医療用メスの金属加工を外注するとき、刃部の材料と硬さをどこまで決めておくべきか?
JIS T 2107:2011は単回使用の手術用メスに、刃部の硬さをビッカース硬さHV500以上、材料を炭素0.6%以上の炭素鋼、炭素0.2%以上のクロム系ステンレス鋼、炭素0.15%以下のオーステナイト系ステンレス鋼の3区分と定めています。まずこの区分と形番を先に決めてから、板厚、数量、検査の範囲を確認します。[1]
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医療用メスの条件整理から相談を始める
図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。刃部の材料区分、要求硬さ、刃形の形番、想定数量のうち決まっているものだけでも、対応可否と見積を回答します。
まず確認すること
公開している加工事例のうち、材料の近いものは、SUS440Cの研削盤用スピンドルにφ4mm×400mmの穴をあけ、焼入れ後HRC58で円筒研削まで行った1件です。[6] 医療機器側では、SUS316のCT装置用シールドハウジングを5軸で加工して精度±0.02mm、面粗度Ra0.4で清浄度検査まで通した事例と、Ti-6Al-4Vの人工股関節ステムを面粗度Ra0.1まで仕上げた事例があります。[7][8] どれも刃先を持つ部品ではないので、同じ工程が刃部に使えるかは、材料区分と要求硬さが決まってから判断します。[1]
納期が遅れやすいポイント
- 単回使用の手術用メスなのか、繰り返し使う器具のハンドル側なのかで、JIS T 2107:2011の適用範囲に入るかどうかが変わり、材料の指定方法も変わります。[1]
- 硬さHV500以上という要求は刃部材料の3区分のいずれでも満たせるため、硬さだけを決めても鋼種は一つに絞れず、見積依頼の材料欄が空欄のまま残ります。[1][2]
- マルテンサイト系ステンレスは焼入れ後に工具の摩耗が進むため、荒加工と穴あけを熱処理の前後どちらに置くかで工程の組み方と納期が変わります。[3]
- 刃形はNo.10、No.11、No.15などの形番で分類されるため、図面と発注書で形番の書き方がそろっていないと、どの刃形の見積なのかを確認する往復が発生します。[1]
- 寸法公差と面粗度は図面に数値で書けますが、刃先の欠けやかえりをどの検査で見るかは、規格が目視または拡大鏡による確認しか定めていないため数値では決まりません。[1]
Q. 医療用メスの刃部の材料と硬さは、どの規格を基準に決めればよいですか?
A. 国内向けの単回使用品ならJIS T 2107:2011、材料の裏取りを海外規格でそろえるならASTM F899が基準になり、どちらも硬さの検査方法まで決めています。[1][2] JIS T 2107:2011は単回使用の手術用メスと眼科用メスを対象にし、替刃式と一体形、滅菌済みと未滅菌の区別なく適用されます。刃部の材料は3区分で、炭素0.6%以上の炭素鋼、炭素0.2%以上のクロム系ステンレス鋼、炭素0.15%以下のオーステナイト系ステンレス鋼です。前の2つは焼入れ焼戻し、3つ目は加工硬化で硬さを作ります。[1] 硬さの要求はJIS Z 2244によるビッカース硬さHV500以上で、この数値は発注時の受入基準としてそのまま図面に書けます。3区分以外の材料でも、安全性が確保されて同じ硬さに達するなら使えると規格自身が書いているため、鋼種名を先に固定しなくても検査基準は決まります。[1] ASTM F899は手術器具用の錬造ステンレス鋼を扱い、適用対象にメスを明記しています。硬さと切れ味を求める部位にはマルテンサイト系の420と440A、耐食性を優先する部位には316L、強度を求める部位には17-4PHという整理です。硬さの合否はロックウェルHRCの上限で判定し、耐食性は5%硫酸第二鉄と50%硫酸の沸騰溶液に浸してピッティングや変色を見る試験で確認します。[2] 社内の用語ページでも同じ並びになります。SUS440Cは炭素約1%、クロム約17%のマルテンサイト系で、ステンレス鋼の中で最も高い硬さまで焼入れでき、刃物や軸受、精密機械部品に使われる材料です。[3] SUS420J2はクロム約13%、炭素約0.26から0.40%で、包丁やはさみのような刃物に使われ、焼入れ前の被削性がSUS440Cより良い分だけ工具寿命を確保しやすくなります。[4] 極端な硬さと耐摩耗性が要るならSUS440C、被削性とのバランスを取るならSUS420J2という選び方になります。[3][4]
Q. 深江特殊鋼へ依頼いただいた場合、どこまで自社で加工し、どこから手配になりますか?
A. 焼なまし状態での切削と、焼入れ後の研削仕上げまでが自社設備の範囲です。刃付けと滅菌包装を含む案件も一括で受け、対応可否と見積を回答します。[5] 自社の研削設備は平面研削盤と立軸円テーブル研削盤の2台です。面粗度Ra0.1から、寸法精度±0.005mm、平面度0.005mm/300mm、硬さはHRC60以上の材料まで対応します。SUS440CをHRC58の状態で研削する条件も社内の加工条件表に持っており、砥石周速28m/s、テーブル送り8m/min、切込み0.002mm/pass、クーラント圧0.5MPaという値です。[5] 工程順の実例もあります。研削盤用スピンドルでは、SUS440Cのφ80×L400mm素材に焼入れ前にφ4mm×400mmの穴をあけ、焼入れ焼戻しでHRC58にしてから円筒研削で外径振れ0.005mm、面粗度Ra0.4に仕上げています。[6] 焼入れ後の材料を切削で削らずに済ませる順番にしているのは、硬さが上がると工具の摩耗が急に進み、寸法と面粗度が安定しなくなるためです。[3] 医療機器の部品では、SUS316のCT装置用シールドハウジングを5軸で加工し、内部構造の精度±0.02mm、面粗度Ra0.4、電解研磨後の清浄度検査まで通した事例があります。[7] Ti-6Al-4Vの人工股関節ステムでは、形状精度±0.05mm、面粗度Ra0.1まで仕上げています。[8] どちらも刃先を持つ部品ではないため、刃先形状の再現性を示す材料にはなりません。 刃部の打抜き、刃付け、滅菌と個装は自社の工程に含みません。JIS T 2107:2011は滅菌品に個装と外装、有効期限や形番、ロット番号を含む表示まで求めており、この範囲を含む案件では加工先と包装先を分けて手配します。[1]
Q. 見積のとき、深江特殊鋼から先に確認させていただくのは何ですか?
A. 製品区分、刃部の材料区分と要求硬さ、刃形の形番、板厚と数量、検査書類の5つです。[1] 最初に聞くのは、単回使用の手術用メスなのか、繰り返し使う器具のハンドル側なのかです。JIS T 2107:2011はハンドルに、非発熱性かつ無毒で安全性が確保された材料、刃を保持して使用中にがたつかない構造、ざらつきや鋭い縁やかえりのない仕上げを求めています。硬さの数値要求は刃部にだけかかるので、見積の分け方も変わります。[1] 次に材料と硬さです。3区分のどれで指定するか、ミルシートを支給材で持ち込むか手配込みかで、熱処理と検査の並べ方が変わります。[1] SUS440C系を選ぶ場合は、焼入れ後にHRC56から58へ上がるため、荒加工と穴あけを焼なまし状態で終える工程順を前提に見積もります。[3] 刃先の要求は数値で書きにくい部分です。JIS T 2107:2011の刃先要求は、欠けがないことと著しいかえりがないことを目視または拡大鏡で確認する形で、寸法公差の表や切れ味の合否値を本文に持ちません。[1] このため、切れ味をどの方法で判定するかは、面粗度や寸法公差とは別に決めていただくことになります。硬さと耐食性であれば、ロックウェル硬さ試験と、沸騰させた硫酸第二鉄と硫酸の溶液に浸す腐食試験という形で方法が決まっています。[2] 医療機器向けの品質要件も先に確認します。社内の医療業界ページは、ISO13485に基づく品質管理とISOクラス5クリーンルーム相当の清浄度管理を業界の必須要件として挙げ、手術器具ではボーンドリルや骨鋸刃の耐久性を上げるセラミックコーティングの対応実績を挙げています。[9] メスの刃部そのものはここに含まれないため、どの認証をどの会社が持っている必要があるかは、案件の要求事項が決まってから確認します。[9]
図面で見ておきたい条件
- 公開している加工事例のうち、材料が同じSUS440Cの事例は研削盤用スピンドルで、部品は工作機械向けです。[6] 刃部の板厚と刃先の形状、要求硬さが決まってから、対応可否と費用を回答します。[3]
- 自社の研削設備は平面研削と立軸円テーブル研削で、寸法精度±0.005mm、面粗度Ra0.1からの仕上げに対応します。[5] 刃先の刃付けと切れ味の判定をどこで持つかは、要求される刃先形状と検査方法が決まってから、手配先を含めて回答します。[1]
相談前に知っておきたいこと
- 加工費と納期の絶対値は、刃部の板厚と刃形、要求硬さ、数量、刃付けと滅菌包装をどこまで含めるかが決まってから算出します。工具寿命の絶対値も、焼入れ前後のどちらで削るかと要求硬さが決まってから、SUS440Cの研削条件を基準に見積もります。[3][5]
- 切れ味の合否は、判定方法を先に決めていただかないと受入基準として書けません。JIS T 2107:2011の刃先要求が欠けとかえりの目視または拡大鏡による確認までで、数値のしきい値を持たないためです。判定方法と検査書類の範囲が決まった時点で、その手配先と費用を見積に含めます。[1]
業界での実機事例(参考)

