航空宇宙と防衛の部品でロウ付け(ろう付け)を発注するとき、工法と検査基準をどう決めるか?
ロウ付けは母材を溶かさず、母材より融点の低いろう材を毛細管現象で継手すきまへ引き込んで接合します。[1] まず決めるのは、母材の材料規格とろう材の組合せ、継手すきまと重ね長さ、図面が要求する検査方法の3点です。この3点が決まると加熱方法と受け先が絞れます。[2]
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母材の材料名、板厚、接合したい形状、要求している検査のうち、分かっているものだけメモにしてMeta-Naviのお問い合わせから送ってください。図面や具体的なアイデアがなくてもOK!条件の整理から一緒に進められます。
まず確認すること
継手すきまの指示が図面にないと、加工側は自社が標準にしているすきまを当てはめて積算します。当てはめたすきまが違えば、同じ図面でも見積りの前提が揃いません。大気中でステンレス鋼の突合せ継手を銀系ろう材で接合した試験では、すきま0.0015in(0.038mm)で135,000psi(930.8MPa)、0.001〜0.005in(0.025〜0.127mm)の範囲でおよそ100,000psi(689.5MPa)という結果が示されています。[1] すきまが狭すぎると溶けたろう材が毛細管現象で行き渡らず、広すぎると継手の強度がろう材単体の強度へ近づくため、最適値の外側では両方向に落ちます。しかもこのすきまはろう付け温度での寸法で効くので、異種材料を組み合わせるときは熱膨張差を見込んで加工寸法を決めます。[1]
納期が遅れやすいポイント
- 図面に接合とだけ書かれていて、ロウ付けなのか溶接なのか、ろう材の融点区分がどこなのかを読み取れない[1]
- 継手すきまの指示値が図面になく、どのすきまを前提に積算されたのかが見積書から読み取れない[1]
- 大気中のトーチで見積もられたのか、真空炉で見積もられたのかが見積書から判別できない[1]
- 接合部の検査を外観試験だけで締めてよいのか、放射線透過試験や気密試験まで要るのかの線引きが案件ごとに変わる[2]
- 切削と接合で発注先が分かれ、熱膨張差を見込んだ加工寸法を誰が決めるのかがあいまいになる[1]
Q. ロウ付けは溶接やはんだ付けと何が違い、航空宇宙部品ではどう使い分けられているか?
A. 母材を溶かさない点が溶接との違いで、ろう材の融点が450℃(840°F)を超えるかどうかがはんだ付けとの境目です。母材の材料と要求検査で、どの加熱方法まで必要かが決まります。[1] ロウ付けは、母材の融点より低く450℃より高い融点のろう材を溶かし、継手のすきまへ毛細管現象で引き込みます。母材の材料そのものは溶けないので、母材側の組織変化を溶接より小さく抑えられます。接合の可否を決めるのは手作業でビードを追う技能ではなく、すきまの寸法とろう材の濡れです。この性質から、板厚3mm前後の薄い部材や自動化された量産にも向きます。[1] 加熱方法は、大気中でトーチを使う方法と、炉の中で雰囲気または真空を制御する方法に分かれます。炉の中では酸化が抑えられるため、すきまをより詰められ、気孔を減らせます。カドミウムや亜鉛のように蒸発しやすい元素を含まないろう材が要求される部品では、真空ろう付けが指定されます。母材の材料と要求検査によって、大気中のトーチで足りるか炉が要るかが分かれます。[1] 継手形状も強度に効きます。重ね継手は突合せ継手より接合面積が広く、同じ板厚でも大きな荷重を受けられます。重ね長さの目安として、薄いほうの部材の板厚の3倍を取る設計則が使われています。板厚1mmの部材どうしなら、重ね長さ3mmが出発点になります。適切に作られた継手は母材と同等かそれ以上になることがあり、ステンレス鋼では130,000psi(896.3MPa)の引張強さが挙げられています。ただしこの数値は、材料とすきま、加熱方法が揃った条件での値です。[1]
Q. 継手すきまと検査基準は、どの数値で図面に指定すればよいか?
A. すきまは大気中で0.001〜0.005in(0.025〜0.127mm)、雰囲気制御または真空で0.000〜0.002in(0〜0.051mm)が目安として示されています。検査は適用規格の番号ごと指定してください。[1][2] すきまはろう付け温度での寸法で効くため、室温での加工寸法をそのまま指示すると、異種材料の組合せでは熱膨張差の分だけ狙いから外れます。母材どうしの熱膨張係数が離れているほど、見込むべき量は大きくなります。加工寸法は室温での公差として図面に落とします。[1] 検査側の数値基準の一例として、JIS Z 3891が手動ガス溶接トーチによる銀ろう付作業者の技術検定の試験方法と合否判定基準を定めています。区分は材質と継手形状で4つに分かれ、FA-Cuは銅の板厚3mmの重ね継手、FA-Sは鋼の板厚3.2mmの重ね継手、FA-SUSはステンレス鋼の板厚3mmの重ね継手、PA-Cuは外径34.92mm、肉厚1.07mmの銅管の管継手です。板の区分は外観試験と放射線透過試験、管の区分は外観試験と気密試験で判定します。[2] 外観試験の評価項目は、母材溶融と割れ、ろう切れとぬれ不良、ピンホールと巣、フィレット不整とろう過剰、重ね不良と差込み不良、その他の有害な欠陥の6つです。放射線透過試験は、透過写真濃度1.3〜4.0、像質A級、透過度計の最小識別線径0.20mm以下という撮影条件を満たしたうえで、板幅方向のきず長径28mm以下、重ね方向のきず長径17mm以下、きず面積総和190mm2以下を合格としています。管継手の気密試験は、常温の水中で空気または窒素を使い、内圧490kPaから785kPaで1分間保持して漏れがないことを求めます。これらは作業者の技量を確認する検査基準であり、部品そのものの受入検査基準は図面の要求規格で別に定まります。[2]
