電池ケースの加工を発注するとき、産業用と車載用の筐体では何を先に決めるべきか?
電池ケースは一つの部品ではなく、構造フレームと上蓋と底板と冷却プレートが別々の工法で作られる組物です。[2] 弊社にご相談いただくとき先に確認するのは、どの部位の話か、シール面をどこに置くか、材料をダイカスト品から取るか無垢材から削り出すかの三つです。[1][2]
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電池ケースの条件を整理して相談へ進む
図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。どの部位の話か、おおよその外形、想定数量、漏れ試験の要否だけ先に共有いただければ、対応可否と見積を確認できます。
まず確認すること
電池ケースの図面で最初に問題になるのは、材質でも公差でもなく、どの部位を指しているかです。EVの電池パックでは、上蓋、構造フレーム、冷却プレート、底板の4部位が別々の工法で作られ、求められる材料もそれぞれ違います。[2] 弊社が担当するのは素材を作る工程ではなく、その素材から合わせ面とシール溝と取付穴を削る工程、そしてその手配です。[5] 部位が決まらないうちは、工法も納期も返せません。
納期が遅れやすいポイント
- 「電池ケース一式」で見積を依頼すると、構造フレームと底板と上蓋で必要な工法も材料も違うため、各社の回答が同じ条件で並びません。[2]
- 溶接で組んだ筐体で漏れが出た場合に、シール面をどう作り直せば効くのかが図面の条件だけでは判断できません。[3]
- ダイカスト品を受け入れる側の検査基準(割れや鋳巣の可否、補修の可否)が図面に書かれていないため、素材メーカーと基準を揃えられません。[1]
- 筐体の外形が大きい場合に、どこまでの寸法なら1台の機械で削れるのかが分かりません。[5]
Q. 電池ケースは、なぜ部位ごとに工法と材料と公差の決まり方が変わるのか?
A. 部位ごとに担う役割が違うからです。衝突時にセルを守るフレームと、密閉してシール面を持つ上蓋では、必要な強度と成形性が逆を向き、選ぶ材料も分かれます。[2] アルミ製の電池パック筐体は、上蓋、構造フレームと補強材、冷却プレート、底板の4部位に分かれ、それぞれ求められる材料が違います。上蓋は成形性の高いアルミ板を絞って作り、密閉と客室側への熱の遮断を担うため、シール面はこの部位に来ます。構造フレームと補強材は押出形材が中心で、衝突時にセルへの侵入を防ぐため、高い強度と高い延性の両方が要ります。冷却プレートはろう付板か押出形材で、底板に組み込まれる場合もあります。底板は路面からの突き上げと飛石を受けるため、フレームと同じく高強度かつ高延性の合金が要ります。[2] 合金の選び方も、この役割の違いをそのまま映します。6000系は熱処理型で成形性と耐食性のバランスが良く、塗装焼付けや後工程の熱処理で強度が上がります。5000系は熱処理では強くならず、冷間加工で強度を出します。7000系は最も高強度ですが、冷間成形性が限られ、熱間成形と焼入れの工程が要り、応力腐食割れの懸念があるため、量産車の材料としてはまだ使われていないとされています。[2] 系統が決まると、どの面を素材のまま残し、どの面を機械加工で公差に入れるかも決まります。 底板では、5754のO材を基準にすると、6111のピーク時効材で約30%の軽量化ができ、7075-T6や開発中の弾性率80GPa級の4xxx系材料なら40%まで見込めるとされています。ただし後者の2つは、この資料の時点で量産供給ではなく開発段階の位置づけです。軽量化率は同じ吸収エネルギーになる板厚(mm)へ置き換えて評価されるため、板厚が決まらないと加工側の取り代も決まりません。[2] 弊社はダイカストや押出そのものの設備を持たず、素材から削る工程と、その手配を担当します。[5] そのため部位が決まると、材料の入手先をどこにするか、削るのはどの面か(合わせ面、シール溝、取付穴)が同時に決まります。
Q. 漏れを止めたい筐体で、シール面の公差は溶接と削り出しでどう変わるのか?
A. シール面と合わせ面の位置関係が、溶接の熱ではなく機械の公差で決まるようになります。ただし防水等級そのものは、この作り方だけでは決まりません。[2][3] 電池パックの筐体には、衝突時の強度に加えて、モジュールの防水シール、電磁シールド、車両寿命にわたる耐食性と接着の耐久性が同時に求められるとされています。ただし参照した設計資料はIP67のような防水等級の試験規格には触れていないため、等級の合否はこの資料からは決まりません。受入検査で等級まで見るなら、試験の方法を別に決める必要があります。[2] 弊社の公開事例で近いのは、EV駆動モータの水冷ジャケットハウジングです。以前は2部品を溶接して作っており、Oリング部からの漏れが1%の割合で出ていました。これをA6061-T6の素材かららせん状の水路と取付フランジを継ぎ目なく5軸で削り出す形に変え、漏れ不良は0%になっています。外形420×320×180mm、公差±0.03mm、面粗度Ra1.6、0.5MPaの圧力試験を全数インラインで実施し、月産2,550個を12か月続けています。[3] 継ぎ目をなくすと漏れが減るのは、溶接ビードの熱で母材がひずみ、Oリングが当たる面の平面度が場所ごとに変わるからです。シール材の潰れ量は当たり面の平面度と面粗度で決まるため、ひずんだ面では潰れの浅い場所から先に漏れます。削り出しに変えると、シール面と組付け面を同じ段取りで仕上げられるため、面同士の位置が溶接の熱で動きません。[3] この事例は駆動モータの水冷ジャケットであって、電池ケースそのものではありません。共通するのはアルミ筐体で継ぎ目とシール面をどう作るかという工程の側で、電池パックに要求される絶縁や電磁シールドの条件と、その検査方法は、この事例からは読めません。[3][2]