SUS440C研削盤スピンドルのガンドリル加工

SUS316医療装置用ハウジングのマシニング加工

Ti-6Al-4V医療用インプラントの5軸加工
よくある質問
図面がまだない状態でも相談できますか。+
替刃式のメスと一体形のメスで、相談の進め方は変わりますか。+
材料は支給と手配のどちらでも受けてもらえますか。+
試作の1本だけでも依頼できますか。+
硬さ試験や腐食試験の成績書は出してもらえますか。+
納期はどのくらいかかりますか。+
滅菌と包装まで含めて一括で頼めますか。+
海外の医療機器メーカー向けの図面でも対応しますか。+
刃部だけでなくハンドル側の加工も相談できますか。+
SUS440CとSUS420J2のどちらを選ぶか、相談段階で決まっていなくても大丈夫ですか。+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
内部事例
- [6] Meta-Navi加工事例: SUS440C研削盤スピンドルのガンドリル加工
- [7] Meta-Navi加工事例: SUS316医療装置用ハウジングのマシニング加工
- [8] Meta-Navi加工事例: Ti-6Al-4V医療用インプラントの5軸加工
設備・会社情報
- [3] Meta-Navi用語辞典: SUS440C
- [4] Meta-Navi用語辞典: SUS420J2
- [5] Meta-Navi: 研削加工
- [9] Meta-Navi: 医療機器業界ページ
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