リン青銅の機械加工を外注するとき、材料側で何を確認すべきか?
先に決めるのは合金番号と質別です。リン青銅はすず含有率でC5191やC5212などに分かれ、同じ直径区分でも質別が違えば引張強さの規定値が100N/mm²以上動きます[1]。そのうえで工具摩耗、バリ、切粉の絡みという加工側の条件を確認します[2]。
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まず確認すること
リン青銅は非鉄金属なので刃物が傷みにくいと想定されがちですが、実際に削ると工具の刃先は摩耗します[2]。加工抵抗が大きく、切粉が絡んで製品面を傷つけるためです[2]。深江特殊鋼の公開事例でも、銅合金のライナーはバリと構成刃先が課題になり、専用の切削条件に加えて内面のバリ除去工程を足してRa3.2に収めています[3]。材料名だけでは条件が決まらないという点は、材料規格の側から見ても同じです[1]。
納期が遅れやすいポイント
- 図面に「リン青銅」とだけ書かれていて、C5191かC5212か、質別をどれにするかが決まっていない[1]
- 非鉄だから削りやすいと想定していたが、実際にはタップやドリルの摩耗が早い[2]
- 切粉が絡んで製品面にカッターマークが残る[2]
- 軸受やばねに必要な硬さ水準を、どの質別で指定すればよいか判断できない[1]
- ミルシートや引張試験の証明をどこまで発注仕様に書くべきか決められない[1]
- 銅合金の加工事例が少ない材料に見えるため、どこまで自社加工で受けてもらえるか読めない[3]
Q. リン青銅は非鉄の材料だから工具が傷みにくい、と考えてよいのでしょうか?
A. 工具が傷みにくい材料ではありません。ただし銅合金のなかでの加工性は中間の位置づけです[2][5]。 リン青銅は銅にすずとりんを加えた合金で、ばね性と耐摩耗性を持ちます[2]。硬さが高く加工抵抗が大きいため、切削条件や工具の選び方を外すと、バリ、工具摩耗、寸法不良が出やすい材料として扱われています[2]。細目のタップ加工のように選べる工具の種類が少ない工程では、摩耗の進み方がそのまま工程時間に効きます[2]。 銅系は粘りが強く切粉が分断されにくいため、切粉が工具の刃先や製品面に絡んで表面にカッターマークを残します[2][5]。このため加工速度を上げるより、切粉の逃がし方を先に決めます[2]。下穴をあけるときも、ドリルが振れると穴が楕円になったり片側だけ削れ残ったりするため、センタリングで食い付きを安定させてから穴をあける手順が取られます[2]。 銅合金のなかでの位置づけは中間です。無酸素銅やタフピッチ銅は粘りが強く切粉の分断が悪いのに対し、りん青銅や黄銅は比較的機械加工性がよいとされます[5]。図面の合金番号を先に確認するのは、この差が切込み量と工具の考え方を変えるからです[5]。銅合金の材料データでも、機械加工性は純銅が良好、黄銅が極めて良好と等級を分けて示しています[4]。
Q. 発注前に、材料と検査の条件をどこまで決めておけばよいですか?
A. 合金番号、質別、寸法許容差の級、検査の要求内容の4つです[1]。 JIS H 3270:2018はりん青銅の棒と線を対象に、C5111がSn3.5〜4.5%、C5102が4.5〜5.5%、C5191が5.5〜7.0%、C5212が7.0〜9.0%と、すず含有率でグレードを分けています[1]。不純物はPbが0.02%以下、Feが0.10%以下で全グレード共通であり、受入検査でミルシートの成分を照合するときの上限になります[1]。鉛を加えた快削リン青銅を使えるかどうかを検討するときも、この上限がRoHS対応可否と合わせた判断の起点になります[2]。 強度と硬さはグレードだけでは決まりません。C5191棒の直径3.0〜6.0mm区分でも、1/2H材の引張強さ規定値は510N/mm²以上、H材は635N/mm²以上です[1]。同じ区分のC5212ならH材で735N/mm²以上になります[1]。軸受やばねのように硬さ水準が用途要件そのものになる部品では、質別の指定が発注仕様の必須項目になります[1]。 寸法許容差も級で分かれます。丸棒5.0〜10mmなら普通級は±0.06mm、特殊級は0〜−0.06mmです[1]。図面に級の指定がないと、素材がどちらの級で手配されるかが確定しないため、加工後の公差をどこまで詰められるかも決まりません。 検査は発注側から書く必要があります。JIS H 3270は検査方法をJIS H 0321に委ねたうえで、検査の頻度は製造業者の判断によると定めています[1]。ロット単位のミルシートや引張試験の証明が要るなら、受渡当事者間の取り決めとして発注仕様書に明記してください[1]。
