歯科ハンドピースの部品加工を外注するとき、図面のどこまでを決めてから相談すればよいか?
まず、外注する部品がヘッド内の回転部品か本体側の外装部品かを分け、材料、外径、穴径、要求する振れ、滅菌の想定回数を決めてください。JIS T 5912は高速エアタービンハンドピースの偏心を0.03mm以下と定めており[1]、完成品側のこの値から部品ごとの公差へ割り付ける順になります。
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図面や具体的なアイデアがなくてもOKです。部品の外径、穴径、材料、数量のうち決まっているものだけでも、対応可否と見積を含めて確認できます。
まず確認すること
歯科ハンドピースの部品を外注するとき、最初に止まるのは加工できるかどうかではなく、規格が決めている完成品の値と、部品図に書く公差の関係です。JIS T 5912は高速エアタービンハンドピースの偏心を0.03mm以下と定めていますが[1]、これは組み上げた製品を測った値で、軸受座1点の公差ではありません。ヘッド外径はφ12.1×H12.7mm、ミニチュアヘッドでφ10.6×H10.8mmで、その中に毎分28万から40万回転する軸が入ります[2]。この二つを分けて図面に落とすと、加工先から返る見積の前提がそろいます。
納期が遅れやすいポイント
- 完成品の規格値は分かるが、部品1点ごとの公差へどう割り付けるかが決まらない[1]
- ヘッド外径がφ10.6mmからφ12.1mmと小さく、この寸法帯を量産で回せる加工先の見当がつかない[2]
- 毎分28万から40万回転で使う部品の振れを、どの検査でどこまで見るかが決まっていない[2]
- 滅菌を250回繰り返す前提の材料と表面処理を、発注側と加工先のどちらが決めるか切り分けられていない[1]
- 部品ごとに相談先が分かれ、材料手配から検査までを一括で相談できる先が定まらない[4]
Q. 図面には、規格の値をそのまま書けばよいですか?
A. そのままでは書けません。JIS T 5912の数値は完成品の合否基準で、部品1点の加工公差ではないためです。[1] JIS T 5912はISO 14457:2017に修正対応した規格で、対象はストレートハンドピース、高速エアタービンハンドピース、エアモータ、電動モータ、プロフィハンドピースの5種類です[1]。口腔内カメラハンドピース、光重合用ハンドピース、エアスケーラ、電動スケーラは対象外と明記されています[1]。手元の部品がどの製品に載るかで、参照する条文の範囲が変わります。 規定されている値は、回転の偏心が高速エアタービンハンドピースで0.03mm以下、ストレートハンドピースとアングルハンドピースで0.08mm以下、メタルチャックの引抜力がタイプ5テストバーで22N以上、静的伝達トルクが0.016N・m以上です[1]。速度精度は製造業者の指示値に対して±10%、耐圧試験は最大推奨操作圧力の150%で破断も破裂もしないことが条件です[1]。どれも組み上がった製品を測ったときの合否であって、軸受座やチャックスリーブに配る公差ではありません[1]。 配分は規格の外側にあります。偏心0.03mmは、軸の振れ、軸受のすきま、ハウジング穴の同軸度、組付けの積み上がりが合算された結果として現れるため、部品1点にいくつ配るかは組立側の設計判断です。この判断を書かずに部品図だけを回すと、加工先は自社が普段扱っている公差レンジで前提を埋めて見積を作ります。埋め方が違えば、返ってくる単価も検査工数も違います。図面に完成品の要求値と、この部品へ割り付けた値の両方を書いておくと、加工先が前提を埋める余地が消えます。 材料と表面処理の条件も規格側から降りてきます。再処理は250回の繰り返しに耐えること、ハウジングの温度上昇率は操作者側と患者側のいずれも5℃/s以下で、装着部の材料により最高許容温度が56℃から65℃の範囲で異なると規定されています[1]。滅菌を何回想定するかを決めてから鋼種と表面処理を選ぶ順にすると、材料手配の段階で止まりにくくなります。
Q. ヘッド内の部品は、なぜ小さいほど条件が厳しくなるのですか?
A. 直径12mm前後の筐体に毎分28万回転以上の軸を収める構造で、同軸度の崩れが遠心力の不釣り合いとして増幅されるためです。[2] 公開されている高速エアタービンハンドピースの仕様では、標準ヘッドがφ12.1×H12.7mm、ミニチュアヘッドがφ10.6×H10.8mm、回転数は標準ヘッドで28万から36万min-1、ミニチュアヘッドで32万から40万min-1、出力は25Wから44Wの範囲です[2]。軸受にはセラミックベアリング、バーの保持にはくさび形部品のくさび効果を使う方式が採られています[2]。 回転体の遠心力は回転数の二乗に比例して増えます。毎分40万回転では、軸受座の同軸度が数μm崩れるだけで生じる不釣り合いが、振動と軸受の発熱として出ます。JIS T 5912が完成品にハウジング温度上昇率5℃/s以下、A特性音圧レベル80dB以下という上限を置いているのは、この結果を測る側の規定です[1]。部品図の側では、外径公差だけでなく、軸受座の同軸度と円筒度、面粗度をどこまで詰めるかが効きます。 冷却と駆動の流路も同じヘッドの中を通ります。規格は圧縮空気駆動製品の必要流量を300kPa±100kPaで80NL/min未満、モータ冷却用空気を250kPaから500kPaで40NL/min以下、作業領域への水冷流量を200kPaで50mL/min以上と規定しています[1]。製品側では4ポートの水噴霧のように複数の細い通路を持つ構成もあります[2]。通路径が図面で決まっていないと、穴あけ工程の可否と検査方法が確定しません。 はめあい公差そのものの数値は、今回参照した製品資料には開示されていません[2]。軸受の等級も同様です。要求する回転精度と回転数、軸受の型番が決まった段階で、部品側の公差を個別に算出します。