Q. 大きな電池ケースを頼めるかどうかは、最大加工範囲2,200×4,000mmと要求公差のどちらで決まるのか?
A. どちらか一方では決まりません。削る面が1回の段取りで届くか、要求公差が機械の精度に収まるか、材料をどこから買うかの三つで決まります。[5] 弊社のマシニング設備は12台で、最大加工範囲は門型5軸機の2,200×4,000mmです。立形5軸機はテーブル630×φ800mmで、前述の420×320×180mmのハウジングはこの機械で加工しています。[5][3] 乗用車の電池パックのトレーのように1mを超える筐体についても、設備の仕様値と加工実績は別のものなので、外形寸法と要求公差をいただいた時点で、対応可否と見積を回答します。[5] 車載向けでは、EVシフトに伴うモーター用ハウジングやバッテリー冷却部品で実績を積んでおり、軽量化に向けたアルミの高速加工、強度側のSCMやSNCMの焼入れ処理、研磨やメッキや窒化処理までの二次加工を受けています。[6] なお自動車業界ではIATF16949の認証が求められますが、これは業界側の要求事項です。弊社の保有状況は個別に確認したうえでご回答します。品質要求と受入検査の水準は、図面と一緒に確認させてください。[6] 小さい側の目安としては、EVバッテリの温度センサハウジングの事例があります。SUM24Lでφ12×L28mm、内径同軸度±0.008mm、面粗度Ra0.4、月産41,000個、工程能力Cpk1.82、不良率0.08%、亜鉛めっき8μmです。[4] これは電池システムに付く小径部品であり、パックの外殻ではありません。「電池ケース」という言葉は、この規模の量産部品も1mを超える構造体も同じように指します。どちらの話かで、確認する寸法も数量も検査項目も変わります。[4]
図面で見ておきたい条件
- ダイカスト品を素材として受け入れる場合、JIS H 5302は図面に個別の公差指定がなければ寸法許容差にJIS B 0403を適用すると定めています。外観については、表面が平滑で有害な割れや鋳巣などの欠陥があってはならず、埋め金や溶接による補修も認めていません。受入検査の基準としてこの2点を図面側に書き写しておくと、素材メーカーとの取り決めが揃います。[1]
- ADC12はダイカスト用の合金記号として同規格に規定があり、化学成分はCu 1.5〜3.5%、Si 9.6〜12.0%、Fe 1.3%以下です。ただし引張強さや伸びのような機械的性質は同規格が数値を定めておらず、受渡当事者間の協定によるとしています。材料の強度要件は規格名ではなく発注仕様書側で個別に決める必要があり、受入検査で成分まで見るならミルシートの提出範囲も同時に決めます。[1]
- 水路や貫通穴を筐体に通す場合、シール面と穴の位置関係を1回の段取りで出せるかどうかで工程数が変わります。公開事例では、らせん状の水路と取付フランジを継ぎ目なく5軸で削り出して溶接工程をなくし、組立工数が18%減っています。[3]
相談前に知っておきたいこと
- 電池パックの構造ケースそのものについては、近い条件として、EV駆動モータの水冷ジャケットハウジング[3]と、EVバッテリの温度センサハウジング[4]を参照事例としています。部位と外形が変われば、工程も納期も事例のとおりにはならないため、対応可否と工程は図面と外形が決まってから回答します。
- 最大加工範囲2,200×4,000mmは設備の仕様値です。トレー級の筐体を含め、実際に受けられるかは、削る面の位置と要求公差を見てから判断します。[5]
- 弊社はダイカストや押出材そのものを作る設備を持たないため、材料の入手先が決まらないうちは筐体一式の納期を出せません。部位と材質と数量が決まった時点で、対応可否と納期を回答します。[5]
- 防水や気密の等級は、参照した設計資料が材料と構造の範囲にとどまり、IP等級のような試験規格には触れていないため、根拠として示せる水準がありません。要求等級と試験方法が決まってから、試験をどこで受けるかを含めて回答します。[2]
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

A6061EV駆動ユニットハウジングの5軸マシニング加工

SUM24自動車センサハウジングのスイス式旋盤加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
自社で削らない部位も含めて一括で相談できますか?+
ダイカストや押出の素材から作ってもらえますか?+
産業用の定置型電池の筐体でも相談できますか?+
防水等級(IP等級)の試験まで頼めますか?+
溶接構造から削り出しに変えるとコストは上がりますか?+
初回の回答を早くするには何を伝えればよいですか?+
量産の受入検査はどこまで見てもらえますか?+
IATF16949の認証は持っていますか?+
海外で作っていた筐体を国内に切り替える相談もできますか?+
表面処理まで含めてご依頼できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [3] 加工事例: EV駆動モータ水冷ジャケットハウジング(A6061-T6)
- [4] 加工事例: EVバッテリ温度センサハウジング(SUM24L)
設備・会社情報
- [5] 設備一覧: マシニングセンタの台数と加工範囲
- [6] 業界情報: 自動車向け加工
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