Q. 深江特殊鋼はリン青銅の材料手配から加工、検査までどこまで受けられますか?
A. 材料の形態、要求精度、数量の3つで決まります。自社で削る場合と加工先を手配する場合の両方を含めて回答します[3][7]。 自社の公開事例は食品機械向けの銅合金ライナーです。材質はCAC502A、素材はφ80×L300mm、穴はφ30mm、深さ300mmのガンドリル加工で、公差±0.05mm、面粗度Ra3.2、数量10本、納期15営業日でした[3]。バリが出やすく構成刃先で面が荒れる点が課題になり、専用の切削条件に内面のバリ除去工程を足して収めています[3]。材料の調達も自社で行いました[3]。 この事例のCAC502Aは鋳物用のりん青銅で、材料データページに載っているC5191は棒や板の展伸材です[3][4]。どちらもリン青銅と呼びますが素材の形態が違うため、上の公差と面粗度をC5191の棒材にそのまま当てはめることはできません[5]。工具寿命や切削速度の絶対値も、合金番号、質別、素材形態、穴径と加工長が決まってから算出します[1]。 ガンドリル専用機MHG-1200-1500NCは穴径φ4〜32mm、最大深さ1,500mmです[6]。銅合金の旋削、穴あけ、研削は自社で一貫して行っています[4]。このレンジに乗らない寸法や工法、数量についても、対応可否と見積を回答します。深江特殊鋼は1964年設立で協力企業は300社を超えており、対応できる材質や精度、ロット、納期の範囲を広く確保しています[7]。
図面で見ておきたい条件
- リン青銅は加工抵抗が大きく、切削条件と工具選定が合わないと刃先が摩耗して寸法が振れます。M8×P0.75のような細目タップは選べる工具の種類が少なく、摩耗が進みやすい工程として報告されています[2]。
- 銅系は粘りが強く切粉が分断されにくいため、切粉が工具の刃先や製品面に絡んで表面にカッターマークを残すことがあります。この材料では加工速度を上げるより、切粉の逃がし方を先に決めて条件を組みます[2][5]。
- 自社で公開している銅合金の深穴加工はガンドリルによるものです。ガンドリル工程ページの材質別切削条件表には銅合金の行を載せていないため、リン青銅の切削条件は案件ごとに設定します[6]。
相談前に知っておきたいこと
- 公開事例CS-2026-035は鋳物用りん青銅CAC502Aの1件であり、棒材のC5191やC5212で同じ公差と面粗度がそのまま出せる根拠にはなりません[3][5]。
- 工具寿命や切削速度の絶対値は、合金番号、質別、素材形態、穴径と加工長が決まってから算出します[1][2]。
- 軸受形状やばね形状のリン青銅部品は、形状と要求精度が分かってから加工可否と見積を回答します。用途としての軸受メタルや電気接点は材料データ側の記述です[4]。
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

銅合金粉粒体機器ライナーのガンドリル加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
図面に「リン青銅」としか書かれていない場合はどうなりますか?+
C5191とC5212のどちらを選べばよいですか?+
ばね性を強く要求する部品でもC5191でよいですか?+
鉛を加えた快削リン青銅は使えますか?+
支給材でも加工だけを依頼できますか?+
ミルシートや引張試験の証明は出してもらえますか?+
見積の回答はどのくらいで返ってきますか?+
軸受やばね以外のリン青銅部品でも相談できますか?+
他社で加工したリン青銅部品の作り直しも相談できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [3] 事例: 銅合金粉粒体機器ライナーのガンドリル加工
設備・会社情報
- [4] MetaNavi: 非鉄金属(銅合金)の材質データ
- [5] MetaNavi: 銅合金のバリと構成刃先の原因と対策ガイド
- [6] MetaNavi: ガンドリル加工の設備レンジ
- [7] MetaNavi: 深江特殊鋼の会社概要
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