Q. 深江特殊鋼に相談すると、どこまでを自社で加工しますか?
A. 細径チタンの旋削と深穴加工に対応しており、ハンドピース部品については条件を伺ってから対応可否と費用を回答します。[3][4] 歯科分野で公開している事例は、CP-Ti Grade4の歯科インプラント体です。外形φ5×L16mmの本体にφ1.6×L14mmの内ねじ下穴を加工し、下穴径公差±0.01mm、SLA処理後の表面粗さSa2.5μm、月産9,300本、納期12営業日で供給しています[3]。スイス式自動旋盤に小径ガンドリル専用アタッチメントを載せ、90barの高圧クーラントで切粉を排出する工程にしたところ、サイクルタイムが65秒から38秒になり、工具寿命が2.5倍に延びた案件です[3]。チタンは加工硬化と切粉の絡みで工具が持たない材料であり、その対処が量産コストを決めた事例と読めます[3]。 この事例はインプラント体、つまり骨に埋めるねじ状の部品であり、軸受とチャックを内蔵して回るハンドピースとは構造も機能も別の製品です。細径チタンを公差±0.01mmで量産した実績は、歯科分野で公開しています[3]。 工程能力の所在は工程ごとに分かれます。スイス型自動旋盤による細径量産は自社設備の区分になく、協力企業ネットワークの能力として登録しています。対応径はφ1mmから32mm、寸法精度±0.005mm、面粗度Ra0.4から3.2です[4]。ガンドリルによる深穴は自社設備3台で、対応穴径φ4mmから32mm、最大深さ1,500mm、真円度0.01mm以下、関連業界に医療が含まれます[5]。ただし先のインプラント体事例の下穴φ1.6mmは、この設備データの下限φ4mmを下回っています[3][5]。φ4mm未満の穴を含む見積では、事例の再現条件を確認してから回答します。 医療機器の案件では、ISO13485に基づく品質管理とISOクラス5相当のクリーンルーム加工が業界要件として挙がります[6]。当社の医療分野のページに載せている対応材料はチタン、SUS304、SUS630、PEEK、アルミ、対応部品はインプラント、シャフト、バルブ、ノズル、ジョイント、ハウジングで、ハンドピースはこの一覧に入っていません[6]。認証の保有範囲と検査体制については、求められる管理項目を伺ったうえで個別に回答します。材料と外径と要求する振れが決まれば、対応可否と見積をお返しします。
図面で見ておきたい条件
- JIS T 5912が対象とするのはストレートハンドピース、高速エアタービンハンドピース、エアモータ、電動モータ、プロフィハンドピースで、口腔内カメラハンドピース、光重合用ハンドピース、エアスケーラ、電動スケーラは対象外です[1]。
- 自社のガンドリル設備に登録している対応穴径はφ4mmから32mm、最大深さ1,500mm、真円度0.01mm以下です[5]。
- スイス型自動旋盤による細径量産は自社設備ではなく、協力企業ネットワーク側の能力として登録しています。対応径はφ1mmから32mm、寸法精度±0.005mmです[4]。
相談前に知っておきたいこと
- 歯科分野で公開しているのはインプラント体の事例です[3]。歯科ハンドピース本体、ヘッド、チャックスリーブ、スピンドルの対応可否と費用は、図面の外径、穴径、材質が決まってから回答します。
- インプラント体事例の下穴φ1.6mmは、設備データに登録した対応穴径の下限φ4mmを下回っています[3][5]。この差がどの設備と条件で成立したのかは社内データ上で整合していないため、φ4mm未満の穴を含む見積では、事例の再現条件を確認してから回答します[5]。
- 軸受座と軸のはめあい公差、セラミック軸受の等級は、今回参照した資料の範囲では確認できていません[2]。この2点は、要求する回転精度と回転数が決まってから個別に算出します。
関連するものづくりトピックス
業界での実機事例(参考)

CP-Ti歯科インプラント用深穴ガンドリル加工
よくある質問
図面がまだ固まっていなくても相談できますか?+
ヘッド内の回転部品ではなく、本体側の外装部品だけでも相談できますか?+
試作1本から相談できますか?+
材料はチタンとステンレスのどちらを指定すべきですか?+
セラミック軸受の調達や組付けまで頼めますか?+
滅菌を250回繰り返す前提の表面処理まで見てもらえますか?+
海外調達品との相見積もりでも相談できますか?+
初回の回答はどれくらいで返ってきますか?+
既存の加工先で振れが規格値に入らない案件も相談できますか?+
歯科ハンドピース以外の歯科用機器の部品でも相談できますか?+
あわせて読みたい情報
参考事例・文献
外部資料
内部事例
- [3] 事例: CP-Ti歯科インプラント体の深穴ガンドリル加工
設備・会社情報
- [4] 深江特殊鋼: スイス型自動旋盤の対応範囲
- [5] 深江特殊鋼: ガンドリル加工の対応穴径と深さ
- [6] 深江特殊鋼: 医療機器分野の対応範囲
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