Q. 見積り前に、深江特殊鋼はどの材料条件と検査条件を確認するか?
A. 母材の材料規格と板厚、ろう材の指定有無、継手形状とすきま、加熱方法、図面が要求する検査規格の5点です。[2][5] 深江特殊鋼(Meta-Navi運営元)は自社加工と商社機能の両方を持っています。国内の認定パートナー150社超のネットワークにより、材質、精度、ロット、納期の対応範囲が広くなっています。認証の要否は、対応可否を確認するより先に切り分けます。深江特殊鋼はAS9100とJIS Q 9100を自社で保有しておらず、認証が必要な工程はグループ企業の由紀精密が担当します。ITAR、安全保障輸出管理、セキュリティクリアランスについては、専任の体制を現時点で持っていません。検査記録を誰が残すかも、この段階で決めます。[5] 公開している加工事例のうち、ろう付けを工程に含むものは1件です。Inconel625の産業用ガスタービン静翼ベーン(280×180×120mm、公差±0.05mm、面粗度Ra1.6)で、翼面内部の冷却流路を確保するために2分割した片を片接合ろう付けで接合し、5軸マシニング仕上げ、熱遮蔽コーティング、流量試験と高温疲労試験まで通しています。これは発電向けの事例です。同じ工程が航空宇宙の要求条件でも成立するかは、母材とろう材、継手すきま、適用する検査規格が決まってから判断します。[3] 設備側の相談も受けています。Meta-Naviでは協力企業のネットワークを通じて、ガスバーナーを電子制御するロウ付け自動機を紹介しています。熟練者でないと作業が難しいこと、温度管理の調整に手間がかかり安全面の懸念があること、ワークサイズによって大きい設備とスペースが必要になることの3点が、自動化を検討する動機として挙げられています。価格は最低スペックで200万円からです。ただしこの自動機が航空宇宙部品の要求公差や真空ろう付けの条件に合うかは、対象ワークの材料と要求検査を見てから判断します。[4]
図面で見ておきたい条件
- JIS Z 3891は手動ガス溶接トーチによる銀ろう付作業者の技術検定規格で、対象は銅、鋼、ステンレス鋼の板厚3mm前後の板材と銅管です。真空炉ろう付けや誘導ろう付け、チタン合金やニッケル基超合金といった航空宇宙の材料への適用可否は、この規格には書かれていません。[2]
- 図面にAMSやAWSの規格番号が指定されている場合は、その番号のまま提示してください。JIS Z 3891はそれらの代替にはならず、検査項目と合否の数値基準が別に定まります。[2]
- ろう付け継手の引張強さとして示されている値(ステンレス鋼で130,000psi/896.3MPa、最適すきまで135,000psi/930.8MPa)は、大気中でのステンレス鋼試験片と特定のろう材の組合せで得られた数値です。材料と加熱方法が変われば同じ値にはなりません。[1]
- 深江特殊鋼の公開加工事例でろう付けを含むものは発電用のInconel625静翼ベーン1件です。[3] 対応可否と検査体制は、母材の材料規格と要求規格が決まってから回答します。[5]
相談前に知っておきたいこと
- 個別部品の強度と気密の合否基準は、母材とろう材、継手すきま、加熱方法、適用規格が決まってから算出します。ここに挙げた数値は、大気中ろう付けのステンレス鋼試験片と、JIS Z 3891が定める銀ろう付作業者の検定条件で得られたものです。[1][2]
- 真空ろう付け炉や誘導ろう付けの設備は、深江特殊鋼の公開設備一覧には載っていません。ろう付け工程は、材質、精度、ロット、納期の条件に応じて対応します。[4]
業界での実機事例(参考)

Inconel625発電用ガスタービンベーンのフライス加工

マルエージング350航空機アクチュエータハウジングのフライス加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
ロウ付けとろう付け、ブレージングは同じものですか?+
継手すきまを図面に書いていませんが、見積りは出せますか?+
大気中のトーチと真空炉は、どちらで依頼すべきですか?+
接合部の検査は外観試験だけで足りますか?+
ろう付けの後に熱処理を入れる予定ですが、順番に制約はありますか?+
融点の違う異種材料どうしの接合もできますか?+
航空機部品のろう付け実績はありますか?+
AS9100やNadcapが要求される案件も相談できますか?+
ロウ付け作業を自動化する設備の相談もできますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [3] 金属加工ジャパン: Inconel625発電用ガスタービンベーンのフライス加工
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