜800mmの区分では普通級±0.54mm、特殊級±0.36mmとなり、角度の許容差は普通級±2度、特殊級±1度です。曲がりとねじれも等級ごとに数値が規定されています。[1] 放熱フィンの付いた形材を買って端面と取付面だけを機械加工する場合、フィン側の曲がりとねじれは形材の等級のまま製品の公差に残ります。図面に普通級と特殊級のどちらかを書くか、フィン側も機械加工で取り直すかを決めていただくと、材料の手配と工程が同時に決まります。[1] ブロックから削り出す場合は、フィンのピッチと高さが工具の届く範囲で決まります。薄いフィンを高く立てるほど工具の逃げと振動が出やすくなるため、フィン形状は放熱側の要求だけでなく、加工側の条件と突き合わせて決めます。この判断には、素材が押出形材か板材かブロックかの別が先に要ります。[1] 検収の側では、JIS H 4100は外観と寸法の検査に加えて、分析試験、引張試験、硬さ試験、曲げ試験、導電率試験、応力腐食割れ試験を挙げています。どこまでを受入検査として要求するかを図面と一緒に決めておくと、見積の前提が揃います。[1]
Q. 内部に冷却流路を通す場合、工法はどこで切り替わるのか?
A. 流路の径で切り替わります。直線の流路は径4〜32mm、最大深さ1,500mmまでがガンドリルの対応レンジで、径がおおむねφ1.5mmを下回ると放電加工などへ移ります。[5] ガンドリルは工具の内部から切削油を送り、切粉を穴の外へ押し出しながら進みます。径が小さくなるとこの油路と切粉の通り道が確保できなくなるため、同じ深さでも工法が変わります。アルミでは送りと切削油の条件が合っていればL/D比100:1程度までが目安です。[5] 交差流路を持つアルミ部品の公開事例では、A6061-T6のブロック(250×180×120mm)に径10〜20mmの流路を14本、3層の交差配置で加工し、公差±0.02mm、面粗度Ra1.6で仕上げ、35MPaで30分保持する圧力試験を全数合格させています。交差部のバリは熱を使うバリ取り装置で処理し、1個あたりの手作業を45分から4分に短縮しました。月産90個、納期8営業日です。[3] この事例は産業ロボット向けの油圧マニホールドブロックであり、ESCの筐体ではありません。共通するのはアルミの交差穴と漏れ確認を一つの工程として見る点で、放熱フィンの加工やシール面の作り込みはこの事例からは読めません。[3] 小型の電子部品ハウジングの側では、SUM24Lの車載温度センサハウジング(φ12×L28mm)で内径同軸度0.008mm、工程能力Cpk1.82、月産41,000個、不良率0.08%という公開事例があります。材質は快削鋼で、放熱フィンを持つ部品ではありません。ESC筐体と近いのは、寸法の小ささと量産数量の側です。[4]
図面で見ておきたい条件
- アルミ押出形材から取る場合、断面寸法の許容差は普通級と特殊級の2等級に分かれます。外接円直径250mm以下で指定寸法3.20以下の区分では普通級±0.23mm、特殊級±0.15mm、外接円直径250〜800mmの区分では普通級±0.54mm、特殊級±0.36mmです。押出のまま残す面は機械加工で取り直さないため、この等級がそのまま製品の公差になります。[1]
- 直線の冷却流路はガンドリルで、径4〜32mm、最大深さ1,500mmまでが対応レンジです。流路の径がおおむねφ1.5mmを下回ると、工具の内部から切削油を送って切粉を押し出す方式が成立しにくくなり、放電加工などへ切り替わります。[5]
相談前に知っておきたいこと
- アルミの多流路ブロック[3]と小型の電子部品ハウジング[4]を近い条件として参照しています。外形や放熱フィンの形が変われば工程も納期も事例とは変わるため、対応可否と納期は図面と数量が決まってから回答します。
- アルミ合金の熱伝導率は、参照したJIS H 4100が化学成分と寸法の許容差を対象とする規格のため、この規格からは決まりません。放熱量の試算に使う値は、材質と質別が決まってから材料メーカーのデータで確定させます。[1]
業界での実機事例(参考)

A6061油圧マニホールドブロックのマシニング加工

SUM24自動車センサハウジングのスイス式旋盤加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
ESCという略称のまま問い合わせても伝わりますか?+
自社で削らない加工でも相談できますか?+
アルミの材質はどう決めればよいですか?+
取付面の平面度はどこまで詰める必要がありますか?+
放熱の計算まで依頼できますか?+
試作1個だけでも受けてもらえますか?+
アルマイトなどの表面処理まで手配できますか?+
納期はどのくらいですか?+
海外で調達している筐体を国内へ切り替える相談もできますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [3] Meta-Navi 事例: A6061油圧マニホールドブロックのマシニング加工
- [4] Meta-Navi 事例: SUM24自動車センサハウジングの精密旋盤加工
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